すぷりんぐぶろぐ

桜と絵本と豆乳と

日曜日の吉田修一

2009年08月02日 | 読書
 先週日曜の旅行先は長崎。
 吉田修一の文庫本を読もうと決めていた。長崎出身の作家という単純な理由からである。

 『日曜日たち』(吉田修一著 講談社文庫)

 別に長崎が舞台となっているわけではなかったが、連作短編集という構成も登場する人物もなかなか興味深く、ぽんと読みふけってしまった。

 全篇を読み終わって、ふと思い浮かんだのが「食べ物」のこと。それぞれに何か効果的に意味づけられているような気がした。
 しかし改めてめくり直すと、それほど重くもないようだ。ただ自分がそう感じたわけは、冒頭作の「日曜日のエレベーター」で主人公がした質問、そしてそれに答えた恋人の返答が大きいんだなと確かめられた。
 それはこういうものだ。

 「この世で一番嫌いな場所はどこ?」
 「デパートの地下食料品市場」

 どうして好きになれないのかと問うと、その恋人は「あそこにいる人たちが、みんな何か食べることを考えているのかと思うとぞっとするのよ」と答える。

 うーん、さすがの目のつけどころである。
 食べ物を見つめる、食べている人を見つめるシーンがかなり深いのは様々な作品でも語られるところだが、その心理を追いかけることで真実は見えてくる。

 そうしたところで、長崎まで行ってデパ地下で買い物をした私はどんな心理なの、どんな状況なのと、日曜日の吉田修一は語りかけてくる。