すぷりんぐぶろぐ

桜と絵本と豆乳と

「質問箱」から取り出す目標

2010年01月03日 | 読書
 『谷川俊太郎質問箱』(東京糸井重里事務所)を結局去年のうちに読みきれず、年明けの読了となった。

 「ほぼ日」のサイトで一度覗いたときはあったが、再構成されて出版されたようだ。
 様々な質問に対して谷川俊太郎が答えていくわけだが、もちろん普通の人生相談のような答え方をかの詩人がしているわけではない。

 質問する言葉から感じたことを、ある時はごく素直に、ある時は諭すように、いわば自由自在に語っているのだけれど、そこはやはり稀代の詩人。どれもこれも面白い。
 質問者の中には一般に交じって、名の知れている人もいるのだが、特に作家重松清訊くところの「泣ける小説」「泣き真似」に関して応えたところにうなってしまった。

 (略)泣き真似と言うより、真似泣きなのかもしれません。泣くのは個人的な行動に見えて、けっこう共同体に内在するパターンに支配されたりしますからね。
 
 うーん。この年末年始、『容疑者Xの献身』の堤真一の演技にもうるっときたり、箱根駅伝の若者の頑張りにこみ上げるものがあったり…そうしたことを「齢のせいで最近、涙腺が…」などと本気で思っていたが、なあんだ真似泣きだったか。

 よし今年は「真似泣きせんぞ」が一つ目の目標だ。
 と、ちょっと小声で宣言をしたくなる。

 予想はしていたけれど「あとがきばなし」と称した糸井重里との対談が秀逸。

 人には誰でも詩人的資質があるのだけれど、現実に暮らしていくには詩でないものが必要で、それを抑圧していく…という件があって、糸井が「抑圧の練習もしますね」と言うと、谷川が応えてこういう。

 そう、学校教育なんてまさにそうです。
 
 そう、私たちはそのことを背負って、毎日の営みをしていくのです。その自覚からどんな表現を生み出していくのか、
 と、これを考えることが二つ目の目標になるのかな。