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せめて肉声、直筆にきちんと向き合う

2010年01月11日 | 読書
 『白川静さんに学ぶ 漢字は楽しい』(小山鉄郎著 新潮文庫)からもう一つ。

 漢字についていくつか自分でも実践してきたが、よりどころは藤堂明保編集の辞典、それをもとにしたテキストだった。
 その時点ではあまり考えなかった奥深さを今感じている。

 たとえば「目をめぐる漢字」と題された項である。
 「相」は当然「木」と「目」からなる会意文字であり、「木を目で見る形」から来ている。
 「相」が向き合うという意を持つことを考えると、ここにはやはり木と人との関係性が出てくることだろう。

 「目」で見ることは、見る対象に対して精神的な交渉が含意されているという点では「相」の字はまさにそうです。樹木の盛んな生命力が、それを見る者の生命力を助けて盛んにするという字です。
 
 実際にそういう場面を正しく想像はできないが、何かロマンを感ずる風景だなあ。
 ヒトが自然と共にあったからこそ、そういう営みを感じ取ることができそういう言葉や字が生まれ…人間としての文化が出来上がったわけだが、結果そういう自然の力を信ずることも少なくなっている、などと大げさなことまで考えたくなる。

 唐突だが、言葉や文字はもっと土まみれになり、汗臭くなっていいような思いが浮かぶ。
 しかし、このネット上の文字表現そのものが、もっとも離れた場所にいるということを考えると全く笑うしかないか。

 せめて肉声、直筆、それらにきちんと向き合うこと、こんな決意しかできない。