趣味と尋ねられれば、今なら「読書」と答えることはできるが、若い頃はそうではなかった。
まして小説などはあまり手をつけなかったし、かなり限定された作者しか読まなかった。それが今では人並みに人気作家と呼ばれる人の著書にも手を伸ばすようになり、いくらか読めるようになってきたのかもしれない。
小山薫堂。
『おくりびと』の脚本を手がけ、脚光を浴びた人である。行きつけの書店に行ったら文庫本が並んでいたので、読んでみることにした。
『フィルム』(講談社文庫)という書名の短編小説集であった。
冒頭の「アウトポスト・タヴァーン」という作品を読み終え、あれっと感じた。何かスカスカする、という印象だ。これは次の標題作「フィルム」も同様だった。
ディテールがもの足りない、なんて生意気な言い方だが、まさしくそんなふうに思ったのだ。
人物の表情や周囲の風景、ちょっとした場や時間のつなぎのことなのだろうが、そうした点がスカスカしていて、十分に満足感を得られないことが寂しい。
筋立ては十分に面白いし、展開のさせ方も上手なように感じる。また登場人物にこじゃれた言葉を語らせもしている。しかしどうもレベルが高いように思われない。
脚本家は台詞でつないでいくだけの仕事ではないと思うのだが、やはりそういう性が小説などにもでるのだろうか。
ただ「タワシタ」という話は面白かった。主人公が○月○日と書き継いでいく形式で、理想のバー作りに参画していく話だった。
この中味が実に想像力を書き立てる。
こだわりを持ちながら、仲間とともに進めていくその経緯が実に楽しそうである。内装に手をかけるために一切購入した建物の外装に手をつけない(錆びれた自動車工場である)。内装は土壁にする。そこに真っ白なキャンパスを立てかけておき、客の絵描きに描かせる。飲み物にこだわるだけでなく、酒の一つ一つに合うつまみも全国から取り寄せる、月ごとのカレー料理企画がある…ああ、本の中のこととはいえ羨ましい限り。
と思うのは自分が食いしん坊のせいか。
そこにはディテールを十分感じるんだよなあ。
さすがにあの「料理の鉄人」の放送作家だと、奥付で知った。
まして小説などはあまり手をつけなかったし、かなり限定された作者しか読まなかった。それが今では人並みに人気作家と呼ばれる人の著書にも手を伸ばすようになり、いくらか読めるようになってきたのかもしれない。
小山薫堂。
『おくりびと』の脚本を手がけ、脚光を浴びた人である。行きつけの書店に行ったら文庫本が並んでいたので、読んでみることにした。
『フィルム』(講談社文庫)という書名の短編小説集であった。
冒頭の「アウトポスト・タヴァーン」という作品を読み終え、あれっと感じた。何かスカスカする、という印象だ。これは次の標題作「フィルム」も同様だった。
ディテールがもの足りない、なんて生意気な言い方だが、まさしくそんなふうに思ったのだ。
人物の表情や周囲の風景、ちょっとした場や時間のつなぎのことなのだろうが、そうした点がスカスカしていて、十分に満足感を得られないことが寂しい。
筋立ては十分に面白いし、展開のさせ方も上手なように感じる。また登場人物にこじゃれた言葉を語らせもしている。しかしどうもレベルが高いように思われない。
脚本家は台詞でつないでいくだけの仕事ではないと思うのだが、やはりそういう性が小説などにもでるのだろうか。
ただ「タワシタ」という話は面白かった。主人公が○月○日と書き継いでいく形式で、理想のバー作りに参画していく話だった。
この中味が実に想像力を書き立てる。
こだわりを持ちながら、仲間とともに進めていくその経緯が実に楽しそうである。内装に手をかけるために一切購入した建物の外装に手をつけない(錆びれた自動車工場である)。内装は土壁にする。そこに真っ白なキャンパスを立てかけておき、客の絵描きに描かせる。飲み物にこだわるだけでなく、酒の一つ一つに合うつまみも全国から取り寄せる、月ごとのカレー料理企画がある…ああ、本の中のこととはいえ羨ましい限り。
と思うのは自分が食いしん坊のせいか。
そこにはディテールを十分感じるんだよなあ。
さすがにあの「料理の鉄人」の放送作家だと、奥付で知った。