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桜と絵本と豆乳と

表現や伝達は、言と語で

2010年01月10日 | 読書
 『白川静さんに学ぶ 漢字は楽しい』(小山鉄郎著 新潮文庫)を読んだ。
 『常用字解』は手元においてあるので、いくらかの予備知識は持っているが、ある程度まとまった形を読むのもまた楽しい。

 漢字のでき方以外にも興味深いなあと感じた箇所がいくつかあるが、ここはへえっふむふむとなった。「言」の項である。

 一般に「言語」といいますが、この「言」は攻撃的な言語であり、一方「語」の方は防御的な言語であったようです。軍事的な戦いの際には、実際の戦闘の前に口合戦が行われました。
 
 部族内の慣わしや祈り、部族同士の諍い、戦い…そうしたとてつもない長い歴史の中で生み出され、磨かれてきた漢字の宇宙がまた広がるなあと感ずる。

 それにしても、攻撃的な「言」と防御的な「語」という比較は面白い。
 白川漢字学では「言」自体が神に誓う言葉とされているので、戦いの前に自分たちの主張や信念を堂々と述べるという姿になるのだろうか。
 対して「語」には意味として「話しあう」があるように、「攻撃」を受けとめながら、はねかえしたり正当性を説いたりするのだろうか。

 言葉を遣うことの原型のひとつがそこにあるような気がする。

 今の世の中だって、どんな表現にもどんな伝達にも言があり語があるはずだと考えると、ちょっぴり背筋を伸ばしてみたくなる。