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充電メモ「楽しさの保障と質」

2010年03月17日 | 読書
 『遺伝子学者と脳科学者の往復書簡』(村上和雄・川島隆太 くもん出版)
 
 ありそうでなかった組み合わせである。
 対談をもとにこの形式での出版となったそうだ。ある程度まとまった形で論が示されるのでわかりやすい。
 私たちが意識しているようで見過ごしがちな点の指摘もある。川島氏は次のように書いている。

 「喜んで取り組む」と「自分から取り組む」を混在しないよう、注意が必要だ
 
 様々に教材が工夫されるなかで、「楽しさ」が強調されているものも多いが、それで抵抗感を減らすだけではいけない。
 次なるステップ、つまりは「多少の苦痛をがまんして」へ誘導する必要があるという。

 そして成長期にとって最も必要なことは、こんなふうに見出しがつけられたていた。

 脳活性化の切り札は親子のコミュニケーション
 
 コミュニケーションという言葉から、次の著のある部分が連想された。

 『国語科「言語活動の充実」事例』(岩下修著 明治図書)
 
 岩下ファンの一人としては今までの著書を読みきっているので、内容面で新味が多いわけではないが、宇佐美寛氏の定義をもとに、次のように章立てた箇所が興味深かった。

 授業はコミュニケーションである
 
 コミュニケーションは、ビックワードである。
 「伝え合う」「かかわり」「対話」…現場では様々な用語を使ったりするが、その意味を突き詰めているかといえば心許ない。
 もしコミュニケーションが成立しているかどうかを図る尺度があるとすれば、それは「楽しさ」かなあと思う。
 楽しいと、子どもも教師も感じられるかだ。

 その楽しさの保障、そして質の向上…言い換えれば、それが授業の善し悪しということになる。
 本で紹介されている岩下実践は、川島氏が言うところの「喜んで」から「自分から」へ取り組みがステップアップする過程を、見事に含んでいると思った。