すぷりんぐぶろぐ

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ほころびを見せる、途中点を見つける

2010年06月09日 | 読書
 『大人になるって何?』(晶文社)という本を見つけた。

 「鶴見俊輔と中学生たち」とある。つまり、老齢の思想家と中学生たちが寺子屋風に語り合った記録である。
 京都のローカル放送が企画したものらしい。それを出版するとはなかなか晶文社らしい。

 「親って何?」「先生って何?」「大人になるって何?」という三章に分かれていて、どれも面白いが、やはり職業上気になるのは二章の「先生」である。
 鶴見自身も教壇にたった経験を持つわけだが、中学生に語りかけるなかに独特の教師論が見える。

 自信のある先生は、生徒に自分のほころびを見せる。
 
 自己開示性は教師の資質としてはかなり大きなものだろうし、開示する対象が「ほころび」である場合、状況によっては生徒との距離をぐっと縮めてくれるかもしれない。
 中高生であるならば、そういう人間性に惹かれることはごく自然だし、それを感じとっている教員も多いのではないか。

 もう一つ、明確な視点が見える。

 途中点を見つける(教師)
 
 つまり最後の答だけではなく、その過程をしっかり見届け評価しているのか、ということだろう。
 それは「寄り添う」姿勢であり、これは子どもが小さければ小さいほど有効になり得る。子どもは途中点に励まされながら力をつけていくと言ってもいい。発達段階によってその頻度が下がるだろうが、それでもなくならないのが学校教育であると思う。
 努力はどんな形にしろ報われる要素があると言い続けねばならない。

 もちろん大人の仕事の多くに途中点はないわけだが、仕事を続けていくためには、そういう経験によって培われたことが大きいのではないか。