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今さら萬流コピー塾を読む

2010年06月22日 | 読書
 1984年3月に発刊された『糸井重里の萬流コピー塾』(文藝春秋)という本がある。
 伝説的といったら大げさかもしれないが、当時コピーライターとして脚光を浴びていた糸井が、週刊文春に連載コーナーをもっていて、それをまとめて単行本にしたものである。

 当時の自分といったら「おいしい生活」というコピーぐらいは知っていたかもしれないが、教職一筋?生活をしていたので、そんな文化とはずいぶんと縁遠い暮らしをしていたように思う。

 それにしても面白い。
 現在「ほぼ日」で展開されている『言いまつがい』や『小さいことばシリーズ』は、もちろん形式や内容は違うが、明らかにつながっているんだなあと確信する。
 つまり、常識的な目(や耳)では人の心をつかむことができないということを感じてしまう、という意味においてである。

 最近、テレビのバラエティなどで「なぞかけ」が流行っているようだが、要するに言葉の組み合わせに過ぎないように思う。
 しかしコピーとなると、もちろん語呂合わせやシモネタもあるにはあるが、そこから一歩も二歩も抜け出ている。
 もはや「詩」と呼んでいいかもしれない作品とも出会える。

 「女」というテーマで、「生きる資本主義」
 「時計」というテーマで、「長針はずして南国気分」
 「東京タワー」というテーマで、「てっぺんまでいかせろや、ねえちゃん」

 うーむ。見事だと思う。
 自分との関係性、他者との共感性をどれだけ掘り起こせるか…それが表現の質ということか。

 ここで扱われているテーマは「巨人軍の藤田監督」であったり「国鉄」「銭湯」であったり、かなり時代を感じさせるものも多いが、何を取り上げるかという時代性、そして普遍性というものも優れたコピーの条件であることを、今さらながらに感じる。