すぷりんぐぶろぐ

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経験値の低さから生まれる力

2010年06月23日 | 読書
 なるほど、ね。

 『現実入門』(穂村弘著 光文社文庫)を読んだ。

 「『虚虚実実』痛快エッセイ」とは裏表紙に書いてある文句だが、確かにその様相をみせながら、実はこれは恋愛小説であった。
 その意味での納得だった。

 今ではお気に入りの穂村の本は、初めて読んだのが『本当はちがうんだ日記』という単行本だった。そこでなんとまあ自分に似通った人がいるもんだと感じてから、結構目を通すようになった。

 本業の短歌はともかく、このエッセイも本領発揮だなあと思う。
 今さらながらにその本領というものを拾い上げてみると、妄想を果てしなく連鎖させて言葉を紡ぎだしていく、とでもいえばいいだろうか。

 文庫本の解説を書いている江國香織は、「嫌味のない文章と観察眼のよさ、そして会話の拾い方の妙」と非常にまともな評価をくだしているが、その内容を魅力的にしてるのは、やはり妄想力だと思う。

 「人生の経験値の低さ」を改善?しようとした試みからこの話は始まるが、考えてみればその力はだからこそ身についたといってもいいのかもしれない。

 アクティブでチャレンジングな性格でないことで養われる力も大切に育てなくては…などと誰に向かって言っているのかわからない言葉が浮かんできた。