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桜と絵本と豆乳と

ドックのベッドでベストセラー

2011年03月11日 | 読書
 仕事の都合で延期してもらった人間ドッグが今の時期になってしまった。ジタバタしてもしょうがないので、読書に勤しもうと三冊の本を持ち込んだ。
 
 一つは軽い小説で、あとは以前から気になっていたが読めずにいた本である。
 まずは
 
 『ゾウの時間ネズミの時間』(本川達雄 中公新書)

 かなり前のベストセラーである。多くの書評を目にしていて、いつかはと思っていたが、どうも理系のものには腰がひける。
 この新書も一章、二章ぐらいまではかなり引き込まれたが、段々と数式がいっぱい出てきたりして、正直読み飛ばしも多くなった。
 しかしそれでも、かなり興味深い事柄が随所にあったことはメモしておきたい。

 一つは「島の規則」ということ。動物のサイズに関する古生物学上の法則の一つらしい。
 島では体の大きい動物は小さくなり、逆に小さい動物は大きくなる。そういう変化の方向性は捕食者との関係によって決まってくる。
 著者はこれが人の発想や考えにも共通性があるのではないかと思いを巡らせている。大陸と島国との比較である。実に面白いと感じた。

 次は「技術の評価」ということである。
 
 技術というものは、次の三つの点から、評価されねばならない。(1)使い手の生活を豊かにすること、(2)使い手と相性がいいこと、(3)使い手の住んでいる環境と相性がいいこと。

 これについて動物学から産業革命まで論が及び、肯かされた。
 そして私の問題意識の一つに大きく関わるように感じた。
 つまり、それは教育技術にも当てはまるのかもしれないということ。いつか、もう少し細かく論じたい。

 時間と空間と力のとらえ方という、本書の中核に迫る考えの部分も面白く読めた。
 人間は空間認識はよくできるが、時間感覚はあまり発達していないと言う。そう言われてみて、はたして「時間感覚」とはなんだろうという根本的な疑問もわいてきて、また楽しかった。

 人間や現在の生活との比較が持ち出されると、文章が実に生き生きと感じられるのは、やはり読み手(私)の傾向なのだろう。動物の中の人間にしか興味がないという狭い了見なのだなあ。