すぷりんぐぶろぐ

桜と絵本と豆乳と

思い出したように読書日記

2011年03月07日 | 読書
 たしか一月から読み始めたんじゃなかったかなあ。通勤バッグに入れたけれど、どうしたわけか遅々と進まず、ようやく昨日読了したのが

 『日本語作文術~伝わる文章を書くために~』(野内良三 中公新書)

 ひと月ほど前、ちょっと引用して書いたこともあったはずだ。
 http://blog.goo.ne.jp/spring25-4/e/7b0f914ecc6c9f9d762f948c60300a0e

 この新書は実に明快である。
 「実用文」を書くために「型」を重視する。そのこと自体は珍しくないだろうが、特に「定型表現」を使いこなすことに大きくページが割かれている。
 普通なら、避けなさいと忠告されることの多い定型表現だが、その効用は意外に大きく、存分に利用するべきと論を進めている。
 最終章に著者が集めた定型表現が集約されており、それ自体も読み応え(知らない句が多数あり)がある。

 
 この書の中で、定型表現が上手いとされた宮部みゆき。もちろん超のつく有名作家だが、今まで縁がなかった。
 昨年末、野口芳宏先生と小宴をご一緒させていただいた折に先生の口からその名前が出たように記憶している。
 ここは手頃なものを一つと、手にとったのが

 『今夜は眠れない』(中央公論社)

 二十年近く前の作品。
 どんな評価か知らないけれど、さすがベストセラー連発作家である。推理小説のような展開でぐんぐん惹きつけられた。定型表現を探して読み始めたわけではないし、実際そんなに感じなかった。
 しかし改めてぱっと開いたページで探してみると「眉をひそめながら」「心得顔で」「耳をそばだてた」…やはり結構見つかる。
 何かこれで文章のリズムを整えている節があるのだが、そんなに単純ではないだろうか。


 さて、最近読んだ中でもっともいいなあと思ったのが、

 『彼らの流儀』(沢木耕太郎 朝日新聞社)

 90年代に朝日新聞に連載したコラムがまとめられた本である。
 遠い昔に、沢木耕太郎のノンフィクションを読んだような気もするのだが、ほとんど初めてと言ってよい。
 これは良かった。105円!では申し訳ない感じである。
 著者の周囲の人、また仕事を通じて知り合った人などのエピソードが実に鮮やかに描かれている。
 自分はこの手のノンフィクションに惹かれるということを改めて感じさせられた。長編にも手を伸ばしてみようと思っている。