すぷりんぐぶろぐ

桜と絵本と豆乳と

苦手な苦味に教えられる

2017年10月24日 | 読書
 「苦手な食べ物も口にしなくちゃ」と思うのは、今さら健康のため、と考えるだけでなく、もしかしたら美味しく感じる可能性もある、というチャレンジング精神がまだ残っているから…。とかなり自惚れた解釈をして、「読書の秋」に苦手な何か「時代小説」に挑もうと決意。選んだのはアラカルトで、少し逃げ腰だ。



2017読了105
 『衝撃を受けた時代小説傑作選』(文春文庫)



 時代小説を自ら著す三人の女流作家が、2編ずつ「読者」として選んだ計6つの短編小説アンソロジー。「衝撃を受けた」の形容どおり、確かに話の筋は面白く、意外な展開に引き込まれる要素もあった。それゆえ、苦手とする言葉がもう少し理解できれば、と感じたことも確かだ。「ガクが必要」と久しぶりに思った。


 正確に説明できない語彙は50以上はあったか。それでも読み進められるから…。言い回しも作者毎に独特だ。ドラマで有名な「半七捕物帳」にはこんな表現もある。「十に九つはこっちの物だという顔をして」…どんな感じか解釈を試みると、2,3秒経ってから「自信ありげな顔」だと納得するので、タイムロスが癪に障る。


 選者三人の鼎談が興味深い。自分たちも書き手であり、知識も思い入れもある。なるほどと思ったのは時代小説には「希望がない」ものがあるという件だ。「時代」は残酷であり、非情であり、無情であること。救いや希望のない終わり方に見られる潔さ。それはけして為政者に利用されるような身の処し方ではない。


 自分では日本史好きなつもりでいたが、どうも薄っぺらいと反省した。実在人物にそった物語のような感覚だったか。鼎談の結びの言葉が痛く響いてくる。「歴史の教科書にある、何年何月何日に誰が何した、っていうのは為政者の『記録』であって、血の通った人間を知りたければ小説を読んでくださいってことです