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源が語る「優秀な集団」

2017年10月20日 | 読書
 「私が好きになるものは割といつも早くなくなってしまう。」この一文で著者へのシンパシーがぐっと上がった。我が家で語り継がれるジンクス(笑)そのままである。あの乗り物も、あの発泡酒も、あのスポットも…楽しそう、美味しそうと手を出した事物がことごとく消え去る。そう感じている人は意外と多いのかな。



2017読了104
 『そして生活はつづく』(星野源 文春文庫)


 「駄目っぷり」や「他者についていけない感」を語るエッセイは結構読んでいて、そのぬるいが俯瞰的な目が好きだ。書き手の系統は明らかだ。宮沢章夫、宮藤官九郎、松尾スズキ…とこんな面々が続いたあとに、星野源が登場するのはごく自然か。今の世にマッチする、ある意味の軽さや伸びやかさが魅力になる。


 ひとりっ子として育ち、ずいぶんと行く末を左右する「腹の弱さ」を抱え、周りに様々な話題を提供してきた著者が、今に行きつき、こんなふうに書いていることが素晴らしい。「生きづらさを緩和するために表現をするのだし、マイナスがあるからプラスが生まれるわけだし、陰があるから光が美しく見えるのである


 この著は某雑誌の連載のまとめだが、「ひとりはつづく」という章が書き下ろしになっていて、それゆえ著者の考えがコンパクトに集約されていると思った。次の文章は、これから中核としてこの国の社会を支えていく世代の一つの代弁ではないか。唐突だが、こういった意識が反映される選挙結果にしてほしいと願う。

 本当に優秀な集団というのは、おそらく「ひとつでいることを持続させることができる」人たちよりも、「全員が違うことを考えながら持続できる」人たちのことを言うんじゃないだろうか。