(UGO 2017.11.6③)
先日読了した『ことわざおじさん』(山口タオ ポプラ社)の面白さをもう少し書いてみたい。
「ことわざパロデイ」がいくつかの解釈パターンができることに気づいた。
例1
原 作「犬も歩けば棒にあたる」
parody「犬も一日中歩けば、ぼーっとする」
原作は、積極的に動いたり外に出たりすれば幸運(もしくは災難)に出逢うという意。パロは、積極的に動き続ければかなり疲れるということ。
いわば対蹠的(物事が正反対)な関係と言っていいし、また「やりすぎ厳禁」という歯止め効果を狙う句とも言える。
類似句「スズメ百まで踊り忘れず」→「スズメ百まで踊り過ぎではないか」
例2
原 作「果報は寝て待て」
parody「あほうは寝てます」
これも例1と似ているが、原作をかなり批判的な目で見ている。
つまり、いい知らせは自然にやってくるからあせらず待て、と考えているのは「阿呆」。動かない者への批判、嘲笑的な意味合いを感ずる。
類似句「棚からぼた餅」→「激辛ぼち餅」
例3
原 作「絵に描いた餅」
parody「絵に描いたモチベーション」
これは類似系というか、現代的な新解釈だ。
原作は、立派そうに見えるが実際には役に立たないものを指している。
「餅」を「モチベーション」と言い換えると、実に今風で、若者に(だけではないか)ありがちな状態を示すではないか。
つまり「長続きしない」。根拠のない自信を持つこともある面で評価できるが、こう言われてはぐさっとくる。
類似句「天災は忘れた頃にやってくる」→「返済は忘れた頃にやってくる」
同系はあまりないが、「柳に風」→「柳に『なぜ?』」が、なかなかシュールでイチ押しである。
原作からの意味とかなりかけ離れるが、答えは風に吹かれているというイメージが心地よい。