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「ムノウ」への道、どうせ

2017年11月11日 | 読書
 どうしてこんな見間違いをしたのか。新書をまとめて数冊買おうとしたとき、背表紙を見て「ムノウリョク」と読んだ。「〇〇力」と題する本は巷にあふれているが、「無力」いや「無力」まで取り上げられるか…と、そこで既に目を離してしまったに違いない、家へ帰って改めてみて、ああそうだったかと苦笑した。

2017読了114
 『無悩力』(武田双雲  小学館新書)



(UGO 2017ginkgo①)

 「ムノウ」→「無能」→「無脳」→「無悩」という流れだったか。そういえば昔、つげ義春の「無能の人」という作品があった。漫画も見たし、竹中直人が作った映画も観た記憶がある。主人公の石を売る場面が頭に残っている。「能がない」という慣用句はこの頃使われないが、これほど端的に評価する言葉も珍しい。


 「能」は「脳」からの指令で発揮できるものだろう。だから「無脳」だったら「無能」は当然だ。では「悩」の方はどうだろうか。これだってやはり「脳」からくる。「無脳」であればやはり「無悩」なのだ。結局のところ、「能」も「悩」も「脳」に支配されている。全てのことは「脳」の使い方一つ。「力」はそこにある。


 と、あまり強調すると唯脳論みたいなイメージだが、読んだのは「無悩力」。どうしたら悩みを無くすことができるか、という話だ。指折りのポジィティブ有名人である書家武田双雲が挙げるポイントはたくさんあるが、個人的に心に残ったのは「脱力」「外部環境に自分の機嫌を預けない」「受け入れる」ことである。


 頻出している語は「自己肯定感」であり、おそらくこの手の本では定番とも言える。それを強める一番の心がけはこの一節ではないか…「人間って『悩みたい生き物』なのです」。そんなふうに、達観までいかなくとも一歩離れることが「無悩」への道。どうせたどり着かないから、楽しく行こうぜ!という精神だろう。