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30年もっている歌

2017年11月15日 | 雑記帳

(UGO 2017ginkgo④)

 「この味がいいね」と君が言ったから七月六日はサラダ記念日

 俵万智を「まだ生きているんだ」と驚く中高生がいるらしい。それだけこの短歌は古典?になったというべきか。それは言い過ぎだが、この歌の登場は確かに驚きだった。現代詩は少しかじったが、古い詩歌の素養がない者には、本当に新しい風が吹いたような爽やかさやわくわくした気持ちが湧いたことを覚えている。


 「『~~~~~』と君が言ったから○月○日は○○○記念日」とパロディ風に歌を作らせたりしたこともあった。一年を通して作歌させた学級もあり、当時あったコンクールで数人が賞に輝いた嬉しい思い出もある。この歌の発想はもちろん、わかりやすい言葉が魅力だったが、実は「もってる歌」だと俵が書いている。


 作った本人が考えていないことを指摘する識者が多かったらしい。まず「七月六日」に、芭蕉の句にある「七夕前日の風情」を感じたと丸谷才一が語った。シェイクスピアの研究者である小田島雄志は「サラダデイズ」という言い回しがシェイクスピア作品にあり、「青春」のニュアンスについて関連性を指摘したという。


 最近では、SNS上の「いいね!」の元祖がこの歌じゃないかと指摘されたそうである。意図して選んだ語ではなくとも、耳に馴染めば言葉の背景を考えたくなったり、何かに結びつけたくなったりして、拡がっていくのが「名歌」なのか。「『この歌がいいね』と皆が言ったから三十年もったサラダ記念日」お粗末様でした。