すぷりんぐぶろぐ

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妄想の暴走に満足

2017年11月01日 | 雑記帳


 立川志の輔の高座を2年ぶりに聴く。秋田市では定期的な独演会があるのだが、今まで曜日が合わないこともあって初参加。毎年文化会館大ホールを満員にするのだからさすがのビックネームだ。個人的には、同じ集客力があっても某日曜夕方番組に出る噺家たちとはレベルが違うと思っている。今回も大満足だった。


 前座等の出番もあったが6時半開始で予定30分オーバーの9時15分終了。体調を崩していたらしいが、それを感じさせない熱演だった。マクラで選挙速報のことを取り上げ「皆さん、次の選挙では出口調査で嘘をついて、報道を混乱させましょう」と呼び掛けた。放送局主催の高座で語る所が、ピリッと効いている。


 長いマクラはいつものことだが、今回は特に冴えていた。おそらく多くの噺家が取り上げただろう「忖度」のこと。日常風景に存する忖度の描き方が本当に上手い。考えればこの「おしはかること」が企業の団結力や上昇志向を助け、日本の発展を支えてきた。それがある意味、政治家によって汚されたのかもしれない。


 演目は古典で一席目は「ちりとてちん」。見事な食べっぷり、嗅ぎっぷりだった。二席目は「宿屋の富」。滑稽噺に登場する定番の一つに「妄想」があるが、こうした場面を演じさせれば志の輔は絶品である。妄想の暴走ぶりをあそこまで感じさせてくれる芸は、きっと全体を見渡せるもう一つの鋭い目があってこそだろう。