すぷりんぐぶろぐ

桜と絵本と豆乳と

絵本がもたらす時の価値

2020年04月18日 | 読書
 巣ごもり読書(自分はいつもだけれど…)のために。


 『絵本は心のへその緒』松居直(NPOブックスタート)




 今は一児の母親となっている長女が、生まれて何ヶ月ぐらいの月だったろうか。『いないないばあ』の絵本を見せながら読んだら、ニコーッとしたときの笑顔が忘れられない。絵本て凄いもんだなと感じた。以後は不真面目な父親であり、たいそうなことは言えないのだが、少しだけ関心の欠片は残してきたように思う。


 読み聞かせグループに入り、また非常勤ながら図書館に勤め始めたので、そこが膨らんできたのは確かなことだ。絵本について考える機会も多い。この本によると、1992年にイギリスで発案された「ブックスタート」(赤ちゃんに絵本を手渡す活動)は、現在日本でも広がり、全国の60%近い市町村が取り組んでいる。


 生後数か月の赤ちゃんに絵本は早いのではないか、という声も聞かれる。また、活動が早期教育と捉えられたりする。文字や数字を覚え、本好きになることに間接的な結びつきは考えられるにしても、その本質は違う。要は読み手と赤ちゃんとの、声を介したコミュニケーションをつくる手段としての価値の高さだろう。


 著者は絵本編集者を長く続けてきた経験を踏まえ、こう言い続けてきたという。「絵本は子どもに読ませる本ではなく、大人が子どもに読んでやる本」。子ども自ら本を読むことが読書推進の最終目標にあるはずだが、それとはまた別の視点がそこに色濃く出ている。つまり「読み手(親)と子どもが一緒にいる」ことだ。


 さらに「絵本は作者のものではなく、読み手のもの」とも書く。絵本が子どもの心の中にどう残るか、という点と大きく関わる。つまり「声の言葉」「一緒にページをめくる」感覚だ。何より「喜びを共にする」ことにおいて。だから本当に読み手が喜べる絵本を選ぶべきと改めて思う。その日がまた来ることを待って…。