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桃太郎を追った追究の鬼

2020年04月10日 | 読書
 こんな記事を書くほどなので、私にとって「桃太郎」は一つの視点にもなっている。何気なく新刊本のコーナーを眺めていたら、一冊の題名が目に飛び込んできた。『桃太郎は盗人なのか?』そして副題は「『桃太郎』から考える鬼の正体」とある。ナニナニッ、著者は倉橋よつば。表紙写真をみると、小学生らしい。


 なんと「図書館を使った調べる学習コンクール」で文部科学大臣賞をとった子らしい。それにしても単行本化される内容なのか…この辺りのいきさつは出版社の社長が「あとがき」として記してある。内容を読了してからそれをみたが、納得の出来映えであった。有田和正先生が生きていらしたら、絶賛しただろうな。


 つまり桃太郎の正体や鬼の存在について、小5の女の子がまさに「追究の鬼」と化している。もともとこのコンクールでいい賞を取っていた彼女が、副賞としてもらった一つの本への疑問をきっかけに、桃太郎研究に取り組むのは、出来過ぎともいえるが、環境が備わっていたこと以上に好奇心の塊がドンと伝わってくる。


 江戸時代まで遡り、桃太郎がどんな描かれ方をしていたか追究していく。大人としては、江戸から明治・大正・昭和と軍国主義へ進む世相も絡ませたいところだが、そんな色気もなしに真っすぐその当時の書いた人と向き合い、自分の感想を積み重ねている印象だ。調べていく中で関わる様々な人との出会いも楽しい。


 第四章に「得体の知れないもの・理解できないものを『鬼』とすることで、人は心を安定させていた。時代の流れと共に鬼の正体はかわってきた」と書かれてある。昔は、「疫病」もその一つだったはずだ。今の感染症も一部解明できず鬼化しているとも言えるが、それ以上に、国難に立ち向かうべき私達を見渡せば、「上」にも「横」にも鬼がうじゃうじゃしているか