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「普通の人」の感覚を自分に問う

2020年09月02日 | 読書
 『ちくま』の連載「世の中ラボ」が興味深かった。斎藤美奈子による書評コーナーで、毎回テーマに沿った3冊が取り上げられる。今回は「百田尚樹の人気の秘密」。近年発刊されたそれら「百田尚樹解説本」3冊は読んでないが、いつもながら見事な切り口で、テーマに迫っていた。百田小説ファンとしては納得いく。


 百田の『永遠の0』を読んでその面白さを知ってから、次々と出される多様なモチーフの本を読み漁った。素晴らしいエンタメ作家だと思う。しかし、エッセイや歴史本?等はどこか軽薄、短絡さを感じるし、正直肌に合わない。思想的な考えはともかく、なんとなく「煽っている」感が強くて途中で満腹になるのだ。



 斎藤によれば、百田人気の第一の理由は「巧みな語り口と話のおもしろさ」。それは放送作家の面目躍如と言える。そして第二は「『普通の人』の感覚」が支えているという。この部分の引用に注目した。木村忠正という人がヤフーニュースのコメント欄を分析し、次の三つを「『普通の人』の感覚」としたと紹介してある。

(1)韓国、中国に対する憤り
(2)少数派が優遇されることへの憤り
(3)反マスコミという感情



 ヤフーニュースサイトに一日一度は訪れるが、コメント欄などめったに見ることはない。しかし、雰囲気はそれに近いようだ。自分自身「普通の人」だと思うがこの三つの感覚はどうだろう。自己点検してみよう。ずばり言えば、いずれも「ないわけではない」。ただそれを大雑把に括ってしまうと、思考停止になる。


 特に(2)は非常に難しい。正直、人はそんなふうに育てられるし、育てようとする。本を読み様々な発言をしているが、毎日口をつく言葉を丁寧に拾ってみれば、いかに多数派主義に染まっているか愕然とすることも多い。今憤りを向ける相手の顔は、もしかしたら自分ではないのか。想像する力を鈍らせてはいけない。