すぷりんぐぶろぐ

桜と絵本と豆乳と

レジェンドたちの熱を想う

2020年09月08日 | 読書
 レジェンドと名づけていい人物が、この日本には何人ぐらい居るのだろう。個別の専門分野の数だけ存在する(した)かもしれない。第一人者とはまた違う響きだが、この人たちはどちらも兼ね備えている。


 『南極のペンギン』(高倉健  集英社文庫)

 唐仁原教久というイラストレーターの絵とともに10編のエッセイが収められている。絵本というジャンルでもない気がするが、小学校高学年や中学生に読み聞かせたくなる内容だ。特に冒頭の「アフリカの少年」、表題作の「南極のペンギン」は印象深い。黙読していても、健さんのあの声で語りかけられているようで心地よかった。もし、自分が読むとしたら影響を受けるのだろうか。いやいや、精神さえ伝えればよいのだ。


 『勘三郎伝説』(関容子  文春文庫)

 歌舞伎役者の有名どころは結構観たが、何故かこの同齢の天才役者を直接見ることが叶わなかった。つぐつく残念だ。親しい者だけが知るエピソードも含めて、とにかく魅力的な一生が綴られている。「生き急いだ」ようにも見られるが、著者の紹介した一節がすべてを物語っていると感じた。「南米には年の取り方について『老いる者と、若さを重ねる者がいる』という考え方があるそうだが、中村屋はまさに後者。




 『勝負師の極意』(武豊  双葉文庫)

 この競馬騎手は故人ではないが、上の二人と同じにもはやレジェンドと呼んでいいだろう。他に勝利を重ねつつある騎手がいたとしても異なる点は「華がある」ことだ。その真ん中に名馬たちとの出逢いがあり、ドラマを作ってきたことがファンを惹きつけてやまないのだと思う。勝負となれば、この騎手でさえ2割も勝てないのだが、負けたレースにこそ学ぶべきことはきあるはずだ。印象的なのは「不運を幸運に変えることは難しい。でも、不可能ではないのです」と言い切っていることだ。