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後回しにはできない問題

2020年11月13日 | 読書
 よく訪問する教育関係のブログで紹介されていて、読んでみたいとすぐ思い注文した。著者の本業?は漫才師。マシンガンズという名に記憶はあるが顔はすぐ浮かんでこない。というような境遇が彼をこの仕事に就かせたのだろう。その日常をツイッターにアップしていて話題になったらしい。面白くないわけがない。

『このゴミは収集できません』(滝沢秀一  白夜書房)


 幼い男の子はゴミ収集車に興味をよく示す。大人はその仕事を「3K」と称す。職業に貴賤なしと言われても、業務のハードさは想像がつくし、多くの人が持つイメージは未だに払しょくされない。倉本聡の名ドラマ「北の国から」で純をその仕事に就かせた意図は明らかだ。社会構図を考えるうえでの貴重な存在だ。


 読む前から「ゴミを見れば人の本性がわかるのではないか」「ゴミを考えれば社会のある面が見えるのではないか」と考えていた。まさしく、それらは文章に表されていた。ゴミ収集に関わる当事者の、実に臨場感があふれる表現だった。第一章のイラストつきツィートを、笑いながら見ていても考えさせられる部分がある。

12#ゴミ清掃員の日常
 ゴミを出し忘れたと走ってくる人はかわいいものだが、たまに自転車で追ってくる人がいる。自転車で追ってくる人はそれでもまだかわいい方だ。ごくたまに車で追ってくる人がいる。そこまでの執念があるならば、なぜほんの少し早起きできなかったのか?


 もちろん、まれな状況であることはわかる。しかし皮肉ともとれるこの表現は、今の社会の、都会で暮らす人々の、ある面の縮図ではないか。絶えず何かに疲れ、追われ、間に合わせなければならない日々で、判断に狂いが生じたり、歪みが見えたりする姿と言えないか。ゴミは一番後回しにしていい問題ではないのだ。



 興味深かった事の一つに「格差」がある。生活程度によってゴミの中味や量が違うのは予想されることだ。都会の実態とはいえなるほどと思った、著者の「結論」は次の通り。「金持ちは気持ちに余裕があるので、自分に目を向け、自己投資をしている。その自己投資が小さな消費を抑えていると言っても過言ではない


 「世界一ゴミだらけの日本」で示されるデータには、改めて驚く。産業廃棄物だけでなく生活ゴミレベルでも他国を凌駕している。その打開は、かなり骨太な政策がないと困難だ。国民としてはその自覚を持ちつつ、とりあえず著者の最後の願い「生ごみの水分をなるべく切ってください」だけは、きちんと応えよう。