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平成18年度試験・選択式・「社会保険に関する一般常識」

2006-09-28 05:56:50 | 過去問データベース
まずは問題を見てください。

戦後の混乱は社会保険制度にほとんど壊滅的打撃を与えた。昭和20年
には、官業共済組合をふくめて、全国民の約3分の1が( A )に加入
していたといわれ、( B )は全国で約1万組合、被保険者約4,100万人
に達していたが、昭和22年6月にはわずかに40%ほどの組合が事業を
継続しているにすぎない状態であった。( C )もまた財源確保のために
( D )の改訂と料率引上げを繰り返さざるをえなかったのである。
ただし、昭和22年に労働者災害補償保険法と失業保険法が制定されたことは、
社会保険の大きな前進であったといえる。これに対応して、( C )の
給付から業務上災害がのぞかれ、( E )も事業主責任の分離を行った
のは当然である。なお、日雇労働者にも失業保険が適用されたのは昭和24年
5月からであった。

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「社会保険制度の沿革」に関する問題です。
年金制度、医療保険制度などの沿革については、社会保険に関する
一般常識からは頻繁に出題されています。
しかし、まったく同じという出題はありません。

ということで、今回の問題とまったく同内容の問題は過去に出題
されたことはありません。

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平成18年の選択式、空欄Aについて、解答がどうなるかは、公式発表が
行われないと何ともいえないところですので、ここでは言及しませんが、
そのほかの部分について、

厚生統計協会が発行している「保険と年金の動向2005年」に
「国民健康保険はめざましい発展を遂げ、昭和20年には、組合数10,349、
被保険者数4,075万人達した」
「昭和22年、労働者災害補償保険法と失業保険法が制定され、健康保険
においては、業務外の事故に対してのみ給付が行われることとなった」
「昭和22年、労働者災害補償保険制度が創設されたことに伴い、厚生年金
保険における事業主責任を分離するとともに・・・」
という記載があります。ですので、空欄B、C、Eは、これらの記載から
解答がわかります。

ちなみに、東京社会保険協会発行の「社会保険制度 改正経過概要」では、
障害年金について、昭和19年10月から「業務上については平均報酬月額の
5か月分から8か月分、業務外については4か月分とし・・・」、昭和22年
9月から「業務上外を問わず単一給付とする」とあり、空欄Eの根拠的な
内容があります。
そのほか、「社会保険制度 改正経過概要」によると、昭和17年から24年の
間に8回も標準報酬の改訂が行われていますので、空欄Dは「標準報酬」
で間違いないということになります。

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では、社会保険の沿革の問題、過去にどのような出題があったか見て
おきましょう。

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【昭44-記述】
わが国においては、昭和36年以降( A )、( B )の体制が確立
され、社会保険制度の体系的整備が実現された。

【昭57-記述】
昭和34年に国民年金法が制定され、同年11月から( A )の給付が、
次いで昭和( B )年4月から拠出制国民年金の保険料の納付が始まり、
これによって( C )体制が確立された。

【昭63-記述】
我が国の医療保険制度の歴史は古く、大正11年(1922年)に( A )
が制定されたことに遡る。
第二次世界大戦後、全国民に対して医療保険制度を適用していくための
準備が進められ、自営業者、農民等の全ての非被用者を対象とする新しい
( B )が制定され、昭和36年(1961年)から全面的に実施され、
国民皆保険が実現した。

【平元-記述】
昭和61年4月より実施されている現行年金制度においては、( A )は
自営業者だけでなく被用者本人及びその被扶養配偶者にも適用され、
全国民に共通する( B )を支給する制度となった。

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かなり古い問題です。今現在の受験生の力からすると、これらの内容は
基本中の基本というところです。
ですので、このレベルの問題では、ほとんど差がつかないでしょうね。
試験というのは、やはりある程度差がつかないと、意味がないわけで、
そうなると、受験生のレベルが上がれば、やはり問題のレベルも上がり、
制度の根幹により一層突っ込んだ内容が出題されるってことになる
でしょう。

とはいえ、平成18年の出題、問題文に不適切な記載があるというのは、
考えものですが・・・

レベル設定という点では、当然のレベルでしょうし、出題内容も前述した
書籍の内容をベースにしたということで考えれば、出題そのものを批判
するような内容ではないでしょう。

ちなみに、先日、政府刊行物メールマガジンで、売れ行き良好ベスト5
なるものを紹介していましたが
3位が「国民衛生の動向 2006」(厚生統計協会)という書籍で、
これって「保険と年金の動向」の姉妹書みたいものでして、つまり発売
時期の関係があるので、「保険と年金の動向」は上位にランクはされて
ませんが、「保険と年金の動向」もかなり世に出ている本なんですよ。

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【昭44-記述】
( A ):国民皆保険
( B ):国民皆年金

【昭57-記述】
( A ):福祉年金
( B ):36
( C ):国民皆年金

【昭63-記述】
( A ):健康保険法
( B ):国民健康保険法

【平元-記述】
( A ):国民年金
( B ):基礎年金

【平18-選択】の解答です。
( A ):医療保険(あえて、何かを解答とするのであれば)
( B ):国民健康保険
( C ):健康保険
( D ):標準報酬
( E ):厚生年金保険

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この問題について、栗澤純一氏から下記のコメントを頂いています。

正解肢の設定の精度に問題があるとはいえ、個人的な見解としては、
出題対象としてはとても重要であると思います。確かに、根拠とされる
文献は、試験対策として直接的に押さえるものではありませんし、論点も
非常に細かいものばかりです。

ただ、社会保険労務士を目指す方には、申し添えておきたいことがあります。

「目先のことだけ追っていては、事の本質を見落とします」

社会保障制度は一朝一夕にして現在の仕組みが構築されたわけではありません。
今回、論点とされた戦後の社会保障を含め、国民皆保険・皆年金、介護保険
制度・・・すべては積み重ねで築き上げられたものですよね。
「温故知新」という言葉がありますが、積み重ねられるものには、すべてに
意味があるのですから、そのおおもとの部分をきちんと理解しておかなければ
本質は理解できません。

社労士業務・・・いや、何事も同じですね。社労士として仕事をしていく中
では、今後もさまざまな法改正が行われるでしょう。そのときに、「改正
事項」だけを知っていれば十分というものではありません。なぜ、その改正
が行われたのか、どうしてそのような規定になったのか?ということを、
日々積み重ねていかなければ、結局は付け焼刃の仕事しかできません。

少し長くなってしまいましたが、「残念ながら、今年はこの社会一般の問題で
涙を飲む」ことになった方も大勢いらっしゃると思います。
ですが、「なんだ、こんな問題!」で片付けないでください。
結果的にこの問題に翻弄され、1年間、余分に試験勉強をすることになるかも
しれませんが、「すべては積み重ねで成り立っている」という本質を気づかせて
くれる設問であることに間違いはありません。
社労士試験に限らず、合格した後の社労士像にも通ずるものですから。
このことを納得して頑張るのと、「平成の時代に戦後云々なんて!」と、
割り切れない思いで頑張るのとでは、今後の頑張りに大きな差が出てしまい
ますから・・・

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