和田浦海岸

家からは海は見えませんが、波が荒いときなどは、打ち寄せる波の音がきこえます。夏は潮風と蝉の声。

よどみに浮かぶうたかた。

2012-05-25 | 短文紹介
藤原正彦著「遥かなるケンブリッジ」(新潮社)を
読んでいたら、あれ、方丈記?
という箇所がありました。

それは最後の第12章「イギリスとイギリス人」に出てきます。
とりあえず、その前に第11章のおわりの箇所を引用。

「イギリス・ユーモアは、つらい時にこそ光を放つ。現実から一歩だけ退き、永遠の光の中でそれを見直すことで笑いを誘う。イギリス・ユーモアの根底には無常感がある。リチャードの生き方が分かったような気がした。イギリス人が少し分かったような気がした。」


さて、では第12章のこの箇所を引用。

「ユーモアの複雑多岐な形を貫いて、一つ共通することは、『いったん自らを状況の外へ置く』という姿勢である。『対象にのめりこまず距離を置く』という余裕がユーモアの源である。真のユーモアは単なる滑稽感覚とは異なる。人生の不条理や悲哀を鋭く嗅ぎとりながらも、それを『よどみに浮かぶ泡(うたかた)』と突き放し、笑いとばすことで、陰気な悲観主義に沈むのを斥けようというのである。それは究極的には無常感に通じる。」

なんとも、イギリス・ユーモアを語るのに、さらりと、
『よどみに浮かぶ泡(うたかた)』
という文句を引用してしまう言語感覚。
これも、無常感に通低する連想なのでしょうか?
随所に、そういう言語感覚を味わえる
イギリス留学の数学者と、そのご家族の冒険。
として私は読みました。
コメント
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