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和田浦海岸

家からは海は見えませんが、波が荒いときなどは、打ち寄せる波の音がきこえます。夏は潮風と蝉の声。

青く澄んだ大空に。

2015-06-21 | 短文紹介
平山周吉著「戦争画リターンズ」で
藤田嗣治作の「ハルハ河畔之戦闘」を
取り上げた箇所があります。

戦後。ノモンハン会の会員のために、
その絵のカラー写真を無償配布することに
なります。そこの箇所に

「この写真版は、レイアウトも原画と違い、
上部の空の部分をカットし、実物よりも横長
になっているという・・・」(p201)

この絵の作成にかんする、
藤田嗣治の文のなかには、

「今描毫中のノモンハン作戦にしても、
この広莫たる、東京から熊本迄も続くと言う
大草原の感じを第一に現わさねばならぬ、
青く澄んだ大空に満蒙独特の白雲まで
すべてが遠距離の感覚を出現せねばならぬ、
一ヶ月余りの野営に不自由を忍んだ将兵の
表情から色あせた軍服の気分は勿論の事
かき現わさねばならぬ。・・」(p191)

クローズアップされる現代では
まずは、カットされるのが空。

さて、「新潮45」7月号に載る
平山周吉氏の文は、こうはじまります。

「『戦後七十年』の夏がやってきた。
日本に平和な時代が七十年続いてきたのは、
考えてみれば、奇跡というしかない。
なにものかに感謝せずにはおれない僥倖である。
・・・・4月9日、ペリリュー島慰霊の映像を
テレビ中継で見てる時だった。
西太平洋戦没者の碑に供花、拝礼された後、
両陛下は静かに海の方へと歩まれた。
紺青の海の向こうに、深々と一礼する。
その先には、もう一つの玉砕の島
アンガウルの穏やかな島影が、くっきりと見えた。」
(p20)

「パラオに詳しい倉田さんにとって驚き
だったのは、お天気が続いたことだった。
『パラオは年間四千ミリも雨が降る赤道
直下なのに、前後一週間はきれいに晴れて。
…』」(p21)

産経と読売と2紙をとっているので、
私は覚えているのですが、
4月10日の新聞一面には、どちらも
「アンガウル島に向かって拝礼される天皇、
皇后両陛下」写真が掲載されておりました。

産経の方が紙面の扱いが大きかったために
写真は大きく縦長長方形で、写真下から、
両陛下が黙礼されている後姿。
その前に海。海の向こうにアンガウル島。
そして、それらを包み込むような空。

読売新聞は、一面の左側に横長の写真。
紙面の都合か、アンガウル島の上の空は
島の輪郭を残して、みごとに空は
カットされておりました。

その日、新聞紙上で、
空のある写真と、空のない写真とを
見くらべておりました。
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