和田浦海岸

家からは海は見えませんが、波が荒いときなどは、打ち寄せる波の音がきこえます。夏は潮風と蝉の声。

そこに長い間気付けなかった。

2015-06-16 | 本棚並べ
草森紳一で、
私がパラパラと読んだのは二冊だけ。

それではと
草森紳一著「随筆 本が崩れる」(文春新書)
草森紳一著「記憶のちぎれ雲」(本の雑誌社)
をもってくる。


文春新書をひらくと
こんな箇所。

「資料調べは、
それ自体が、書くこと以上に楽しい。
が、しばしば役に立つかどうかも
わからぬ資料の入手のため、
たえず破産寸前に追いこまれる。」
(p34)

「お孫さんの副島種経氏にお逢いした時、
伝記をやると、破産しますよと心配そうに
仰言られた。」(p37)

部屋に積まれた本を撮ったり、
草森氏本人の貴重な写真があったりで、
それだけでも、新書を楽しめるのですが、
部屋についてなら、これかな

「本なら、十年かかっても読み切れぬほど、
脱衣室に険しい山を作っている。」(p49)

「ここ十年、家の中では蟹の横這いである。
蟹ではないわけであるから、どうしたって
そんな歩きかたには無理がある。また
本一冊とりだすのにも、不自然な姿勢を
とらざるをえない。腰痛は、この無理な
姿勢から来ていると睨んでいた。
『資料もの』の仕事が多かったので、
その楽しさの落し前をとられただけの話で、
なにも『本たち』が悪いわけでありえない。」
(p72)


「記憶のちぎれ雲」は
副題が「我が半自伝」。
装幀・各章扉は和田誠。
表紙の絵は、
青空をバックに
右手でタバコを口にする草森氏。
空にはちぎれ雲。

跋は山口隆(サンボマスター)
そこからも引用。

「草森さんの新しさは、
例えば化学薬品の開発のような
何かと何かを掛け合わせて生み出す
発明のようなものではない。

それは、もともと時代や人間個人の
本性として在り続けていて、だけど
僕らがそこに長い間気付けなかったり、
上手く言いたくても言えなかった部分、
正にそいつを時間軸と空間軸を自由に
使いこなして僕らに新しい
価値観として発見させてくれる。
そういう新しさなのだ。」(p443)


うん。
平山周吉著「戦争画リターンズ」の
読後感は、山口隆さんの、この跋の
言葉と、まさに、見事に重なります。
なんてことを、
草森紳一氏の本を読んでもいない
私は思うのでした(笑)。
ということで、これを機縁に
草森紳一氏の本に、
すんなりと触手が伸びますように。
コメント
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