和田浦海岸

家からは海は見えませんが、波が荒いときなどは、打ち寄せる波の音がきこえます。夏は潮風と蝉の声。

京都は絵になる。

2021-01-12 | 本棚並べ
200~300円を目安に、京都関連の古本を買ってます。
今のところ、読まないんだなあ。たとえていうなら、
口広の透明なガラス瓶に、硬貨をためてゆくような、
そんな感じで、貯まってゆく溜まってゆく具合です。

さて、今年になって、
入江敦彦著「読む京都」(本の雑誌社・2018年)が
あることを検索していると知りました。
出ている京都本を、一冊一冊取りあげているようです。
これが、気になったので、ちょっと高い古本でしたが、
購入する。新刊定価1600円+税。古本で950円でした。

著者・入江敦彦氏はというと、
1961年京都市西陣生まれ。多摩美術大学染織デザイン科卒。・・
とあります。
京都本が、つぎつぎに紹介されていて、京都本案内。
紹介されているのは、ほとんど私は持っていない本、
あるいは、読んでいない本ばかり(笑)。

それでも、視点は鮮やかで興味深い一冊。
たとえば、こんな箇所はいかがでしょう。

「京都は絵になる。しかし京都を端的に表現し得た
アート作品は古今東西を含め大変に少ない。むしろ活字のほうが、
この複雑で重層的な都市を描き出すのには向いているのかもしれない。
ヴィジュアル・エクスプレッションはどうしても京都の表面に
捕らわれてしまう。・・・・」(p50)

また、こんな箇所もありました。

「わたしは日本の古典文学研究を繙くたびに常々
『どうして、これらには【京都人が著した書物である】という
視点が欠落しているのであろう』と考えていた。
徳川幕府時代に書かれたものは何れも執拗に江戸=東京という
キーワードで読み解こうとするのに、それ以前の作品は
大雑把に『古典』扱い。平安=京都の視点で考察されることは少ない。
・・・・・・」(p22)

もう一箇所引用。それは
梅原猛の『京都発見』シリーズ(新潮社)をとりあげて

「氏が現代を代表する進撃の知の巨人であることは疑いようもない。
しかし第一巻の『地霊鎮魂』を読了したときの気持は、
なんとも言い難かった。

梅原曰く『京都は歴史の冷凍庫』であるらしい。
が、冷凍してあっても腐るものは腐るのである。
台所にある白い四角い箱に入れてさえおけば
食物は永遠に新鮮なままだと信じ込む。

以前、お隣に住む老婦人を訪ねたとき
賞味期限が十年前のジュースを出され、
頑なに固辞するのも気まずくて必死で
うやむやにしたことを思い出す。
十年前でそれなのだから、まして
凍っていたとしても千二百年をや。

確かにこれは鎮魂の書ではあるだろうなとは思う。
梅原にとって京都は死んでいるのだ。歴史に
人の体臭を嗅ぎ取ろうとするような人間には不向きといえよう。」
(p105~106)

う~ん。京都の体臭を嗅ぐのは、私は無理なのだけども、
この本、京都という鬼に飲み込まれる一寸法師の針の剣。


コメント
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