本の検索をしてたら、
大村しげ著「しまつとぜいたくの間」(佼成出版・平成5年)が出ている。
そういえばと、未読の本棚を探すとある。巻末の紹介には
大村しげ。1918年京都府生まれ。京都女専国文科に学ぶ。
京ことばだけで文章を綴り、京の暮らしや食べ物
のことを随筆として描く。・・・・
本をパラリとひらき『ぼていっぱいの思い出』という5ページの短文を読む。
はじまりは、
「わたしは生まれたときからずーっと着物で育った。
そして、70歳を通り越した今でもその着物暮らしが続いている。」
うん。調子づいて引用してゆくことに。
「母は着物ほど安いものはない、というていた。そして、
ぼて(和紙を張り、柿しぶを引いたかご)にしもうてある反物を見ては、
『 これ、あんたのお宮詣りのべべえ 』とか、
『 お正月のべべやったんえ 』などと話してくれる。」
こうして、ぼてから布を探して、掛布団の中央部分の布にしたり
「母は着物をほどいて洗い張りに出し、きっちりとしもうてあった。
そして、いうには、
『 着物ほど安いものはないなぁ。着られんようになっても、
こうしてちゃんと役に立っているのやから 』
それが口癖になっていた。 」
このあとに、御自分のことになります。
「わたしはまたつぎ当てが好きやった。
若いくせに、泥(泥染め)の大島などを買うてもらい、
赤い帯を締めて、お茶やらお花のけいこに通うていた。
その着物を着古して、身八つ口などが破れてくると、
薄い絹の布を当ててきれいに繕うた。
いや、身八つ口どころか、身頃全体が薄うなっている。
それで全部に布を当てて、着物の裏はつぎが色紙のようである。
そんな布地をきれいな袷(あわせ)に仕立て上げて、
何食わぬ顔で出かける。
『 まあ、ええ柄の大島、着といやすこと 』
とほめられると、心のうちでにんまりとして、人をだますのはおもしろい。
こうして、つぎだらけの着物を着て・・・ 」
さあ。短文なので、もう最後の引用になります。
「 着古したゆかたは、布がやわらかいので、おしめになった。
おばあさんは、自分のゆかたで自分が寝ついたときの用意を
ちゃんとしてはった。
今は紙おむつのある時代やから、いざというときでも
すぐに間に合う。そう思うと、
やっぱり昔の人はえらかった。・・・ 」(p30~34)
うん。こんな箇所を引用していると、自分にとって
『 ぼて(和紙を張り、柿しぶを引いたかご)にしもうてある反物 』は、
何だろうなあと思うのでした。
本棚から、本の断片を切り取ってきて、つないで
さも反物を切り貼りするような引用をしてブログにあげている。
『 しまいまでほかすところがのうて、お役に立つのやから。 』(p34)