和田浦海岸

家からは海は見えませんが、波が荒いときなどは、打ち寄せる波の音がきこえます。夏は潮風と蝉の声。

お正月のべべ。着古したゆかた。

2024-01-13 | 思いつき
本の検索をしてたら、
大村しげ著「しまつとぜいたくの間」(佼成出版・平成5年)が出ている。
そういえばと、未読の本棚を探すとある。巻末の紹介には

大村しげ。1918年京都府生まれ。京都女専国文科に学ぶ。
     京ことばだけで文章を綴り、京の暮らしや食べ物
     のことを随筆として描く。・・・・

本をパラリとひらき『ぼていっぱいの思い出』という5ページの短文を読む。
はじまりは、

「わたしは生まれたときからずーっと着物で育った。
 そして、70歳を通り越した今でもその着物暮らしが続いている。」

うん。調子づいて引用してゆくことに。

「母は着物ほど安いものはない、というていた。そして、
 ぼて(和紙を張り、柿しぶを引いたかご)にしもうてある反物を見ては、
『 これ、あんたのお宮詣りのべべえ 』とか、
『 お正月のべべやったんえ 』などと話してくれる。」

こうして、ぼてから布を探して、掛布団の中央部分の布にしたり

「母は着物をほどいて洗い張りに出し、きっちりとしもうてあった。
 そして、いうには、
『 着物ほど安いものはないなぁ。着られんようになっても、
  こうしてちゃんと役に立っているのやから 』
 それが口癖になっていた。  」


このあとに、御自分のことになります。

「わたしはまたつぎ当てが好きやった。
 若いくせに、泥(泥染め)の大島などを買うてもらい、
 赤い帯を締めて、お茶やらお花のけいこに通うていた。

 その着物を着古して、身八つ口などが破れてくると、
 薄い絹の布を当ててきれいに繕うた。
 いや、身八つ口どころか、身頃全体が薄うなっている。
 それで全部に布を当てて、着物の裏はつぎが色紙のようである。
 そんな布地をきれいな袷(あわせ)に仕立て上げて、
 何食わぬ顔で出かける。

 『 まあ、ええ柄の大島、着といやすこと 』

 とほめられると、心のうちでにんまりとして、人をだますのはおもしろい。
 こうして、つぎだらけの着物を着て・・・   」

さあ。短文なので、もう最後の引用になります。

「 着古したゆかたは、布がやわらかいので、おしめになった。
  おばあさんは、自分のゆかたで自分が寝ついたときの用意を
  ちゃんとしてはった。

  今は紙おむつのある時代やから、いざというときでも
  すぐに間に合う。そう思うと、
  やっぱり昔の人はえらかった。・・・  」(p30~34)


うん。こんな箇所を引用していると、自分にとって
『 ぼて(和紙を張り、柿しぶを引いたかご)にしもうてある反物 』は、
 何だろうなあと思うのでした。

本棚から、本の断片を切り取ってきて、つないで
さも反物を切り貼りするような引用をしてブログにあげている。

『 しまいまでほかすところがのうて、お役に立つのやから。 』(p34)


コメント
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