和田浦海岸

家からは海は見えませんが、波が荒いときなどは、打ち寄せる波の音がきこえます。夏は潮風と蝉の声。

朗読

2024-12-21 | 重ね読み
「庄野潤三の本 山の上の家」(夏葉社)の中に、
岡崎武志の「庄野潤三とその周辺」という9ページほどの文が載ってる。
そこに三島由紀夫との接点がかかれておりました。

「43年12月、広島県大竹海兵団に入団するが、その直前に書きあげたのが、
 初めて活字となった小説『 雪・ほたる 』だった。
 島尾(敏雄)の入隊が決まり、それを見送る心情を綴った作品だった。
 師の伊東(静雄)は『 読んでいて切ない気持ちになった 』と
 これを褒めた。伊東の紹介で、同作は『 まほろば 』という
 同人雑誌(44年3月号)に掲載される。この同じ号に小説を発表した作家が
 三島由紀夫。東京で『 まほろば 』同人の会合があった時、
 庄野は三島に会っている。
 三島は庄野に『 雪・ほたる 』を朗読してくれとせがんだが、
 これを断ったという。・・・           」( p111 )

なんだか、朗読といえば、うたう良二が思い浮かびます。
それはそうと、現代詩文庫『 竹中郁詩集 』の竹中氏の文にも
三島由紀夫が登場しておりました。『 あざやかな人 』という文の
はじまりにあります。

「わたしは奇妙な初対面の記憶を二つ持っている。
 ひとつは三島由紀夫氏が作家の花道にすくっと立った頃、
 銀座四丁目の歩道で画家の猪熊弦一郎氏に紹介された。
 
 三島氏は『 あなたの作詩を愛読しました 』といって、
 つづいてその詩をすらすらと聞きちがいもなしに暗誦し・・・
 狐につままれたような気分になって照れてしまった。・・・

 もう一つは吉田健一氏であった。
 これは場所は大阪か神戸かの小ていな料理屋の、
 潮どき前のしずかな時間、客といえば吉田氏とわたしのほかに
 一人か二人、かねて打合せてあった初対面。・・・

 そのときも、吉田さんは一通りの挨拶がすむと、
 わたくしの詩の暗誦を抑え目の声ではじめられた。・・・

 初対面の固くるしさを軟げる効果を、作者自身のわたくしが
 二人の文学者から教えられる始末になった・・   」( p127~128 )

庄野潤三著「 明夫と良二 」の兄弟家族じゃないけれど、
家の中で、唄っている良二の姿がダブってくるのでした。


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