山梨百名山から見る風景

四方を山に囲まれた山梨県。私が愛して止まない山梨の名峰から見る山と花と星の奏でる風景を紹介するページです。

特産種とユウバリソウを求めて 夕張岳(後編)  平成25年7月13日‐14日

2013年07月23日 | 圏外編
 朝4時過ぎに夕張岳ヒュッテを出発し、樹林帯の中をみちほさんとともに探しまわって見つけたのはノビネチドリ、ミヤマチドリ、コイチヤクソウなどだが、これらは夕張岳の特産種では無い。前岳湿原入り口に到着したのは午前8時半、ここまで4時間以上もかかっている。そして、この湿原から山頂に至るまでのルートが夕張岳の特産種が咲くハイライトコースだ。


    前原湿原入り口

 いきなり特産種が見つかるわけではないが、この湿原のどこかにユウパリコザクラが咲いているらしい。白いウサギギクがあるという話も聞いた。探しながら木道の道を進む。

    ウサギギクとガマ岩。白花は見つからず。


    ムカゴトラノオ


    何これ??帰って来てから調べてみると、これはハクセンナズナ。


    イワイチョウの大群落。しかし花は咲いておらず、鹿に食べられたような跡があった。


    笹原の向こうに夕張岳。


    シロウマアサツキ。蕾のものが多く、やっと咲いているのを見つけたと思ったら、その先にはどっさり。


    トウゲブキ

 短い草の生える湿地帯の中で、ピンク色の花がポツポツと咲いているのを発見した。これこそが夕張岳の特産種、ユウパリコザクラだ。しかし、咲いている場所が遠く、持って行ったレンズでは焦点距離が短く追い切れない。かつ、手持ちで撮るのでブレが生じて鮮明な画像を得るのは難しい。三脚を忘れたのがやはり痛かった。

    ユウパリコザクラが咲く湿原。この視野で4株咲いているが見えますか?


    撮影して来た画像をトリーミングしたもの。さすがに葉っぱまでは見えない。

 その先の湿原にはウサギギクがたくさん、そしてさらに圧巻だったのは見渡す限り湿原をおおうシロウマアサツキの大群落。今まで撮って来たのは何だったのかと笑ってしまうほどの大群落が広がっていた。

    ウサギギクの群落


    シロウマアサツキがたくさん。


    見渡す限りシロウマアサツキ。笑っちゃうほどたくさんあります。

 さらに進むと、やや急傾斜を登ってこの山の核心部、蛇紋岩の砂礫帯に出る。ここにはこの山の代名詞ともいうべき花、ユウバリソウが咲いている。しかし、残念ながら時期が既に遅く、穂は残っているものの白い花は散って茶色くなってしまっていた。

    ユウバリソウ。もう時期が遅く終わってしまっている。


    ユウバリソウとユキバヒゴタイ。このユキバヒゴタイも簡単に見られる代物では無い。

 ユウバリソウとともにこの場所で是非見たいと思っていたもの、いや、今回この山でいちばん見たかった花がシソバキスミレという夕張岳の特産種だった。葉っぱだけでも残っていないかと探したのだがとうとう見つけることは出来なかった。撮影して来た画像を拡大して調べたがやはりシソバキスミレは見つからなかったが、クモマユキノシタに紛れて、もう1種類、まだ見たことの無いスミレの葉を発見した。

    クモマユキノシタ


    上記画像の左端をトリーミング。タカネスミレのような円い葉っぱ、これは北海道に特産するエゾタカネスミレの葉。

 蛇紋岩の砂礫帯を過ぎて最後の急登をさらに登ると、その先には神社があり周辺はミヤマアズマギクやミヤマリンドウが咲く小さなお花畑になっていた。そこから山頂まではわずかだ。

    夕張岳神社と夕張岳山頂


    ミヤマアズマギクのお花畑


    ミヤマオグルマ。これも北海道の限られた山でしか見られない。茎や葉に白いクモ毛が多く、全体が白っぽく見えるのが特徴。


    夕張岳山頂。後ろに見えるのは芦別岳。


    山頂で記念撮影。三脚忘れたので、ザックの上にカメラを置いて撮影。

 10時40分、夕張岳山頂に到着。花を見ながら登り7時間と見ていたので、予定よりも若干早く到着した。山頂で昼食をとる。夕張岳ヒュッテで出会った人たちとは別の調査隊の人たちがやって来て、情報を得ることができた。この山もやはり鹿の食害でだいぶ痛めつけられているようだ。
 
 昼食後下山開始する。湿原の中はやはり名残惜しく、帰りもいろいろと撮影しながら戻ったが、樹林帯に入るとあとは下るだけ。ただ黙々と下ったという感じだった。樹林帯の中にまだ見たことの無い稀少なランがあるという情報をいただいたが、とうとう見つけることはできなかった。午後3時、夕張岳ヒュッテに到着する。

    山頂からの下りで歩いてきた方向を望む。ずいぶん遠くまで来たもんだ。右手の白い砂礫地がユウバリソウやシソバキスミレが咲く場所。


    トウゲブキとシロウマアサツキのお花畑


    ムシトリスミレは湿地帯にたくさん咲いていた。


    やっぱり気になるこの黄色いスミレ。

 
 さて、テント撤収し、また長い林道を歩いてゲートまで戻る。調査隊の車が乗せて行ってくれないかという甘い期待もあったが、満席で林道を歩いていた私たちをあっさり追い抜いて行った。しかし、最後の最後で、林道を歩いたご褒美が待っていた。キソチドリらしき花が咲いていたその向こう側を覗いていたみちほさんが突然「あーっ」という大声を上げた。何事かと思ったらその先には・・・クモキリソウが固まって10株ほど咲いているではないか。感激!!林道歩きの疲れも吹き飛んだ。そしてここで初めて、三脚を使うことになる。

    クモキリソウの群生


    クモキリソウ


    この不思議な花の形。感激だ。

 午後6時、ゲートに到着する。車はもう数台しか止まっていない。やはり疲れた。林道を車で走っていると、道の真ん中で犬が座り込んでいる。クラクションを鳴らしても逃げる気配が無い。良く見れば、犬では無くてキツネではないか。ずいぶん人慣れしている。足に怪我を負っているようで、通る車の人に餌をねだっているようだ。可哀そうだが餌付けするわけには行かず、追っ払って道を進む。

    道の真ん中に座り込んでいたキツネ


    人なつこくて可愛いが、餌はやれないよ。

 夕張で日帰り温泉につかり、そこで夕食をとる。時間は夜の8時半になってしまった。みちほさんはこれから層雲峡まで移動して車内泊、明日黒岳とお鉢めぐりをした後にフェリーに乗って帰宅するそうだ。我々はどうするか、連休中日だけに宿がとれるのかどうか?夕張市内のホテルに電話してみると、1件目であっさりと宿をとれた。夕張温泉シューパロ、夕張駅の近くのホテルだった。なかなか良いホテルだったが、洗濯と乾燥器にかけるだけで精一杯。速攻で眠りに着いてしまった。


 夕張岳ヒュッテへの道はいずれ修理して再開するという話だった。それなりの花は見ることができたのだが、シソバキスミレが見られなかったのはかなり心残りだ。そして三脚を忘れて、きっちり撮影出来ていないこと。機会があったらもう一度この山を訪れてみたい。

(翌日はトムラウシ温泉に移動してテント泊、そして翌々日からヒサゴ沼2泊でトムラウシ山界隈に登る)
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特産種とユウバリソウを求めて 夕張岳(前編)  北海道遠征4  平成25年7月13日‐14日

2013年07月23日 | 圏外編
 昨年までは夕張ヒュッテまで車で入ることが出来たのだが、今年は林道が崩落の危機にあり(まだ崩落しているわけではない)、年内いっぱいは林道閉鎖の予定だという情報をみちほさんの旦那様からいただいた。ゲートから夕張ヒュッテまでは距離7km、歩いて約2時間、往復で4時間もかかる。1日で夕張岳山頂まで往復するのはとてつもなく大変な山歩きとなってしまい、私の足ではとても歩けるようなものではない。しかし、この夕張岳は山頂周辺が蛇紋岩という塩基性の岩でできており、ユウバリソウをはじめとするこの山でしか見られない特産種がたくさん咲く魅惑の山である。今回の北海道遠征では絶対に外せない山のひとつに入っている。日帰りでは厳しいので前日に夕張ヒュッテ泊まりで行くことにして、みちほさんをお誘いしたところ一緒に登ることとなった。

 午前中、層雲峡から黒岳に登り、お昼ごろから夕張に移動し始めるが、思ったよりも距離が遠く集合場所の夕張道の駅(紅葉山なんとか??)に到着したのは3時近くになってしまう。それから昼食、そして夕張ヒュッテに至る林道ゲートに到着したのはもう午後4時となる。まだ駐車場には満車近い車が止まっており、準備していると続々と下山者がやって来た。ほとんどが日帰り登山者、しかも若者が大半だが、皆ヘトヘトの様子だった。中には林道が通行不能になっているのを知らず、山頂まで行けずに帰って来た女性2人組もいた。私は最初からテント泊と決めていたので、テントと1日分の食料プラス非常食をザックに詰め込んで出発する。もちろん守り刀のカーボン三脚を持って行く。林道は緩い登りになっており7kmはかなり長く感じた。午後6時40分、ようやく夕張ヒュッテに到着し、さっそく夕食をとる。

    ゲート前の駐車場はほぼ満車。我々が到着後、続々と下山者がやって来る。皆一様に「大変だった」と言う。


    ゲートからヒュッテまで7km。


    途中で見つけた寄生植物オニノヤガラ。


    夕張ヒュッテ。見えるのは現在建築中の新しい建物でまだ使用されていない。現在使われているのはあの裏側に隠れている。

 小屋番さんとお話しする機会があり、いろいろと教えていただいた。現在使用中の古いほうの建物は取り壊しが決まっており、新たな立て直しはしない予定だったという。しかし、それでは困るということで有志で集まったユウパリコザクラの会が中心となって募金活動や夕張市への働きかけを行い、なんとか新築するというところまでたどり着いたのだという。この日はユウパリコザクラ友の会の方たちと植生調査の方たちがヒュッテに宿泊されており、明日植生の調査と鹿の保護柵設置のための調査を行うと言っていた。

 さて、夕食後、私と植田さんは枯れた沢を渡った向こう側、馬の背登山口沿いのテント場にテントを設置して寝る。みちほさんは山仲間の知人が宿泊しているヒュッテで寝ることになった。足の遅い我々は(いや、遅いのは私だけだが)早朝4時に出発することにした。その夜、ヒュッテの空には北斗七星が輝いていた。

    夕張ヒュッテに昇った北斗七星


    北斗七星。睡眠薬が効き始めてフラフラの頃に撮影したので、写りがいまいち。


 翌朝はほぼ予定通りまだ薄暗い午前4時10分に出発する。冷水コースから入山し、いつものように藪の中を覗きながら歩くが目ぼしいものは何も見つからない。1時間ほど歩いた水場の脇でテガタチドリらしき花を発見。薄暗くてなかなかうまく撮れない。三脚は・・・とザックを見れば、夕張ヒュッテまで折角持って来たのにテントの中に置き忘れてきてしまった。カメラを忘れたことは何度かあるが、三脚を置き忘れてきたのは初めてだ。止む無し、今日は手持ちで撮ることに。そして帰って来てからその花を良く見れば、葉脈が目立ち縁が波打っている。これは・・・! 

    朝の夕張ヒュッテ


    冷水コースの入り口


    冷水の沢。水場がある。


    水場の脇に咲いていた花。葉の脈が目立ち、縁が波打っており、これはノビネチドリ。

 いつもはキソチドリだろうと思って見ている花が、この山では開花していた。よく見れば、キソチドリとはちょっと様子が違う。トンボソウやキソチドリの仲間は判別が難しく、図鑑で調べるだけでは良くわからない。

    キソチドリよりも背が低く葉っぱが厚くて丈夫そう。図鑑で見る限りでは、これはミヤマチドリ。


    雌阿寒岳に続いて発見!コイチヤクソウ。


    ギョウジャニンニク。若葉を少しちぎって食べたが・・・口の中が強烈なニンニク臭!

 馬の背ルートとの合流点を過ぎて進むと、シラネアオイが咲き残っていた。その先に石原平というシラネアオイ群生地があったが、既に花は終わっていた。かなり大きな群生地なので一面に咲けばきっと見事なことだろう。その先には崖のような急登り、登り着くと望岳台という展望地に到着する。目指す夕張岳はどこやら??そしてその先の雪渓が残る笹原の切れ間からようやく夕張岳山頂が見えてきた。標高差こそあまり無さそうだが、まだかなり遠い。

    咲き残っていたシラネアオイ。


    シラネアオイ群生地。花はもう終わっている。


    雪渓を横切る。ようやく向こうに夕張岳が姿を現す。

 ところどころ木道の道となり、雪渓の溶けた水が流れるところには黄色い花が咲いていた。ひとつはエゾノリュウキンカ、もうひとつは・・・良くわからない黄色いスミレ。

    雪解け水の流れる木道脇に咲いていたエゾノリュウキンカ。


    良く分からないスミレ。先日ピパイロ岳手前で見たトカチキスミレにそっくりだが、夕張岳なのでこれはフギレキスミレか?


    葉の縁の切れ込みが不規則なのがフギレキスミレの特徴だが、あまり不規則ではないように見える。


    こちらはイワイチョウ。この先に大群落があったが、花は咲いていなかった。

 笹藪を進んでポンと広場に出たところが前岳湿原の入り口だった。ここからは整備された木道の道が湿原の中を延びている。そして特産種が咲くのもこれから先の道だ。湿原の花を存分に楽しみながら、夕張岳山頂を目指す。

    前岳湿原入り口


 (後編に続く)
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