1990年前後のバブル経済の崩壊から以後を「伝統文化の変革期」と私は定義したいと思います。それは江戸時代から明治、大正、昭和と続いた日本人の伝統的な価値観や民族特有の文化がどんどん変化している時期だからです。
いろいろな新しい社会現象が起きています。
前回の記事ではその一例として「自然葬の普及」について考えてみました。
連載第第二回の今日の記事では外国人力士の活躍の歴史を概観したいと思います。
トンガ勢に始まり、ハワイからの高見山、小錦、曙、武蔵丸と大物力士が続いた時代が1990年代初頭にありました。特に1992年に曙が横綱になり、続いて武蔵丸も横綱になったのです。これは相撲の歴史のなかで画期的な出来事でした。
本来、相撲は神社の境内で神へ奉納する神事として始まりました。しめ縄を張った土俵で、四股を踏むのは神事です。弓取り式も伝統的な神事です。
その日本の伝統文化の相撲へ外国人が参入し、活躍しているのです。
この相撲の歴史の中の革新的現象こそ、1990年頃のバブル経済の崩壊による日本の社会心理の大きな変化に深く関係していると思います。
それに拍車をかけたのが1991年のソ連の崩壊です。経済が厳しい東欧圏やモンゴルから日本へ多数の出稼ぎ人が来るようになったのです。出稼ぎ人は肉体労働に限らずいろいろな職能分野にわたっています。
相撲もその一部なのです。
経済が厳しい国の人々は伝統的な相撲部屋の辛いシゴキにも耐え、見事に小結、関脇、大関、横綱へと昇進して行ったのです。
日本人力士の弱体化を恐れた日本相撲協会は外人力士を一つの部屋で1人と規制します。当時は54部屋あったのですぐに数多くの外人力士が出来ます。
その上、外国人力士が日本国籍をとれば、この1部屋1人の規制を逃れることが出来たのです。そのようにして外国出身の力士が何人もいる部屋が出てきたのです。
そこで日本相撲協会は国籍を問わず、外国出身の力士を1部屋1人と規制を厳しくしました。
現在は57部屋ありますが46人の外国出身の力士が活躍しているのです。特に多いのはモンゴルで、横綱、大関、関脇、小結はみんなモンゴル人によって占められる時代が来る恐れもあるのです。
日本の伝統文化の国際化と言ってしまえばそれまでですが、はたしてそれで良いのでしょうか?
柔道もそのようになってから久しいのです。
次はスポーツに限らず、外国人が日本画の師匠になったり、茶道の家元になったりするかも知れません。
伝統文化も時の流れとともに少しずつ変化するのです。特に変革期に大きな変化が起きます。
バブル経済の崩壊は日本文化の荷ない手は日本人だけに限るという狭量性から人々を自由にしたのです。これも社会心理の変化の一つと考えられます。
この世に変化しないものは無いというお釈迦様の教えを思い出しながら、何故か淋しい思いをしています。複雑な思いです。
それはそれとして、以下に外国人力士に関する一覧表を示します。
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下はイタリアのミラノに住んで、働いて居るtomanさんの ブログ:
http://ameblo.jp/tomamx/entry-11144489937.html から引用させて頂きました。
日本相撲協会の公式サイトの、2012年の一月場所番付表から、外国人力士を抽出したものです。http://sumo.goo.ne.jp/hon_basho/banzuke/index.html
階級ごとにまとめると。
【幕内】 15人(42人中。36%)
白鵬 翔 モンゴル / 宮城野
把瑠都 凱斗 エストニア / 尾上
琴欧洲 勝紀 ブルガリア / 佐渡ヶ嶽
日馬富士 公平 モンゴル / 伊勢ヶ濱
鶴竜 力三郎 モンゴル / 井筒
旭天鵬 勝 モンゴル / 大島
阿覧 欧虎 ロシア / 三保ヶ関
碧山 亘右 ブルガリア / 田子ノ浦
栃ノ心 剛 グルジア / 春日野
時天空 慶晃 モンゴル / 時津風
臥牙丸 勝 グルジア / 北の湖
隆の山 俊太郎 チェコ / 鳴戸
朝赤龍 太郎 モンゴル / 高砂
旭秀鵬 滉規 モンゴル / 大島
魁聖 一郎 ブラジル / 友綱
【十両】 5人(28人中。18%)
玉鷲 一朗 モンゴル / 片男波
黒海 太 グルジア / 追手風
翔天狼 大士 モンゴル / 藤島
阿夢露 光大 ロシア / 阿武松
城ノ龍 康允 モンゴル / 境川
【幕下】 16人(120人中。13%)
荒鷲 あらわし モンゴル 花籠
千昇 せんしょう モンゴル 式秀
東龍 あずまりゅう モンゴル 玉ノ井
鏡桜 かがみおう モンゴル 鏡山
竜王浪 りゅうおうなみ モンゴル 立浪
鬼嵐 おにあらし モンゴル 朝日山
貴ノ岩 たかのいわ モンゴル 貴乃花
龍皇 りゅうおう モンゴル 宮城野
魁 さきがけ モンゴル 放駒
風斧山 かざふざん カザフスタン 錦戸
青狼 せいろう モンゴル 錣山
仲の国 なかのくに 中国 湊
舛東欧 ますとうおう ハンガリー 千賀ノ浦
荒闘司 あらとうし モンゴル 入間川
若三勝 わかみしょう モンゴル 間垣
大河 たいが モンゴル 式秀
【三段目】 9人(200人中。4.5%)
透川 とおるがわ モンゴル 峰崎
大露羅 おおろら ロシア 北の湖
保志桜 ほしざくら モンゴル 八角
高世 こうせい 中国 東関
大鷹浪 だいおうなみ モンゴル 立浪
千代翔馬 ちよしょうま モンゴル 九重
龍帝 りゅうてい 中国 二所ノ関
華瀬川 はなせがわ 中国 朝日山
魁心 かいしん ブラジル 友綱
【序二段】 1人(202人中。0.50%)
高春日 たかかすが モンゴル 春日山
【序の口】 0人(33人中。0%)
全部で46人。見事に上の階級ほど外国人力士の比率が高いです。
幕内では、3人に1人以上が外国人となっています。多く感じるはずです。
これを国別にまとめると次のようになります。
■モンゴル 28人
【幕内】 白鵬 日馬富士 鶴竜 旭天鵬 時天空 朝赤龍 旭秀鵬
【十両】 玉鷲 翔天狼 城ノ龍
【幕下】 荒鷲 千昇 東龍 鏡桜 竜王浪 鬼嵐 貴ノ岩 龍皇 魁 青狼 荒闘司 若三勝 大河
【三段目】 透川 保志桜 大鷹浪 千代翔馬
【序二段】 高春日
■中国 4人
【幕下】 仲の国
【三段目】 高世 龍帝 華瀬川
■グルジア 3人
【幕内】 栃ノ心 臥牙丸
【十両】 黒海
■ロシア 3人
【幕内】 阿覧
【十両】 阿夢露
【三段目】 大露羅
■ブルガリア 2人
【幕内】 琴欧洲 碧山
■ブラジル 2人
【幕内】 魁聖
【三段目】 魁心
■エストニア 1人
【幕内】 把瑠都
■チェコ 1人
【幕内】 隆の山
■カザフスタン 1人
【幕下】 風斧山
■ハンガリー 1人
【幕下】 舛東欧
モンゴル人力士が外国人力士全体の61%を占めています。
次に多いのが意外にも中国で、4人いますが、全員が幕下以下なので目立ちません。
幕内に2人いるのが、グルジアとブルガリアです。=========終り=============
歴代横綱一覧表:出典:http://ouenbu.com/sumo/yokoduna.html
1 |
明 石 |
不 明 |
2 |
綾 川 |
不 明 |
3 |
丸 山 |
宮城県 |
七ツ森 |
不 明 |
4 |
谷 風 |
福島県 |
伊勢ノ海 |
1789年11月 |
39歳 |
1795年 1月 |
44歳 |
10場所 |
5 |
小野川 |
滋賀県 |
小野川 |
1789年11月 |
30歳 |
1797年10月 |
38歳 |
10場所 |
6 |
阿武松 |
石川県 |
武 隈 |
1828年 3月 |
37歳 |
1835年10月 |
44歳 |
16場所 |
7 |
稲 妻 |
茨城県 |
佐渡ヶ嶽 |
1829年 9月 |
28歳 |
1839年11月 |
37歳 |
16場所 |
8 |
Ⅰ不知火 |
熊本県 |
浦 風 |
1840年11月 |
39歳 |
1844年 1月 |
42歳 |
8場所 |
9 |
秀ノ山 |
宮城県 |
秀ノ山 |
1845年 9月 |
37歳 |
1850年 3月 |
42歳 |
10場所 |
10 |
雲 龍 |
福岡県 |
追手風 |
1861年10月 |
38歳 |
1865年 2月 |
41歳 |
8場所 |
11 |
Ⅱ不知火 |
熊本県 |
境 川 |
1863年11月 |
38歳 |
1869年11月 |
44歳 |
13場所 |
12 |
陣 幕 |
島根県 |
秀ノ山 |
1867年 4月 |
38歳 |
1867年11月 |
38歳 |
2場所 |
13 |
鬼面山 |
岐阜県 |
武 隈 |
1869年 3月 |
42歳 |
1870年11月 |
44歳 |
4場所 |
14 |
境 川 |
千葉県 |
境 川 |
1876年12月 |
35歳 |
1881年 1月 |
39歳 |
9場所 |
15 |
Ⅰ梅ヶ谷 |
福岡県 |
玉 垣 |
1884年 5月 |
39歳 |
1885年 5月 |
40歳 |
(写真の出典:デイリースポーツインターネット版)
昨日、名古屋場所で日馬富士3回目の優勝を全勝で飾りました。
日馬富士に寄りきられる白鵬を見て、彼の強さの衰えを感じた人も多かったと思います。淋しいですね。
しかし日馬富士の小柄な体つきと機敏な技にはいつも感動します。今場所は取りこぼしもせず全勝優勝です。これで次回の場所で優勝すれば横綱になれると、大いに期待しています。
一方、白鵬は人格、力量の両方が備わった大横綱です。力量がたとえ峠を越したとしてもまだまだ横綱を続けられます。これで白鵬と日馬富士の二横綱体制が出来るのでしょうか?そうなることを祈っています。それにしてもモンゴル人力士の活躍には驚きます。 しかし、琴奨菊と稀勢の里にも是非、横綱になって日本の名誉も守って貰いたいと思います。モンゴル人力士は現在、総数28人もいるそうですから、上位力士はそのうち全てモンゴル人になるかも知れません。若乃花と貴乃花の両横綱引退後はすべてモンゴル人横綱になってしまったのです。
下に現在のモンゴル人力士の一覧表を示します。
続編では1992年の曙の横綱昇進以来の外国人力士の隆盛の歴史を纏めてみます。
@モンゴル 28人 幕内: 白鵬 日馬富士 鶴竜 旭天鵬 時天空 朝赤龍 旭秀鵬 十両: 玉鷲 翔天狼 城ノ龍 幕下: 荒鷲 千昇
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