第二次大戦に負けた悔しさから、つい日本の戦闘機や戦艦や潜水艦は劣っていなかったという議論が多いのです。それが自然の人情で、無理もありません。
しかし、その理解は浅過ぎます。
戦争に勝つための決定的要因は武器の生産能力と品質管理にあります。
200機のゼロ戦が1日で撃墜されたら、次の日に400機完成していれば勝つ可能性があります。200人の熟練したパイロットを1日で失ったら、次の日に400人補充すべきです。熟練した戦闘員がいなくても、マニュアル通りに操作すれば、操作できる戦闘機を作れば良いのです。
アメリカの戦闘機や航空母艦の製造速度と品質管理は圧倒的に日本を凌駕していたのです。日本民族の戦争観が基本的に間違っていたのです。
客観的に工業力と技術水準だけを比較して開戦を決めるべきでした。戦意とか精神力とかあやふやな要因を考慮すべきではないのです。
その考えは今でも時々頭をもたげて来ます。下のように日本の戦闘機を一機や二機展示して、その性能が良かったと説明しています。
問題は一機の性能ではなく、その戦闘機を1日に何百機作れるか?その品質は良いのか?熟練していない兵士でも操縦し、敵を撃ち落せるか?このような事項を較べて展示すべきです。
その片手落ちの展示の例を、そのまま以下に示します。写真は靖国神社の遊就館で撮りました。
上がゼロ戦で、下がゼロ戦より一まわり大きな艦上爆撃機の「彗星」です。どちらも当時の敵の戦闘機と比較して性能は劣っていません。しかし生産能力には雲泥の差があったのです。その説明が無いのです。それが片手落ちと思います。
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もう一つの決定的な敗戦の要因は、日本の軍事技術は全て欧米のコピーと、少しの改良に依存していた事です。それでは敵の兵器を圧倒する全く斬新な兵器が製造されません。
例えば戦闘機のエンジンだけを例にとってその状況を説明します。
戦闘機のエンジンの多くは1903年にアメリカで実用化された「星型エンジン」です。下にプロペラ軸へ直結している「星型エンジン」を示します。
下の動く図面はWikipedeaの、星型エンジン(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%98%9F%E5%9E%8B%E3%82%A8%E3%83%B3%E3%82%B8%E3%83%B3)からお借りしました。
ゼロ戦のエンジンはこの星型エンジンをコピーして少し改良し、9気筒で960馬力出るようにしたものです。
一方「彗星」のエンジンはドイツのダイムラーベンツ社の液冷直立6気筒、1400 馬力であったのです。熱田の愛知時計電気社が苦心してコピーしたエンジンです。
戦後の国産旅客機にYS-11がありましたがエンジンだけはローリスロイス社製のターボプロップジェットエンジンでした。日本では航空機エンジンだけは現在でも製造出来ないのです。出来ても信頼性の証明が無いので誰も買ってくれないのです。ビジネスにはなりません。自衛隊の高価な戦闘機はアメリカから買っています。
所沢の航空公園の飛行機の展示館を見るとその技術発展の歴史が明快に分かります。日本はコピー技術で終始していたのです。とくにアメリカ製のジェットエンジンが各種、それも多数展示してあります。ああ、これでは戦争に負けるという実感を感じるのです。
将来の戦争を考える時、長距離核ミサイルの数とともに命中精度と生産速度を比較して、客観的に考えることが重要です。
そしてそれを考慮に入れて、あくまでも外交戦略を駆使して、戦争を回避すべきなのです。戦争が一旦起きたら想像できない莫大な損害と悲劇が起きます。
平和を維持する為には戦争の実態を深く理解するべきと信じています。
シビリアンコントロールを徹底して軍人の暴走を完璧に阻止すべきです。
靖国神社を訪問するとその決心の重要さが再度理解出来るのです。
いかがでしょうか?皆様のご意見をお聞かせ下さい。(続く)