(左の福島原発の爆発の写真の出典: http://yokotakanko.cocolog-nifty.com/blog/2011/03/31-682c.html )
福島原発の爆発事故から1年4ケ月がたちました。
残った原発50基のうち現在稼働しているのは福井県大飯原発の2基だけです。
昨年の原発の爆発の経緯と破壊の具体的な説明はこのブログの以下の記事にあります。
福島原発事故の総括(1)どのような経過で何処が壊れたか?
昨年以来、原子力発電の功罪や放射能の害について多くの意見が出され、原発反対運動も続いています。
この夏の関西電力管内の電力逼迫事情も福井県大飯原発の2基の稼働だけでしのげそうです。
そうすると残りの48基の原発は不要になります。
自然の流れで、大飯原発以外の他の原発の再稼働は遅れる一方です。
それでは今後、原発を10基程度だけ再稼働した場合、日本の経済は大丈夫なのでしょうか?
あるいは原発をゼロにしても大丈夫なのでしょうか?
そこで日本のGDPの将来予測を調べてみました。そうしたら経団連の研究グループが客観的かつ詳細な研究発表を今年の4月に行っていました。
「グローバルJAPANー2050年シミュレーションと総合戦略ー」という報告書で、ネットの、
http://www.21ppi.org/pdf/thesis/120416.pdfに公開してあります。誰でも読めます。
結論を言えば、2050年の日本のGDPは中国、アメリカ、インドについで世界4位になり他のヨーロッパ諸国や韓国をも引き離しているという予測です。
この経団連の予測は楽観的な状況2つと悲観的な状況2つの4つのケースについて分析しています。
経団連の研究報告書は詳し過ぎて素人には読みにくいものです。そこでそれを易しく解説したブログを見つけました。ブログのタイトルが長すぎるので、URLだけをしめすと、http://money-money-more.seesaa.net/article/264860889.html となります。
これには、4つのケースの内容が簡略に説明してあます。そうして、結論として2050年にはGDPがどのようになるかという予測結果を紹介してあります。
以下にその一部を転載します。
・・・世界経済については、中国・インドのGDPが飛躍的に増大し、2025年には中国が米国を追い抜いて世界のトップに立つ基本シナリオのほか、米国が1位を死守する「新興国悲観シナリオ」や、ヨーロッパの債務懸念が増大する「欧州悲観シナリオ」などが勘案されていましたが・・・
大きな経済崩壊でもない限り、日本のGDPは2050年でも世界第4位を維持できるようです。・・・・です。
最悪の悲観的なケースでは日本のGDPは世界で第9位になります。
・・・2020年を前にマイナスに落ち込み、世界のトップグループからは完全に転落。2050年GDPでは中・米・印・伯・露・英・独・仏・に次ぐ世界9位で、インドネシアと同等のレベルになる模様。・・・・・
このように最悪でも日本の経済は破綻せずにヨーロッパ諸国並のレベルを維持できるのです。
ここで、「グローバルJAPANー2050年シミュレーションと総合戦略ー」という報告書をもう一度詳しく見てみます。
すると驚いた事に原発のことは一切無視されています。原発だろうが火力発電だろうが現在の発電量程度があれば良いという姿勢です。
そして日本の経済発展にとって最も重大な事は急成長する中国とインドへ多量の先端工業製品を売り込む事です。中国やインドが必要とする情報商品やサービス商品を的確に開発して多量の日本製のサービス商品を売り込む事です。
要するにインドと中国へ如何に高価な日本製の物、サービスを多量に売り込む事に成功するか否かが日本の将来を決定するのです。中国やインドの需要の正確な予測と迅速な開発力がカギになるのです。
次に重要な事は日本の少子化に伴う労働力や知的活動力の低下をどのようにして克服しるかという問題です。これには官民一致協力して賢い方法を考え出さなければなりません。移民をある程度導入すべきかも判りません。優秀な中国人やインド人を日本企業の戦力として取り入れなければいけません。
以上の2つのことを達成するためには中国とインドとは細心の注意をはらって友好関係を築く必要があるのです。
経団連の幹部が名前を連ねたこの研究組織は当然のことながら日本企業の利潤拡大だけを視野に入れています。
原発でも再生可能エネルギーでも現在程度の発電量があれば良いという態度です。
その事がこの報告書の限界であり、国民全員の幸福度とか安全度とかいう問題には言及していません。
日本全体の経済の推移を予測すれば、その通りだと思います。
しかし福島原発で移住を強制された人々や、大津波で2万人もの犠牲者が出て、現在なお瓦礫の荒野が広がっている被災地のことを無視すべきではありません。
その問題を早急に解決するべきです。それこそが当面の日本の問題ではないでしょうか?
それを忘れない為にも、もう一度昨年、原発の爆発でどのような放射能被害が起きたかを思い出して見ましょう。
福島県に撒き散らされたヨウ素131は半減期が8日と短いので、既に問題ではありません。しかしセシウム137は半減期が30年と長いので数年間では福島県各地の放射能強さは変化しません。
このブログでの、読売新聞の記事、「放射能の広がり 詳細地図」を絶賛する という記事を見て見ましょう。福島県各地の放射能の強弱図を下のように報告しています。この強弱図は現在でもほとんど変わっていません。
上の図は群馬大学の早川由紀夫教授の作成した図面です。この図をクリックして出て来た図面をもう一度クリックすると大きな拡大図になります。セシウムが積もっている所は飯舘村、浪江町の他に、伊達、福島、二本松、本宮、郡山などもあることが明瞭に分かります。その上、放射能汚染は東北地方や関東地方の一部まで広がっているのです。
「福島原発の4つの建屋が爆発して飛び散ったセシウム137の総量は広島型原子爆弾の168個が爆発した時の飛散総量とほぼ同じだ」 という計算結果も報道されました。
そして、セシウム137は半減期が30年と長いので、上に示した福島県各地の放射能の強弱図は現在も、将来もあまり変りません。
このような放射能汚染は日本人にとっては長崎・広島の原爆以来、初めての経験です。昨年は、日本人が想像も出来ないような被害が出たのです。
例えば乾した稲藁にセイシウムが降りかかっていて、それを全国へ牛の飼料として出荷していたのです。食べた牛からセシウム137が検出されて、多くの牛が出荷停止になったのです。出荷停止になる前に流通してしまった牛肉を食べた人も居るのです。農作物も魚も風評被害で売れなくなったのです。福島県や茨城県の農家が打撃を受けたのです。遠く離れたお茶畑も放射能が検出され、売れなくなりました。
放射能への恐怖が日本全国に広がり、風評被害もその他のいろいろな分野で生じたのです。
その上、放射性セシュームの飛散は、原子爆弾と原子力発電は本質的には同じものだという考えを人々の心に焼きつきました。この事は福島原発事故のもたらした大きな社会心理的な変化です。原爆反対が原発反対と一体化してしまったのです。
このような社会心理的な変化の後では、休止中の48基の原発の再稼働は困難になります。新しく原発を建設することはほとんど不可能になりました。
このような日本の現実を謙虚に認め、原発に代わる火力発電や再生可能エネリギーの開発を急ぐべきと信じています。原発を即刻ゼロにするのではなく、緊急発電施設として数基の原発を温存するのも検討すべき時期に来ているとも考えられます。
皆様は日本の将来についてどのような展望をお持ちでしょうか?是非、ご意見をお聞かせ下さい。
それはそれとして、
今日も皆様のご健康と平和をお祈り申し上げます。藤山杜人
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参考資料:経団連の組織した委員会のメンバー
グローバルJAPAN 2050 5 グローバルJAPAN特別委員会名簿(2012年)
(順不同)
委員長 森田 富治郎 21世紀政策研究所所長(第一生命保険特別顧問)
? 査 丹呉 泰健 前財務事務次官
スペシャルアドバイザー 御手洗 冨士夫 キヤノン会長兼社長
米倉 弘昌 住友化学会長(21世紀政策研究所会長)
渡辺 捷昭 トヨタ自動車相談役
宗岡 正二 新日本製鐵社長
委 員 大橋 洋治 全日本空輸会長
岩沙 弘道 三井不動産会長
西田 厚聰 東芝会長
川村 隆 日立製作所会長
坂根 正弘 小松製作所会長
三浦 惺 日本電信電話社長
小島 順彦 三菱商事会長
畔柳 信雄 三菱東京UFJ銀行相談役
勝俣 宣夫 丸紅会長
大塚 陸毅 東日本旅客鉄道相談役
斎藤 勝利 第一生命保険会長
奥 正之 三井住友フィナンシャルグループ会長
宮原 耕治 日本郵船会長
大宮 英明 三菱重工業社長
中村 芳夫 日本経済団体連合会副会長・事務総長
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