日本人は原発に対していろいろな意見に別れています。
1)原発を即刻ゼロにすべしという人々、
2)10年、20年かけて原発比率を10%から20%に低下させ、それを30年後にゼロにすべきという意見の人々、
3)原発の比率を10%から20%にして永久にこの比率を保持すべきという人々、
4)原発を可能なかぎり増加させ、発電量の40%から50%までにするべきという人々。
5)その他の意見の人々。
国民には日本の経済が悪くなっても子々孫々の安全のためには原発をゼロにすべきと思っている人が多いのです。
しかし日本の経済が現在より悪くなるのは避けるべきと考えている人も多いのです。
そこでどのくらいの原発を保有していれば経済不況にならないかを考えるべきです。
しかし経団連を構成している大会社たちは原発を30%、40%と拡大し、安い電力を豊富に使用したいと願っています。利潤が一番重要で、安全は二番目です。それが経済人の倫理であり、宿命です。非難すべきではありません。
それに加ええて原子力科学者や技術者は原発の安全性を改善して、安全な原発を次第に増加すべしという意見です。どんな技術でも100%安全な技術は存在しません。原発もある程度は危険性を必ず持っているのです。それで良いではないかという意見です。それが技術者の倫理であり、宿命です。非難すべきではありません。
上に書いた1)から5)のどれが良いかという国民投票をしたと仮定します。
大会社で働いている人と原子力科学者や技術者の総数は国民総数のなかで少数グループです。従って国民投票をすれば上の1)や2)に投票が集まってしまいます。
経団連の経営者はそれを阻止するために国民投票をさせないように政治家へ圧力をかけようとするのはごく自然のことです。原発を推進してきた経済産業省も原発を再稼働したいのが当然です。
野田総理が毎週金曜日の原発反対運動代表者と会おうとしても経済界の反対と枝野経済産業大臣の反対表明で、会見を中止しました。
日本は多数決の原理が通用する民主国家だと思っていたらそれは間違いです。大会社の経営者や中央省庁の役人が権力を持っている民主国家なのです。
これから原発について本格的な議論が展開されると思いますが、一体にどのような結論になるのでしょうか?注意深く見守っていたいと思います。
参考までに世界中で各国の民主化の度合いのランキングを下に示します。
日本は20位でアジアでは最高の順位にあるのです。
以下にその調査結果をしめします。出典は、http://dadao.kt.fc2.com/ron51minshu.htmです。
=====民主化度の世界ランキング===========
イギリスの調査機関が世界167カ国の民主主義ランキングを発表した。選挙過程と多元性(Electoral process)、政府の機能(Functioning of government)、政治参加(Political participation、政治文化Political culture、市民的自由度(Civil liberties)の5項目でそれぞれ10点満点で採点し、その平均点がトータルスコアとなっている。
堂々の1位に輝いたのは9.88ポイントのスウェーデン。以下、アイスランド、オランダ、ノルウェー、デンマーク、フィンランドと続く。この手のランキングでは北欧諸国がいつも上位を独占している。7位以下もルクセンブルグ、オーストラリア、カナダ、スイスなどの西洋諸国が続く。
我が日本は8.15ポイントの20位で、アジア諸国で唯一成熟した民主主義(Full democracies)に分類された。報道の自由度で51位だったのと比べると健闘していると言えよう。日本の場合、選挙過程、市民的自由度では高い評価を受けているが、政治参加での評価が低い。なお下記の表はあまりなじみの無い国々は省略してあります。
1 スウェーデン 9.88 2 アイスランド 9.71 3 オランダ 9.66
4 ノルウェー9.55 5 デンマーク 9.52 6 フィンランド 9.25
7 ルクセンブルグ 9.10 8 オーストラリア 9.09 カナダ 9.07
10 スイス 9.02 11 アイルランド 9.01 11 ニュージーランド 9.01
13 ドイツ8.82 14 オーストリア 8.69 15 マルタ 8.39
16 スペイン 8.34 17 アメリカ 8.22 18 チェコ8.17
19 ポルトガル 8.16 20 ベルギー 8.15 20 日本 8.15
22 ギリシャ 8.13 23 イギリス 8.08 24 フランス 8.07
25 モーリシャス 8.04 25 コスタリカ 8.04 27 スロベニア 7.96
27 ウルグアイ 7.96 29 南アフリカ 7.91 30 チリ 7.89
31 韓国 7.88 32 台湾 7.82 33 エストニア 7.74
34 イタリア 7.73 35 インド 7.68 36 ボツワナ 7.60
36 キプロス 7.60 38 ハンガリー 7.53 46 ポーランド 47 イスラエル 7.28 48 トリニダード・ドバゴ 7.18
49 ブルガリア 7.10 50 ルーマニア 7.06 51 クロアチア 7.04
52 ウクライナ 6.94 53 メキシコ 6.67 54 アルゼンチン 6.63
59 パプア・ニューギニア 6.54 61 スリナム 6.52 62 モルドバ 6.50 63 レソト 6.48
63 フィリピン 6.48 65 インドネシア 6.41 66 東ティモール 6.41
67 コロンビア 6.40 68 マケドニア 6.33 69 ホンデュラス 6.25
70 エルサルバドル 6.22 71 パラグアイ 6.16 72 ベニン 6.16
73 ギニア 6.15 74 ドミニカ共和国 6.13 75 バングラデシュ 75= 6.11
76 ペルー 6.11 77 グアテマラ 6.07 78 香港 6.03
79 パレスチナ 6.01 80 マリ 5.99 81 マレーシア 5.98
82 ボリビア 5.98 83 アルバニア 5.91 84 シンガポール 5.89
85 マダガスカル 5.82 86 レバノン 5.82 87 ボスニア・ヘルツェゴビナ 5.78 88 トルコ 5.70 89 ニカラグア 5.68 90 タイ 5.67
91 フィジー 5.66 92 エクアドル 5.64 93 ベネズエラ 5.42
109 ハイチ 4.19 110 アルメニア 4.15 111 キルギス 4.08
112 イラク 4.01 113 パキスタン 3.92 113 ヨルダン 3.92
132 アルジェリア 3.17 133 モーリタニア 3.12 134 クウェート 3.09
135 アフガニスタン 3.06 135 チュニジア 3.06 137 イエメン 2.98
138 中国 2.97 167 北朝鮮 1.03
言葉の定義をします。活字人間とは活字で印刷された本や新聞だけを読んでいて、インターネットが使えません。ネット世界をなんとなく見下げている人間と定義します。
ネット人間はインターネットのいろいろな機能を駆使出来て、多くの情報をネットから取り込みます。自分で作った文章や、会社の書類は電子化してコンピューター内に保存しておきます。紙に印刷した文書は時代遅れだとなんとなく見下げています。
そのような人間をネット人間と定義します。
あなたはどちらでしょうか?と聞かれて戸惑う人も多いと思います。その種類の人間を「アイマイ人間」と定義します。
日本人を分類すると大部分は「アイマイ人間」ですが、70歳以上の高齢者の多くは活字人間です。一方情報産業分野で働いている人々の多くは「ネット人間」です。
雑ですね。こいう分類は雑過ぎます。しかしこの分類にはいろいろ考え込ませる問題を提起してると私は信じています。
急に矮小な話になりますが、私の家内は活字人間です。この暑いのに毎日のように現代小説や古典文学を読んでいます。そして私をいささか見下げたように、「たまには小説でもお読みなさい」と言いながら本を手渡してくれます。無視します。しかし夫婦喧嘩になっては損ですから昨日、三浦しをん著「舟を編む」という小説を読みました。
抱腹絶倒しました。かなり知的な笑いが沢山詰まった小説です。
人生を不器用に生きている馬締(まじめ)という名の男が出版社で辞書の編集をしているのです。13年にわたる地味な苦労が実り、「大渡海」という辞書を完成する話です。
完成までに恋愛や結婚の話題が面白おかしく取り混じえてあり、娯楽小説としても抜群の出来上がりです。
しかしこの本の真骨頂は辞書の編集作業を通うして日本語の複雑さ、美しさ、活字にしたときの輝きを歌いあげるように、しかも解り易く説明しているのです。
それだけではありません。「広辞苑」や「大辞林」や「日本国語大辞典」や「岩波国語辞典」などの執筆者、編集者を尊敬しつつ、自分達が作っている「大渡海」にそれらの辞書には無い新鮮味や時代を反映させるような内容も加味したいと努力している部分が実に興味深いのです。深いだけでなく、ユーモアがあるのです。
新鮮味や時代性を加味し過ぎると面白くなる代わりに通俗的になりすぎます。辞書の寿命が短くなります。そうならないギリギリの線で止めるのです。この辺の書き方が絶妙で、唸ってしまいます。
その上、辞書に使う紙の性質を解り易く教えてくれます。薄くて、軽くて、裏の字が透けて見えない紙です。そしてその薄い紙がページをめくる指にすいついて、1枚だけ素早くめくれなければいけません。そんな紙の性質を「ぬめり」といいます。
思わず、本棚の「広辞苑」を手にとってページをめくって見ました。ぬめりがあるのです。紙が一枚だけ指に吸いつくのです。
三浦しをんさんは他にもいろいろ地味な職業の面白さを描いた小説があるそうです。
しかも彼女の小説は人間が描かれています。その上抜群のストーリーテイラーとして面白い小説が多いそうです。それよりも日本語の複雑な意味を使い分けて、活字文化を輝かせています。まだお若いので将来大きな仕事をすると思い、楽しみにしています。
もしあなたが「ネット人間」なら、しばしキーボードから手を放し、「舟を編む」という小説をお読み下さい。活字と紙の世界も素晴らしさに魅了されると信じています。
それはそれとして、今日も皆様のご健康と平和をお祈り申し上げます。
後藤和弘(藤山杜人)