第二次大戦へ出征し、戦没した画学生の作品を常設展示している無言舘という美術館があります。
無言舘は、長野県上田市、別所温泉近くの山中にあります。数年前に車で、山の中を探しあぐねた末にやっと辿り着きました。鎮魂という言葉を連想させる、修道院のようなコンクリート製の建物です。館長が遺族を訪問し、一枚一枚集めた絵画を展示してあります。戦没画学生の出身校は東京美術学校(現、東京藝術大学)だけでは無く全国の美術学校でした。そんな事もあって何時かはその東京藝術大学を訪問したいと思っていました。
昨日その大学の美術館で「香り」展があり、その帰りがけにNK教授の所に寄り、学校内をおちこち丁寧に案内して頂きました。私は大学の工学部で研究をしていましたので、自分の研究室出身の人が何人も大学の先生になっています。しかしみんな工学部で仕事をしています。NK教授も長年、大岡山で教授をして居ましたが、数年前に上野の藝術大学に招聘されたのです。彼はとても優秀な人で、私の研究を力強く支えてくれた方です。私が終生誇りに思っている研究者です。藝術大学には昔の技術を再現したり、芸術作品を修理する部門があり、その部門を担当しています。
学内には絵画棟、彫刻棟、音楽棟、美術館などが散在し、さらに鋳物工場や木工工場など種々の立派な施設があります。その中で若い学生さん達が活き活きと制作に没頭しているのです。
第二次大戦中はその学生に赤紙が来て、戦場へと出征して行ったのです。それを考えながら現在の学生さん達の制作中の姿を見ていました。次第に私の目に涙がたまって、霞んで見えるのです。有名な画家や彫刻家の銅像が沢山ありましたが、昨日は何故か見る気がしませんでした。
下に東京美術学校出身で戦没した杉原さんの絵画を示します。神戸の東亜ロードの風景画です。
戦没画学生の絵画はこのブログで2010年11月と12月に以下のように掲載してあります。クリックしてご覧頂ければ嬉しく存じます。昨日、東京藝術大学のキャンパスをNK教授と家内と一緒に歩きながら考えていた絵画の一覧です。
敵国の戦没画学生を含めて全ての戦没画学生の冥福をお祈りして、この記事を終わります。
戦没画学生の絵画(1)杉原基司さんの「神戸東亜ロード」
戦没画学生の絵画(2)金子孝信さんの「子供たち」
戦没画学生の絵画(3)岩田良二さんの「故郷風景」
戦没画学生の絵画(4)興梠 武さんの「編物をする婦人」
戦没画学生の絵画(4)片桐 彰さんの「街」
戦没画学生の絵画(5)山之井龍朗さんの「少女」
戦没画学生の絵画(6)日高安典さんの「無題」
戦没画学生の絵画(7)蜂谷 清さんの「祖母の像」
戦没画学生の絵画(8)芳賀準録さんの「風景}
以下の写真は、昨日の東京藝術大学の風景です。