おやじのつぶやき

おやじの日々の暮らしぶりや世の中の見聞きしたことへの思い

読書「男が女を盗む話」(立石和弘)中公新書

2013-09-09 18:44:16 | 読書無限
 高校の古文の教材としても有名な「伊勢物語(芥川)」「大和物語(龍田川・安積山)」「源氏物語(若紫)」を取り上げて、略奪婚(男が女を盗む)を取り上げています。これまで授業の教材としてどのように扱われてきたか。一方的な男性の視点でしか扱われてこなかったのではないか? 
 千年もの間、基本的には連綿とそれを読者に受容するようしむけた歴史、時代背景。そして、解釈の押しつけ。そこに、(一方的に)略奪された女性(分別もつかない子どもを含め)が不本意ながらもその現実を受け入れていくようになっていく、と。それは略奪(婚)への正しいとらえかたなのだろうか? 
 かつて高校の授業などで聞いた(そう教えられた)読者への刺激的な内容を持っています。一つの現在の時代背景を踏まえての現代的な解釈ともいえますが。新潟の女性拉致監禁事件も引用、ストックホルム症候群という括りで、加害者の暴力性を肯定する物語の存在をまっこうから批判しています。
 「伊勢物語(芥川の段)」では、「白玉かなにぞと人の問ひし時露とこたへて消えなましものを」という鬼に食われたしまった女を想い、男の嘆きで終わりにしている、その後日談をカットしている教材編集への疑問。
 「大和物語(安積山の段)」では「学習の手引き」にある「設問」(読者・高校生への誘導質問)への疑問。(ここでは、古典教科書の編集者は、源氏の若紫の巻のような垣間見の話や男が女を盗む話を好みにしているのではないか、という鋭い?指摘もあった。)
 ・男は沓をはいているが女は素足なこと(それによって、未来が男にすべて拘束されている)
 ・「食う」ことをすべて男に委ねざるを得ない女(それによって、男に生殺与奪を握られている)
 ・保護者という名目で男が女の顔や姿や趣味などを一任される(それによって、男の好む女性像を作らされる)
 ・三途の川を渡るには男の助けが必要だという信仰・風習の固定化(それによって、初めて関係した男を頼るしかない)
 ・・・
 実におもしろい指摘でした。高校の古文の先生には、ぜひ一読することを勧めます。

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