以上のとおり、7月のポトラッチ・カウントは、「熊坂」が5.0、「星合世十三團」が37.0、「裏表太閤記」が20.0で、合計では62.0となる。
・・・と本来ならこれで終わるはずなのだが、その前に、兵庫県知事のパワハラ問題で、ポトラッチとしての自殺が起きてしまった。
「亡くなった元県民局長は自死と見られ、知事が兵庫県上郡町の特産ワインを要求したとされる音声データを保管していたことも明らかになった。 そして新たに死亡が判明したのは、昨年11月のプロ野球阪神・オリックス優勝パレードの業務に携わっていた職員男性だという。
「元県民局長の告発文書には優勝パレードの経費をめぐる不正疑惑が挙げられており、担当課長だった男性が業務によって疲弊し、療養中である旨が記されていました。今年4月に死亡したとのことで、自死だったと見られています。県はプライバシー保護などを理由に約3カ月にわたって情報を伏せていましたが、今月23日に県職員向けのサイトに訃報が掲載されたのです」(前出・社会部記者)」
自死した二人のうち、少なくとも、元県民局長の自殺がポトラッチ型であることは、残された資料などから明らかである。
但し、7月大歌舞伎におけるポトラッチのほとんどが、「上位にある者を救うため自身又は妻子の命を捧げる」という自己犠牲型であったのに対し、兵庫県で起きたのは、「一生にわたって『(対価を支払うことが出来なくて)申し訳ない』という気持ちを相手に抱かせ、自分に従属させる」という純正ポトラッチである点が注目される。
つまり、兵庫県で起きたのは、「人間の心の内奥に存する或るもの、心の中心を尊重しえない、ここを破壊する、行為一般を非難し、そしてまさに自分のその内面が完全に破壊された」 人が、究極の手段として行うポトラッチの一種であり、”メディア型”とでも言うべきタイプのものである(3月のポトラッチ・カウント(4))。
いずれのタイプにせよ、ポトラッチが次々と起こるような組織あるいは社会は、間違いなく病んでいるはずである。
なので、自分などは、歌舞伎に出て来るポトラッチを、遠い昔の出来事として眺めているだけではマズいと思うのである。
亡くなった元課長に合掌。