(2)第2幕
① 備中高松塞の場
備中国高松城は、秀吉による水攻めにより、城主清水宗治はじめ軍師:鈴木北頭重成らは三カ月に及ぶ籠城中。
幕開きに、ちょっとしたコントが始まる。
「そしてこの4人の年齢を足しますとなんと327歳。
歌舞伎史上4人での幕開きの最高齢でしょうか?(笑)
平均年齢81,75歳・・・
歌舞伎史上4人での幕開きの最高齢でしょうか?(笑)
平均年齢81,75歳・・・
私が平均を引き下げている・・・と云う事にしておきましょう。一応。(中略)
この私以外の台詞は3人とも同じセリフがループになっていて
私一人がその都度、違う事を喋っております。」
1930年生まれの寿猿さん(御年94歳!)ら3人のセリフがループするという、アメリカ大統領選顔負けの場面である。
次に、場面は変わって喜多頭一家の家族会議。
秀吉との和睦に失敗した息子:孫市は当主:喜多頭から勘当されており、家の外から様子を窺っている。
すると、喜多頭は、起死回生の秘策として、主君宗治の首を打って秀吉に捧げるという、主君への裏切りを計画している。
これを妻と義母は止めようとするが、かえって喜多頭に打ち据えられる。
これを見かねた孫市は家に入り、喜多頭に斬り掛かる。
主君への「忠」を父への「孝」に優先させるのが当時の武士の倫理観だったからだろう。
すると、喜多頭は、
「でかした倅!」
と叫んで自ら刃を腹に突き立て、自分の首を秀吉に差し出すよう命じる。
喜多頭は、敗色濃厚と見ていたところ、本能寺の件を知って、今なら秀吉は和睦に応じると考え、自らの首を差し出そうとしたのである。
その際、孫市に手柄を立てさせれば一石二鳥だというので、さきほどは主君を裏切る内容の芝居を打っていたのだった。
ここら辺は、どうも既視感を感じさせる展開である。
そう、「我が子を錯誤に陥らせて自殺させる」パターンの「和田合戦女舞鶴」(5月のポトラッチ・カウント(5))を変形させた、「我が子を錯誤に陥らせて自分を殺させる」という、「間接正犯」の類型なのである。
というわけで、イエ(=藩)を救うために喜多頭が自分の首を犠牲に捧げたことから、これによるポトラッチ・ポイントは5.0:★★★★★。