Don't Kill the Earth

地球環境を愛する平凡な一市民が、つれづれなるままに環境問題や日常生活のあれやこれやを綴ったブログです

脱”ヒト”化

2024年07月09日 06時30分00秒 | Weblog
2019年には13年ぶりに来日し、神奈川公演では異例の立ち見がでる盛況で、大きな話題となりました。このNDTが、2020年より芸術監督を務めるエミリー・モルナーとともに5年ぶりに再来日し、豪華5作品から3作品を全公演異なる組合せで上演します。
 今回の来日公演に選んだのは、今最も注目度の高い人気振付家であるNDTのアソシエイトコレオグラファーのクリスタル・パイトとマルコ・ゲッケ、そしてピーピング・トムを率いて目覚ましい活躍を見せるガブリエラ・カリーソ、L-E-Vの振付家シャロン・エイアール&ガイ・べハール、さらに巨匠ウィリアム・フォーサイスの世界最前線の表現者たちによる、カンパニーの魅力を余すとことなく知ることのできる多様な作品群。

 2019年公演で大きな衝撃を与えたNDT1の来日公演。
 最速で最前列中央付近のチケットをゲットしたものの、会場に着いて「あああっー!」と声をあげそうになった。
 目当ての、クリスタル・パイト(言葉を超える(1))とウィリアム・フォーサイスの作品が上演されない日のチケットを買っていたのである。
 前回公演では、同じ作品を2回?上演したという記憶だったので、今回も同じだろうと思っていたのだが、今回は「豪華5作品から3作品を全公演異なる組み合わせで上演」したのである。
 さて、一つ目の "La Ruta" は、スペイン語で「道」を意味するが、振付家の言葉からすると、「コントロール不能な夢の世界」を描いているようだ。
 舞台には、道路とバス停のような建物があり、間歇的に車がやってきて、ちょっとしたアクシデントを生じさせる。
 印象的なのは、車に轢かれたシカから心臓が取り出され、男の胸に移植?された後、男が動物のような動きを始めるところ。
 そういえば、車から降りて暴れ出す女性も、ヒトとは思えないグロテスクな動きに終始していた。
 二つ目は、マルコ・ゲッケ(Marco Goecke)の ”I love you, gohsts”。
 観たことのある人なら分かると思うが、彼の作品の動きは、私見ではあるけれど間違いなく、
・ハエ
・カマキリ
・バッタ
・カエル
・トカゲ
・ムカデ
といった、ヒト以外の動物の動きが取り入られている。
 今回もそうなのだが、意表を突いたのは、後半で男性のダンサー2人が、
 「ワン」
と吠えたところである。
 そう、私は初めて見たのだが、彼の作品にイヌが登場したのである。
 ちなみに、彼はダックスフントを飼っているそうだ。

 「ゲッケ氏は公共放送NDRに対し、ヒュスター氏から「糞便(ふんべん)(のようなひどい批評)を何年も投げ付けられている」と主張。そこで飼い犬のダックスフントの排泄物が入った紙袋を使ってヒュスター氏を攻撃したと語った。「もちろんこれは言い訳であり、歌劇場のような公共の場で起きていい出来事ではなかった。当然ながら観客が恐怖を感じたのも事実だ。その点について非常に申し訳なく思っている」(ゲッケ氏)

 最後の演目は、イスラエル出身のデュオ:シャロン・エイアールとガイ・べハールによる "Jackie"。
 映像からも分かるように、密着した多数のダンサーによる動物的、というか半神的な動きが特徴と思われる。
 やはり、ここでも、”ヒト”を超越した動きがテーマになっているようだ。
 以上の3作品で感じるのは、「脱”ヒト”化」の傾向である。 
 バレエ・リュスの「牧神の午後」、ベジャールの「春の祭典」、マシュー・ボーンの「白鳥の湖」のように、ヒトならぬ存在(牧神、シカ、白鳥)の動きを模したダンスは従前から存在したが、虫や半神を、ソロだけでなく群舞で表現する流れは、やはり新しいのではないだろうか?
 もちろん、この傾向が何を目指しているのかは、素人である私には、十全には分かりかねる。
 もし仮に「意味などなく、奇妙さ自体に価値がある」というのであれば、これは、「ヨーロッパにおけるコンテンポラリー・ダンスの"村上春樹"化」を示す現象なのかもしれない。
コメント
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