岡山県に実在するカップルに起きた、ラブロマンス。婚約者が病気になり、回復する見込みがなくともひたすら愛し、待ち続けた男性の8年の軌跡を追う。
結婚を間近に控えた尚志(佐藤健)と麻衣(土屋太鳳)。だが突然、麻衣が病を発症し昏睡状態に陥る。尚志は、麻衣の両親(薬師丸ひろ子と杉本哲太)から、他の女性を探すように言われるが麻衣の回復を待ち続ける。
やがて、目を覚ました麻衣だが、尚志のことが記憶からなくなっていた。
導入部分はこの映画に対する心構えができるような作り方で、その世界観が伝わる。実話なので、そこからは、終わりが決まったものであり、ドキュメンタリーのよう。
周りで泣く人はいたが、泣かそうとはしていない作り。というのも、佐藤健や薬師丸ひろ子、杉本哲太といった人たちの演技が控えめ。困難な状況に置かれながらも、それが〝日常で〟あることを受け入れていることを感じさせる演技に徹しているよう。押し付けがましくないのだ。感情の置き所を、見ている人に委ねている感じ
。
むしろ、あっさりしているぐらいに思えた。
発病するあたりは目を背けたくなるような辛い場面であるが、ここが見せ場。そこでの土屋太鳳の身体的表現は、長くダンスをやってきたことが生かされている。言葉を体現。セリフの部分よりも体を使った細かい表現に注目。朝ドラの「まれ」以降、快活な役が続いていたが、「鈴木先生」や「真夜中のパン屋さん」など、クールで周りと群れない落ちついた系の演技が彼女の真骨頂だ。彼女を最近知った人は、こっちの方向だったのかと、見直しが必要かも。
原作はこの映画のモデルとなっている中原尚志・麻衣「8年越しの花嫁 キミの目が覚めたなら」。監督は「64」の瀬々敬久で、脚本は朝ドラ「ひよっこ」の岡田惠和が務めた。主題歌は若者に人気のback numberが書き下ろした「瞬き」。
公開は12月16日
(試写会でもらった鑑賞者のカード。結婚式の招待状のようになっている)