上映前に、料理研究家の土井善晴氏によるトークショーが開かれた。最近は、テレビ出演も多く若い人にも知れ渡り、たくさんの拍手で迎えられた。
新幹線移動では、手作りのむすびを持参し食べるのが楽しみだが、ふんわりゆるくむすぶのにはまっているという。
また、この年になって、料理に愛情が入るとおいしいと感じるようになったなど、自身に関することが語られた。
だがこのトークショー、映画のストーリーと絶妙にいい感じで絡んできていたのである。
トークショーはマル秘なので、多くは語れなくて残念至極。
とにかく、まずはこのトークショーから掴まれて上映がスタートした。
孤児院で育った佐々木充(二宮和也)は絶対味覚をもち、「最期の料理人」として顧客の「人生最後に食べたい料理」を創作し、高額な収入を得ていた。
絶対味覚を持つ天才でありながらも、一人よがりな性格が災いし、自身の店は閉店していた。
そんなとき、中国の有名料理人から、かつて天皇陛下の料理番だった山形直太朗(西島秀俊)が作り上げたという、〝大日本帝国食菜全席〟のレシピを再現する仕事が舞い込む。
〝麒麟の舌〟と呼ばれる味覚を持つ料理人が、戦時下の混乱でレシピを消失。約70年前、なぜそうしなければならなったのか、その姿を追う。
監督は『おくりびと』の滝田洋二郎。出演は二宮和也、西島秀俊のほかに、宮崎あおい、綾野剛、竹野内豊など。
西島秀俊が主演扱いでもおかしくない。困難に取り組む姿に目がいく。そして、その妻を演じるのが宮崎あおい。宮崎あおいの昭和の良妻ポジションはおいしいと思う。
観賞後、何かを語りたくなるので、家族や誰か親しい人と観るのがオススメではあるが、一人でもじんわりと回想できるだろう。いいところも悪いところも含めて、昭和という時代であると受け止める。
誰かの命は誰かに受け継がれる。
勘のいい人は、あることをまず気づくことになると思うが、伏線はきれいに回収されていくので、そのことは奥にとどめながら、終盤を観賞されたい。
おそらく、これから本番の映画賞にラインアップされてくるはず。
(11月3日公開)