――民主党に衆・参両院過半数のチャンスを与えよう――
《平野官房長官の寝ぼけた顔を叩いても始まらない》
政府は米軍普天間飛行場移設先として県内2案と一部県外案をセットとする方向で米側、沖縄県など関係自治体との調整に入る方針を固めたと言う。
《普天間移設:県内2案提示へ 一部「県外」とセット》(毎日jp/2010年3月26日2時30分)
県内2案とは――
(1)米軍キャンプ・シュワブ陸上部(同県名護市)に500メートル級滑走路を建設。
(2)米軍ホワイトビーチ(同県うるま市)沖合に人工島を建設。
県外案とは――
訓練や基地機能の一部を徳之島(鹿児島県)など県外に移転する。
これで連立与党ないが纏まったわけではない。平野官房長官が25日、社民党の阿部知子政審会長、国民新党の下地幹郎国対委員長と会って3月末までに政府案を纏める方針を説明したが、海上を埋め立てるホワイトビーチ沖合案には両党が反発したと記事は伝えている。
一方、〈防衛省と国民新党を中心に、暫定的にシュワブ陸上部に移設したうえで将来的にホワイトビーチ沖合かグアム移設を目指す2段階案も浮上している。〉ことも記事は紹介している。
但し案に含まれている沖縄県も鹿児島県も反対姿勢を示している。
仲井真沖縄知事は那覇市を訪れた北沢俊美防衛相と会談後、記者団に語っている。
「シュワブ陸上案であれホワイトビーチ沖合案であれ難しいと伝えた」
県外案の伊藤鹿児島県知事と徳之島など関係市町の首長らも平野官房長官に反対を申し入れたという。
だが、そういった反撥などまるきりないかのような反応を防衛相幹部は示している。
幹部「5割以上を県外に移せるかがポイントだ」
要するに「5割以上」が県外移設の約束(=公約)を果たすことができる分岐点だと言うわけである。何月何日にきっちり返済するからと言って100万円借りていき、約束の何月何日に返しに来たが、60万円で半分以上なのだから、100万円返したことにしてくれと言うようなものである。
沖縄県及び沖縄県民側からすると、5割以下で県外移設と同じにしてくれと言われるようなものであろう。
記事は最後に、県内と県外の“別居状態”では困ると、そのままの言葉を使ったわけではないだろうが、〈一体運用を重視する米側が反発しそうだ。〉と、いわば同居に拘る姿勢を示しそうだと書いている。
同じ内容を扱った「asahi.com」記事――《普天間、県内段階移設案を検討・提示へ 合意困難な情勢》(2010年3月26日3時0分)は県内2案の困難な点を挙げている。
〈移設案は、まずシュワブ陸上部に、500メートル四方のヘリポートを建設し、そこに普天間に常駐するヘリコプターを暫定的に移す。ただ、近く配備予定の垂直離着陸輸送機MV22「オスプレイ」の離着陸に支障をきたすため、この段階では、普天間の継続使用も必要になると見られる。〉こと。
〈そのうえで、米軍ホワイト・ビーチのある勝連半島の沖合に人工島を造成し、滑走路や港湾施設を建設する。これには環境影響評価を一からやり直す必要があり、実現には10~15年かかるとみられるため、完成した段階で基地機能を全面的に移す計画 〉で、遠い話であること。
そして米側の姿勢を次のように伝えている。やはり県内・県外の別居をネックと見ているのだろう。
〈米国政府は、今回の移設案が日本政府案として提案されても拒否するとみられる。首相が期限とする5月末までに移設先が決まらなければ、鳩山政権は普天間移設断念に追い込まれそうだ。 〉ということと、〈米政府は、名護市辺野古沿岸部にV字滑走路を新設する現行計画が最善との姿勢だ。〉ということ。
さらに上記「毎日jp」記事が伝えていた防衛相幹部の「5割以上を県外に移せるかがポイントだ」と同じ趣旨の閣僚の発言を誰なのか、オフレコ発言だと断りが入ったのだろう、名前を明かしていないが「閣僚の一人」の発言として紹介している。
「沖縄からどれだけ危険性と騒音を除去できるかだ。100のうち、沖縄から50以上出せれば御の字だ」
鳩山首相が先頭に立って、「県外移設に県民の気持ちが一つならば、最低でも県外の方向で、われわれも積極的に行動を起こさなければならない」、「沖縄のみなさんの気持ちを大切にする」と、“トラスト・ミー県外”を暗黙の了解事項として発信し続け、沖縄から100すべてを出すようなことを言ってきたにも関わらず、「100のうち、沖縄から50以上出せれば御の字だ」とは恐れ入る。
小沢幹事長が連合沖縄の代表団と一昨日24日午後国会内で会談、鳩山首相の“トラスト・ミー県外”に触れている。
《小沢氏 県民は約束と受け止め》(NHK/10年3月24日 19時0分)
小沢幹事長「『普天間基地は最低でも県外に移設する』とした、さきの衆議院選挙での鳩山総理大臣の発言を聞けば、県民は自分たちへの約束だと受け止めるだろう」
但し民主党沖縄県連代表団と会談したときは微妙に言葉を変えている。
小沢幹事長「鳩山総理大臣のさきの衆議院選挙での発言は聞いているが、私は党の側にいるので、この問題で何か言うことはできない。皆さんの思いをしっかりと政府側に伝えたい」――
これらの発言を勘繰ると、内閣に対する牽制ともなり得る発言と受け取れないこともない。県外は鳩山首相の公約であり、特に沖縄県民に対する公約だとのお墨付きを与える補強剤となる発言なのだから、閣僚が小沢批判を続けるなら、内閣を立ち行かなくすることもできるのだぞという牽制ともなり得る言質として自らも利用できるからだ。
「閣僚の一人」が口にしたという「御の字」とは大体がどういうことなのか。「御の字」という言葉には限られた状況下では最高の結果を得るという意味が含まれている。確かに全面的県外移設が困難な状況にあるなら、「100のうち、沖縄から50以上出せれば御の字」だろうが、その「御の字」は自分たち政府にとっての「御の字」であって、沖縄県及び県民にとって「御の字」では決してない。いわば自分たちの「御の字」を沖縄県及び県民の「御の字」として押し付けようとしているに過ぎない。
いわば自分たちの「御の字」をすべてとし、沖縄の意思を無視している。
記事は解説している。
〈鳩山由紀夫首相が主張してきた「県外移設」をある程度実現したと説明し、沖縄県内や社民党の理解を得たい考えからの発言と見られる。 〉――
要するに政府がやっている一部県外移設案は「50」で「100」を誤魔化そうとするペテンに過ぎないということであろう。成算もない県外移設の空約束だったから、最終場面にきてペテンを働かざるを得なくなった。
あるいは“トラスト・ミー県外”を一部のみの県外移設に取り替えて“トラスト・ミー”とするマヤカシと言うこともできる。
こういった状況下、平野官房長官が昨25日午前、首相官邸で県内移設反対の連合沖縄の仲村信正会長と会談。沖縄県議会で国外・県外移設を求める意見書が全会一致で可決されたことなどを踏まえて次のように要望したという。
《移設 “たたかれようが決断”》(NHK/10年3月25日15時13分)
仲村会長「沖縄県内への移設を断念し、県外や国外への移設を目指すとともに、普天間基地を早期に閉鎖し、沖縄への過重な基地負担を軽減すべきだ」
平野「連合の立場はわかっている。・・・・とにかく決断するときは、政府の責任で、私も何をされようが、たたかれようが決断する」――
連合沖縄の仲村信正会長が県内移設全面反対、県外・国外全面移設を求めたのに対して、平野官房長官の「政府の責任で、私も何をされようが、たたかれようが決断する」は、県外・国外全面移設は無理ですと言ったも同然の言葉であろう。
だが、県外・国外全面移設否定は、「私も何をされようが、たたかれようが」といった平野個人の問題で済む事柄ではない。例え基地問題が鳩山首相辞任、内閣総辞職といった責任問題に発展する激震を招こうとも、「100のうち、沖縄から50以上出せれば御の字」だと同じく、「何をされようが、たたかれようが」はあくまでも政府側の事情に過ぎない。
言葉を替えて言うなら、平野や内閣が“どうされるか”の問題ではなく、沖縄が“どうされるか”の問題だということである。
いわば沖縄にとって「御の字」であるのかどうかであるのと同様に、結果として沖縄が「何をされようが、たたかれようが」構わない状況に置かれるのかどうかの問題であって、それを平野個人の問題と把えて、「私も何をされようが、たたかれようが」などとたわけたことを言っている。
沖縄県民の多くは平野の寝ぼけたような顔をいくら叩いても始まらないと思っているに違いない。
民主党、及び鳩山内閣が行っているこの普天間基地移設問題には最初から最後までいかがわしいばかりにマヤカシを巣食わせている。それを演じている代表格は鳩山首相もさることながら、第一番に挙げなければならないのは平野官房長官ではないのか。