――民主党に衆・参両院過半数のチャンスを――
鳩山首相はアメリカ軍普天間基地移設の政府案を3月中に纏めると自分から言ってきた。いわば国民向けの宣言でもあり、約束に当たる。
当然首相は自ら3月中に纏めるとした考えを関係閣僚に指示、関係閣僚は首相共々首相の指示に従った3月中の政府案完成を行動計画としたはずである。いわば3月中に纏める予定で行動した。有能であるなら。無能なら、計画通りに行動できなくても、無能であることが理由となって止むを得ないということになる。
だが、総理大臣及び内閣が無能であることは許されない。
3月29日夕方の首相官邸でのぶら下がり記者会見。
《普天間「『今月中』と法的に決まってない」29日の首相》(asahi.com/2010年3月29日21時22分)
(普天間問題のみの抜粋引用)
【普天間基地の移設問題】
――米軍普天間飛行場の移設問題について、岡田外務大臣は対米交渉前に一つの案に絞り込む必要はないとの考えを示した。総理は「最終的には一つにまとめなければ交渉はうまくいかない」と述べていたが、政府案を3月中に一つにまとめる考えに変わりはないか。これは閣内不一致と呼ばれる現象ではないか。
「え(苦笑い)。そういうわけではありません。当然いろんな選択肢の中から当然最終的には一つにして交渉をまとめていくと、当たり前で最後に二つもある、三つもあるわけはありません。ただ当然のことながらいろいろとアメリカやあるいは日本の中でも、交渉をしていく中で当然、必ずしも表だけの交渉ではなくて意見のすり合わせというものを行う必要があると。その中でいくつかの案が最初はあることはこれは当然かもしれません。しかし当然、政府案として最後に交渉してまとめていくにあたっては複数あるはずもありません」
――まとめていくのは3月中という考えに変わりはないか。
「3月中にまとめていきながら、当然まあ、いつまでに全部やんなきゃいけないとかそういう話じゃなくて、大体のスケジュールから行けばあと残り2カ月あまりですから、もうそろそろしっかりとした政府案をまとめて交渉を成立させていきたいとそう思ってます」
――(中略)――
【普天間その2】
――政府案をそろそろしっかりまとめたいというのは一つの政府案を今月中にまとめるという考えでよろしいか。
「まあ、今月中じゃなきゃならないとかいう、そういう、ことは別に法的に決まっているわけじゃありません。ただこの、あと2カ月という時期でありますから、そのような判断の中でまとめていきたいと思っていますし、そのような時期になってきていると思います」
3月中に纏めるという法律を国会で通して法的に規制したわけではないから、「法的に決まっているわけじゃありません」は子どもでも分かる当たり前のことで、NHKテレビで同じことを言っているのを聞いて、こいつバカではないのかと思った。
法的に決まっていないからといって、自分から言い出した3月中の政府案完成の約束を果たさなくてもいいということにはならないのはこれもまた至極当然のことであろう。約束の実現こそが自身の言葉を裏切らない責任の履行となる。約束を実現し、責任を履行するには自身の事を成就する能力ばかりか、関係閣僚を指示して約束どおりに事を成就させるリーダーシップの能力が深く関わってくる。
いわば何々しますと言葉を一旦口にした途端に実現能力とリーダーシップと責任意識が問われることになる。その自覚がない。自覚があったなら、「法的に決まっているわけじゃありません」などと言い逃れの口実めいた理由にはならないことは言わないだろう。
自分自身が言い出して、指示したであろう政治スケジュールである。その一つ一つに総理大臣としての存在自体が問われる国民の審判の前に立たされている自覚を持つべきだろう。
持たないところに実現能力もリーダーシップも責任意識も相互に関連し合う能力ゆえに何一つ育たないことになる。
大体が2009年暮れの12月に政府は普天間移設の結論を年内決着と言っていたにも関わらず、年明け以降に先送りしているのである。そして政府案を3月一杯に纏めると、3カ月の時間的余裕までつくった。その約束を違えたなら、これでは『狼と少年』の“少年”状態となりかねない。だからこそ、麻生太郎に劣らずにブレると言われる。
そこへきて昨30日に平野官房長官が午後の記者会見で米海兵隊は沖縄に必要だと言い出したという。 《米海兵隊は沖縄に必要=普天間移設、「抑止力」を重視-官房長官》(時事ドットコム/2010年3月30日(火)18:03)
平野「今の北朝鮮の動向を含め、沖縄の皆さんの負担を頂きながら米海兵隊が沖縄にいることは、わが国の安全保障、抑止力、初動態勢を含めて必要だ」
とうとう本音を明かしたかといった印象である。なぜなら、今更ながらに分かったことではないはずだからだ。今更ながらに分かったことなら、理解能力が相当欠けることになる。こいつ、バカかと言われても仕方がないだろう。
バカであることを免れるためには既に分かっていたことだが、隠していたということでなければならない。但し、バカではないことを証明できたとしても、相当に質の悪い狡猾な人間と言うことになる。平野のこれまでの言動からも証明できる狡猾さではある。
また平野のこの発言を裏返すなら、日本の「安全保障、抑止力、初動態勢」に欠陥が生じることと抱き合わせになることを承知していながら、そのことを口には出さずにもっともらしげに閣僚間で国外・県外移設を言っていたことになる。
「沖縄の皆さんの負担を頂きながら」も、負担軽減を言ってきたことを裏切る図々しい要求、もしくは押付けであろう。
『狼と少年』の“少年”状態は鳩山首相だけではなく、平野官房長官も同類と看做さなければならない。
少なくとも鳩山内閣が一旦言い出したことを遣り抜く責任意識を欠いるということは確実に言える。責任意識の欠如は相互に関連し合う能力ゆえに実現能力、リーダーシップの欠如を必然的に伴う。