5月18日(2015年)午前、ハワイのオアフ島にある空軍基地でアメリカ海兵隊のMV22オスプレイが演習中に着陸に失敗して直後に炎上、搭乗中の22人のうち海兵隊員1人が死亡、21人が手当を受けている。
官房長官菅義偉の午後の記者会見。
菅義偉「アメリカ側には、『着陸失敗の原因などの関連情報を速やかに提供してほしい。普天間飛行場のオスプレイについて安全面で最大限の配慮をしてほしい』と申し入れた。
アメリカ側から外務省ルートで、本件については迅速で透明性をもって対応したいという連絡があった。」(NHK NEWS WEB)
(下線個所は解説文会話文混じりを会話文に直す。)
記者「安全性が確認されるまでオスプレイの運用停止をアメリカ側に求める考えがあるか」
菅義偉「ヘリコプターの中でもオスプレイは安全だと思っている。海外の事故であり、アメリカ側には、できるだけ早く事故原因を解明してほしい」
オスプレイは継続的に事故を起こしている。だが、「ヘリコプターの中でも安全」であるばかりか、海外の事故だから、米軍の日本での飛行には問題ないと言っている。
この反応の鈍さは騒ぎ立てたくないという気持の表れなのだろう。万が一墜落して国民の命に支障が起きることになったらといった危機管理意識はない。「国民の命と財産、幸せな暮らし」はそのように宣言する必要に迫られたとき口にする言葉であるらしい。
同じ5月18日の午後、翁長沖縄県知事が沖縄県庁で記者会見して、沖縄に配備されている同型機24機に関して事故原因が究明されるまで飛行を停止するよう米側に求める方針を明らかにしたという。
翁長知事「県民の安心安全を守るという見地から、しっかりと対応したい。
米軍の運用に関しては、日本側は関わることができないというのが今までの日米地位協定上の日本の立場である。こういった環境に置かれた上でのオスプレイの配備は、県民からすると到底容認できない」(時事ドットコム)
国交省は民間機が重大なトラブルを起こすと、同型機の一斉点検を指示する。国民の生命に対する万が一を考える危機管理上の当然の責任を負い、その責任を果たす意味からの指示であることは断るまでもない。
翁長知事にしても県知事として県民に対する万が一を考える危機管理上の責任を負い、その責任を果たす義務を負っていることからの米軍運用に関わる当然の懸念であろう
翌5月19日の防衛相中谷元の参議院外交防衛委員会での発言。
中谷元「現時点でアメリカ政府から、『現在調査を行っているが、設計に根本的な欠陥を疑う理由はなく、通常の運用を停止させる理由は発見されていない』と説明を受けている。
アメリカ政府は、『運用の安全性を確認しており、引き続き最大限の考慮を払って運用する』としている。安全面に最大限考慮を払って活動すべきなのは言うまでもなく、アメリカ側に適切な対応を求めていきたい」(NHK NEWS WEB)
同日官房長官記者会見。
菅義偉「アメリカ政府からは、『オスプレイの設計に根本的な欠陥はなく、通常運用を停止すべき理由は発見されていない』と説明を受けている。安全性に最大限配慮して運用するのは当然であり、アメリカ側としっかり連携して取り組んでいきたい」(NHK NEWS WEB)
中谷元と菅義偉は同じことを言っている。要するに両者共にアメリカ側の説明で良しとしている。アメリカがオスプレイをアメリカ本土で飛行させる場合はアメリカ国民とその生命・財産を下に置いてその上空で飛ばすことになるが、米軍が日本本土で飛行させる場合は、日本国民とその生命・財産を下に置いてその上空で飛ばすことになる。
つまり菅義偉にしても中谷元にしても、日本国民の生命・財産を米軍任せにしたことになる。例えオスプレイが結果的に日本本土で墜落や着陸失敗がなくても、日本政府が担うべき日本国民の生命・財産に関わる危機管理を米軍任せたとしたという点は何ら変わることはない。
また、日本に於ける米軍運用のオスプレイであっても、国民に対する危機管理を決して米軍任せにできない理由がある。日本がオスプレイの購入を計画しているからである。
《平成27年度防衛関係予算のポイント》には次のような記述がある。
〈2.主要な施策
「平成26年度以降に係る防衛計画の大綱」、「中期防衛力整備計画」(平成26年度~平成30年度)」(平成25年12月17日閣議決定)に基づき、統合機動防衛力の構築に向け、引き続き防衛力整備を着実に実施するため、主に以下の施策が盛り込まれている。(計数はいずれも初度費除きの数字)〉
〈(2) 島嶼部に対する攻撃への対応〉
〈ティルト・ローター機(V-22)の取得(5 機:516 億円)〉
ティルト・ローター機とは通称オスプレイのことで、防衛相購入の「V-22」とハワイ空軍基地で着陸失敗したアメリカ海兵隊のMV-22オスプレイとは型式名は違うが、「Wikipedia」に〈1985年にはJVX(陸軍、海軍、空軍、海兵隊4軍共同の「統合垂直離着陸研究」)で開発する機体の名称が"V-22 Osprey"(オスプレイ)と決定され、米海兵隊向けをMV-22、米空軍向けをCV-22とした。〉とあるから、元々の「V-22」という名称を使ったのだろう。
例え米軍運用であっても、日本本土上空でのオスプレイの飛行に関しての日本国民の生命・財産に関わる危機管理は日本政府自らが担わなければならない以上、さらには日本政府がオスプレイを購入して日本国民とその生命・財産を下に置いて日本本土上空を飛行させる計画がある以上、このことの前以ての危機管理を含めて二重の責任を負っているのだから、原因究明までの日本に於けるオスプレイの飛行の中止、更には防衛省に所属するのか、国交省に所属するの分からないが、航空事故に関わる事故調査官をハワイに派遣して調査に加わらなければならないはずだが、アメリカ側の説明だけで良しとして、二重に負っている危機管理の責任を二重共に放棄している。
安倍政権の日本国民の生命・財産に関わる危機管理の不作為・無責任は、普段の「国民の生命・財産、国民の幸せな生活を守る」の言葉をウソとし、如何ともし難い。