
「生活の党と山本太郎となかまたち」
《『生活 機関紙23号』発行》
◆憲法を語るシンポジウムから読み解く安倍政権憲法改正の本質
◆山本太郎代表の国会レポート
◆玉城デニー幹事長アメリカ・レポート
◆第189回国会活動報告
◆談話:危険極まりない日米防衛協力ガイドライン改定
「明治日本の産業革命遺産」がユネスコの世界文化遺産に登録される見通しとなったことに対して韓国が反発しているという。反発の理由は文化庁がユネスコに推薦した23遺産のうち、7カ所で日本の植民地時代に朝鮮半島出身者5万7900人が強制動員されているからだという。
韓国メディアが5月4日、「『強制徴用』の産業施設、世界遺産登録有力」などと速報したとマスコミは伝えている。
対して安倍政権閣僚は各々韓国の反発の正当性のないことの発言を行っている。
《岸田外相会見録》(外務省/2015年5月8日)
場所は官邸エントランスホール。
山口テレビ東京記者「日本の明治の世界遺産登録の関係ですけれど,韓国側が『徴用工』の問題を取り上げてかなり反発を強めています。この反発を強めている現状についてどのように受け止めていらっしゃるかと言うことと、この反発について日本政府としてどのように答えていこうと考えているかそれについてお願いします」
岸田文雄「本件遺産については,対象とする年次が1850年代から1910年とされております。韓国が主張しておられるような、いわゆる朝鮮半島出身の『旧民間人徴用工』問題とは対象とする年代も、あるいは歴史的な位置づけ、さらには背景が異なるという認識をしています。あくまでも1850年代から1910年までの産業遺産として顕著な普遍的な価値に着目して推薦をしたものです。
今般イコモスから登録すべきであるという勧告がなされました。是非この案件が技術的・専門的見地から審議されることを我が国としては期待をしたいと思います。世界遺産委員会あるいは世界遺産委員国に対しまして、しっかりと理解を得るべく努力をしていきたいと考えています」
下村博文「韓国は第2次大戦中の1944年から45年にかけての7カ月間の旧民間徴用工の問題を指摘しているが、産業革命遺産は幕末から1910年までの資産の顕著な価値を主張しており、歴史的位置付けが違う。
過去に韓国の文化大臣にも詳しく説明し、理解を得たと考えていた。外務省と連携し、丁寧に説明する。勧告通り技術的、専門的知見で価値が評価されることを期待する」(時事ドットコム)
菅義偉「「専門家機関が認めたものであり、韓国が主張するような政治的主張を持ち込むべきでない」(毎日jp)
要するに幕末から明治時代(明治元年=1868年~明治45年=1912年)にかけての年代を対象とした歴史的価値に対する世界遺産登録であって、第2次大戦中の1944年から45年にかけての7カ月間の旧民間徴用工とは年代も歴史的な位置づけも背景も全てが異なるから問題はないと正当化している。
確かに登録申請23遺産のうち7カ所が日本の植民地時代に朝鮮半島出身者5万7900人の強制動員の歴史を抱えていたとしても、そのほんの一部の歴史を以って、全体の歴史とすることはできない。
日本の植民地時代と侵略戦争の歴史によって他の歴史まで否定することはできないようにである。
だが、7カ所は韓国人にとって過酷を極めた強制労働の記憶によって代表される。12時間を超える長時間労働、過酷な労働環境、日本人の半分の賃金、半分でありながら、強制貯金とピンハネによって殆ど手元に残らず、食糧不足によって満足に食事が与えられない奴隷扱いさながらの状況に置かれ、病死や今で言う過労死、栄養不良死等で死亡率が高かったという。
戦争末期、沖縄戦に備えて沖縄に大量の兵力・武器・弾薬・爆弾を送り込んだ際、船から荷揚げして背負って基地まで運ぶ運搬と壕掘りの過酷な労働に従事させるための軍夫を朝鮮半島から募集、中には強制連行した。
過酷な重労働に従事させられながら、食事を満足に与えられなかった。
当時阿嘉島青年団員の垣花武一さんの証言「我々が銀飯(ぎんめし)を食うとき、あの人たち(朝鮮人軍夫)はおかゆ。我々がおかゆに変わるときは、あの人たちは雑炊とか粗末な食事。量も半分くらい。だから、あれですよ。あの壕掘りとか重労働に耐えられなかったと思うんですよ。そういう食料で」
空腹に耐えかねて、近所の田の稲や畑の芋をこっそりと食べて飢えを凌いだ。ポケットの稲が軍人に見つかって、13人が手を縛られ、銃殺された。
2011年2月27日放送のNHK「証言記録 市民たちの戦争『“朝鮮人軍夫”の沖縄戦』」に出演した元朝鮮人軍夫が証言した話である。
年代も歴史的な位置づけも背景も全てが異なるとしても、世界文化遺産に登録された場合、7カ所は日本人にとっては何でもないことであっても、韓国人にとっては屈辱そのものである過酷を極めた強制労働の認めがたい記憶と共に存在し続けることになる。
このことは無視できないはずだ。