ロシアの択捉・国後の軍備増強は領土交渉条件の「友好的で静かで落ち着いた雰囲気」に適っているのか

2014-04-20 05:41:54 | Weblog

 

 4月18日、ロシア国防省が露極東やシベリア地域を管轄する露軍東部軍管区の再軍備計画の一環として、北方領土の択捉島と国後島に2016年末までに兵士用の居住施設などの軍施設を増設することを発表したするインタファクス通信の報道を4月18日付「MSN産経」記事が伝えている。

 《ロシア国防軍、2016年まで択捉・国後に軍事施設増強》

 択捉、国後両島に建設される軍施設に関しては150 以上にのぼり、その殆どが駐留兵の住居や社会福祉施設だということだが、軍施設の造設だけではなく、〈サハリンとクリール諸島(北方領土と千島列島)に駐留している軍部隊には今年も新型の戦闘機や対空ミサイルなどを配備、軍装備を増強する〉と伝えているという。

 インタファクス通信の報道は4月18日、露軍東部軍管区令官のスロビキン陸軍大佐がサハリン州のユジノサハリンスクで発表したもので、大佐はさらにこの3年間で、サハリンとクリール諸島に戦車などを含む350の最新兵器を配備したことも明らかにしたという。

 要するにロシアは択捉・国後島の軍備増強を着々と計っている。

 軍備増強だけではない。周知のように2005年にロシア政府は「クリル諸島発展連邦特別プログラム」を採択、2006年には、「2007-2015年のクリル諸島の社会経済発展」計画を採択。インフラ整備やインフラ整備に基づいた経済発展を策している。

 ロシアは軍備増強と島の経済発展を併行して進めている。

 安倍晋三は昨2013年の1年間にプーチンと4度首脳会談を開き、信頼関係を深めていて、ファーストネームで呼び合う仲となっているそうだ。「シンゾー」、「ウラジミール」と。

 そして今年2月にも安倍晋三は西欧諸国首脳がロシアの人権問題への抗議の意思表示として出席を見合わせる中、ソチ・オリンピック開会式に出席、プーチンと首脳会談を開いている。

 顔を合わせた途端、「やあ、やあ、ウラジミール、久しぶり」とか言い、「やあ、やあ、シンゾー、元気かね」とでも言って、熱い握手を交わしたに違いない。

 信頼関係を深めていく過程の2013年9月5日3回目のロシア・サンクトペテルブルク日ロ首脳会談で、繰返しこの言葉が取り上げられることになったのだから、多分、一大成果と言うことなのだろう、二人は北方領土返還問題に関しては「友好的で静かで落ち着いた雰囲気で話し合いを進展させる」ことを確認している。

 経済発展による島の住民の生活向上はロシア政府の責任であって、当然のことだとしても、軍備増強は、それが日本に対してであろうと、アメリカに対してだろうと、北方領土の守りを固めることを意味する。

 軍事的に守りを固めるとは誰に対しても手渡さないことを裏の意味としている。

 プーチンは北方領土返還交渉を「友好的で静かで落ち着いた雰囲気で話し合いを進展させる」ことを約束しているが、北方四島に対するロシアの軍備増強は領土問題での「友好的で静かで落ち着いた雰囲気」に適うロシアの動きと言えるのだろうか。

 「友好的で静かで落ち着いた雰囲気」をつくり出した中でテーブルに就いて和気藹々と領土返還問題を論じようとも、領土自体は誰にも手渡さない意志を隠した「友好的で静かで落ち着いた雰囲気」であったなら、見せかけの雰囲気、あるいは駆引きのためのニセモノの雰囲気ということになる。

 ロシアはロシア系住民を使ってウクライナのクリミア自治共和国をウクライナから分離、ロシアに併合させたが、ウクライナからの分離とロシアへの併合というプロセスではなく、旧ソビエト連邦構成国から分離したウクライナからクリミアを取り戻す、いわば分離を一部回復させるプロセスと解釈した場合、北方四島を手渡さないという軍事的意思表示の執着度がどの程度か、よりよく理解できるのではないだろうか。

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安倍晋三の賃金上昇と経済活性好循環アベノミクスは他力本願ミクス

2014-04-19 03:47:12 | Weblog




      《生活の党PR》

      《4月20日主濱 了生活の党副代表NHK『日曜討論』出演 》   
     
      内 容
      ○教育委員会の見直しといじめ対策について
      ○道徳の教科について
      ○いま求められる教育改革とは等

      《主濱 了 ウェブサイト〉        

 4月16日(2014年)、名前も大袈裟な、あるいは名前だけが大袈裟な「経済財政諮問会議及び経済財政諮問会議・産業競争力会議合同会議」を首相官邸で開催したことをマスコミ報道で知り、その挨拶の一部を首相官邸HPから拾い出した。

 安倍晋三「本日、経団連、日商、そして連合より、春闘の状況について御報告をいただきましたが、これまでの安倍内閣の取組に呼応して、大企業から中小企業に至るまで『賃上げの風』が吹き始めたという手応えを感じております。これまでの賃上げに向けた労使双方の御尽力に感謝申し上げたいと思います。

 この『賃上げの風』を全国津々浦々にお届けするため、現在労使交渉が進められている企業においても、企業の規模や雇用の形態を問わず、更なる賃上げの動きが広がっていくことを強く期待しています。

 さらに、今後、我が国がデフレ脱却と経済再生を果たすためには、賃金上昇を定着させて持続的に経済の好循環を実現する必要があります。この度の賃上げの動きを大きな流れとして継続していくためにも、労使の引き続きの御努力に期待したいと思います。政府としても、全力で環境整備に取り組んでまいりま す」(首相官邸HPより)――

 「賃上げの風」と言う程に大袈裟な賃上げではなかったはずだ。《「消費税率8%」でゆがむ景気 不十分な賃上げ、不純な財政出動…》なる記事題名の2014年4月1日8時0分発信「MSN産経」記事は、冒頭次のように解説している。

 〈消費税率はいよいよ8%。気掛かりなのはデフレ下での増税に伴う景気の歪(ゆが)みだ。所得・消費・投資・雇用という経済好循環の芽は育つのか。

  今春闘で大手各社が賃上げに応じた。「景気の好循環が明らかに生まれ始めた」(安倍晋三首相)のだが、民間の推定の多くは、中小企業を含めた産業界全体の賃上げ率は0・5~0・8%にとどまる。消費税増税効果を含めた平成26年度の消費者物価上昇率見通し3%にはるかに及ばない。この点につ いて浜田宏一内閣参与(エー ル大学名誉教授)は若者向けの 「産経志塾」講座で、「賃上げの幅よりも、来年以降も続くこ とがより重要です」と、持続性を強調したのが印象的だ。〉――

 安倍晋三のブレーン浜田宏一内閣参与の意向が働いたのか、安倍晋三は今までの安倍政権要請に応えたクエッションマーク付きでしかない「賃上げの風」に満足せず、さらなる「賃上げの風」の継続を要請、その継続性を確保して、そ れを以て“経済好循環実現”の礎(いしずえ)としようとしている。

 だが、本勝負はアベノミクス第三の矢である「成長戦略」にあるはずだから、その果実の収穫がないままに企業に「賃上げの風」の継続性を求めるのは、お門違いな他力本願としか言いようがない。

 アベノミクス第1の矢である「異次元の金融緩和」はカネを刷る力をバックとした日銀政策に頼った他力本願であり、第2の矢である「機動的な財政政策」は赤字国債と消費税増税税収、その他の税収を見込んで頼った他力本願であり、第三の矢である「成長戦略」こそが自力本願の力の見せ所となる本番であるはずである。

 だが、今以て他力本願の企業の賃上げに期待している。

 この4月16日の安倍晋三の他力本願発言に翌日の4月17日、三村日本商工会議所会頭が記者会見で異を唱えている。《三村会頭「毎年の賃上げ介入おかしい」》NHK NEWS WEB/2014年4月17日 18時22分)

 三村会頭「今回は長く続くデフレからの脱却や、経済の好循環を実現するという目的があ り、政府が介入する形で賃上げが実現したことは良かった。

 (但し)毎年、政府が介入して継続的に賃上げを求めていくのはおかしいのではないか。個々の企業に任せる問題だ」

 業を煮やした様子を窺うことができる。

 なぜ安倍晋三は自身のアベノミクスの最後の矢である「成長戦略」を経済活性好循環の本番として大々的に宣伝、自力本願の凄さを予告しなかったのだろうか。「あとは成長戦略にお任せください。安倍晋三の力の見せ所です」と。

 だが、依然として他力本願にしがみついていた。あるいは他力本願から自力本願へと自立できないまま、他力本願で成長を止めている状態にあった。

 この原因は「成長戦略」の成功の見通しにあるはずだ。

 だが、「アベノミクスは言葉に実行が伴っていない」とか、「アベノミクスへの期待感が剥落しつつある」、あるいは「外国人投資家はアベノミクスが自民党による伝統的な経済政策の焼き直しに過ぎないことをより深く理解している」とか、このような否定的評価がマスコミ報道から散見されるようになった。

 本番の成長戦略こそが創造的な政策の自力本願としなければならないはずのところを自民党の伝統的な経済政策の焼き直しに過ぎないと酷評されている。あるいは言葉に実行が伴わない空疎な自力本願でしかないと見られている。

 だからこそ、賃上げ継続要請の他力本願にしがみつかざるを得なかったということか。

 だが、経済界の一部からだが、そういった他力本願はもういい加減にして貰いたいと異議申立てが起こった。

 安倍晋三は2013年9月26日未明(現地時間9月25日午後)、米ウォール街のニューヨーク証券取引所で演説した。

 安倍晋三「日本に帰ったら直ちに成長戦略の次なる矢を放つ。投資を喚起するため、大胆な減税を断行する。世界経済回復のためには3語で十分です。バイ・マイ・アベノミクス(アベノミクスは買い)」(日刊ゲン ダイ)――

 アベノミクスは日本経済の回復にとどまらず、世界経済回復まで実現するエンジンとなると大ミエを切った。
 
 だが、実行すべき自力本願へと成長し切れないままに他力本願の段階にとどまっている。

 だからこそ、外国人投資家は投機で莫大な利益を得ようと、アベノミクスからしたら本番から外れた他力本願でしかない日銀のさらなる金融緩和に期待している。

 経済的動向に嗅覚が鋭く効く外国人投資家でさえそういった状態なのだから、アベノミクスは他力本願ミクスと名前を変えるべきだろう。

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安倍晋三の中国の人権抑圧政策に一言も抗議せずに対中“平和的台頭”圧力を日米同盟に期待するお門違い

2014-04-18 07:51:39 | Weblog

 


      《生活の党PR》

      《4月17日(木) 生活の党・民主党・みんなの党・結の党4党共同衆議院提出「東日本大震災復興特別区域法改正案」全会一致衆議院通過》

      《4月14日 小沢一郎生活の党代表定例記者会見要旨》

      『野党、一つずつの政党で戦っていては国民の選択肢がなくなってしまう』

      【質疑要旨】
      ・野党各党の動きによる野党再編の影響について
      ・熊本鳥インフルエンザ発生時の総理の対応について

 安倍晋三が昨4月17日、東京都内で講演している。その発言を、《首相「中国の平和的台頭に日米同盟強化を」》NHK NEWS WEB/2014年4月17日 13時28分)から見てみる。

 安倍晋三「中国が責任ある国家として平和的に台頭していくよう、日本だけでなく多くの国々で促していくためにも、アメリカがアジアを重視する『リバランス政策』を進め日米同盟を強化していくことが重要だ。

 来週のオバマ大統領との首脳会談で、アジア・太平洋地域の平和と繁栄、安定に貢献する日米同盟を強調したい。

 (新しい国立追悼施設設置に関して)靖国神社が戦没者の追悼の中心的な施設になっていることは事実で、国が別の場所に作って、それで済むというものではないし、簡単なことではない」――

 この最後の新国立追悼施設設置に関しての発言は、他の記事を見ると、中国が靖国神社参拝に反発していることを受けたものとなっている。

 「リバランス政策」の意味は、「コトバンク」の解説を借りると、「再均衡の意で、米国がこれ までの世界戦略を見直して、その重心をアジア・太平洋地域に移そうとする軍事・外交上の政策のこと」となっている。

 「中国が責任ある国家として平和的に台頭していくよう」圧力をかけるためには「日米同盟を強化していくことが重要だ」としている。

 対中“平和的台頭”圧力発動に日米同盟強化の力を借りるのは結構だが、安倍晋三自身は一国のリーダーとしてこれまでに中国の“平和的台頭”促進に向けてどのような圧力を心がけてきたのだろうか。

 確かに何十回となく外国を訪問し、何十回となく首脳会談を行い、その回数を言い立て、誇る程にも諸外国を回って、自由、民主主義、基本的人権、法の支配等を普遍的価値として共有する国家との関係強化を図る価値観外交を展開してきたが、このことに焦って中国の方から日本に接近してきたという事実もないし、元々それらの価値観を共有していて価値観に関わる意思疎通の障害が存在しないがゆえに容易に可能とした中国を除いた対諸外国外交であり、中国の“平和的台頭”促進という点でも、対中“平和的台頭”圧力という点でも、何ら役に立っていない無力な安倍外交でしかなかった。

 また、中国の“平和的台頭”促進、あるいは対中“平和的台頭”圧力を有効たらしめるためには価値観外交の一角を占める中国の人権政策に特に物申して、その変更を促していくことが重要になるはずだが、安倍晋三は直接的には抗議の声や批判の声を上げたことはないのだから、自分ではしていないことをアメリカや他の国に期待すること自体が無責任なお門違いと言わざるを得ない。

 一度ブログに取り上げたが、2013年2月1日参議院本会議での代表質問で、ノーベル平和賞の中国人権活動家劉暁波氏の中国当局による拘束に関してみんなの党水野賢一議員から、劉暁波氏の釈放を求めるのかと問われて、次のようの答弁している。

 安倍晋三「中国の民主化活動家を巡る人権状況や国際社会に於ける普遍的価値である人権及び基本的自由が中国に於いても保障されることが重要であります。

 劉暁波氏についても、そうした人権及び基本的自由は認められるべきであり、釈放されることは望ましいと、考えられます。

 このような観点から、これまでも政府間の対話などの機会を捉えて、民主化活動家についての我が国の懸念を中国側に伝えてきております」――

 しかし自身は国内向けに釈放の希望を述べただけで、中国に対しては一度たりとも直接的に声を上げて釈放を求めなかったし、このことは他の人権活動家に対する中国当局の言論の自由や思想・信条の自由を認めない弾圧、あるいは不法な暴力的取り扱いに一度も異議申立ての声を上げていない。

 対して対中“平和的台頭”圧力発動の協力関係を求めているアメリカに関してはオバマ大統領が中国の人権政策に直接抗議の声を上げているし、今年2月には中国の宗教政策に関しても抗議の演説をワシントン市内で行っている。

 オバマ大統領「世界には、宗教の自由が脅威にさらされているところがある。この中には政府が、宗教を理由にした差別や暴力に関わっているところもある。

 中国の指導者との会談では、国の発展は、キリスト教徒やチベットの仏教徒、それに、ウイグルのイスラム教徒の普遍的な権利が擁護されるかどうかにかかっていると力説している」(NHK NEWS WEB)――

 同じ2月にアメリカ国務省は各国の人権状況を纏めた「2013年版米国務省人権報告書」を発表、中国政府のインターネット監視強化や対汚職抗議弾圧の動きや憲法に基づき人権擁護などを訴える「新公民運動」の活動家29人の逮捕、その他の人権弾圧の拡大を批判している。

 勿論中国はこのような反応に反発しているが、一度も日中首脳会談を実現させることのできない日本と違って、中国批判後もオバマ大統領は習近平主席と3月24日にオランダのハーグで首脳会談を行っている。

 人権・人道問題に国境はない。如何なる国の国民であろうと、人権・人道問題で平等でなければならない。だからこそ、普遍的価値と位置づけているはずだ。

 しかも3月10日から北京を訪れていたオバマ大統領のミシェル夫人は3月22日に北京大学で講演を行い、中国の人権政策に物申している。
 
 ミシェル夫人「国家は、市民が自由に声を上げ意見を述べることができるとき、より強力になり繁栄する。表現の自由と信仰の自由、そして情報への自由なアクセスは、すべての人類の権利だ」(NHK NEWS WEB)――

 中国に於ける民主主義をゆくゆくは社会の指導層を占めることになる次の世代に期待したのだろう。

 だが、民主主義への歩みはわずかに見えるものの、次世代の多くがいざ指導層に所属すると、従来の価値観に馴れ合い、従属していく。

 安倍晋三は自らは中国の人権政策に対して対中“平和的台頭”の圧力を意図した、あるいは中国の“平和的台頭”促進を狙った抗議の声を一度も上げずに、それらの働きを他の国々や日米同盟に期待した。お門違いはお門違いであっても、お門違いの丸投げとしか言いようがない。

 最後に靖国神社に代わる新国立追悼施設設置に関わる否定的発言について一言。小泉内閣の2005年、2006年当時の主だった政治家の発言を見てみる。当時小泉首相の靖国参拝に中国は抗議、激しい反日デモが巻き起こった。

 安倍官房長官「政府が検討している新たな戦没者追悼施設については、国民世論の動向を見つつ、諸般の状況を見ながら、検討していきたい。靖国神社を代替する概念で検討しているわけではない」

 靖国神社は靖国神社として残しておくと言っている。いわば、その価値を変えるつもりもないし、変わるわけでもないと。

 以下、同じ趣旨の発言となっている。

 小泉首相「靖国神社に代わる施設と誤解されている面もある。どのような施設が仮に建設されるにしても、靖国神社は存在しているし、靖国神社がなくなるもんじゃない」
 
 片山自民党参院幹事長「(小泉首相の「靖国に代わる施設ではない」発言に対して)国のために亡くなった方を祀るのは靖国神社だけという一種のコンセンサスがある。(新たな追悼施設は)国民が受け入れるとは思えない」

 麻生総務相「(戦没者は)靖国で会おうという前提で命を亡くしている。追悼施設をつくることは、靖国をなくすこととは一緒ではないのではないか」

 では、戦没者遺族を代表させて一言。

 遺族「靖国の英霊の殆どは、万一不幸にも戦死を遂げた場合、靖国で永久に祀られるとの言わば国家との約束を信じて戦地に赴いたのである。この英霊との約束を守るのか国家の義務である」

 天皇陛下のため・お国のために戦って花と散って靖国に英霊として祀られることを対天皇・対日本国家との約束事として戦場に赴いた兵士たちの靖国の精神は不滅であり、靖国の価値観は不変だとし、それらの不滅性・不変性を遺族やその他の参拝者自身が体現しているとしている。

 だが、靖国神社に関わるこのような精神と価値観は明治維新から昭和の終戦までの国家体制(=国体)を基礎に形成された精神と価値観であって、その精神と価値観を受け継ぐということは戦後の日本人が戦前の国家体制(=国体)を、少なくとも精神的な面で受け継いでいることを意味する。

 ここに安倍晋三が戦前の国家体制を肯定する歴史修正主義者と批判される所以がある。安倍晋三が見せている戦前の天皇制への郷愁、侵略戦争否定等々を裏打ちとして成り立たせている靖国の不滅性・不変性なのである。

 このような意味に於いてこそ、「靖国神社が戦没者の追悼の中心的な施設になっている」のであって、戦後日本の価値観・精神に基づいた、政治家たち・日本人たちの靖国神社絶対視ではないことを理解しなければならない。

 要するに戦後の日本国家体制を戦前の国家体制(=国体)で表現したい欲求を抱えているということである。

 当然ここには時代錯誤の力学が働いていることになるが、戦後日本国家の優秀性を戦後日本国家の存在性で表現したい欲望を抑えることができないでいる。

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中谷元の憲法9条2項「真っ赤なウソ」は「ウソも100回言えば事実となる」の危険な情報操作と洗脳

2014-04-17 08:06:17 | Weblog


 


      《生活の党PR》

      《4月11日(金) 鈴木克昌生活の党代表代行・幹事長定例記者会見》

      『政府のエネルギー基本計画、脱原発の意思表示のチャンスを逃してしまった』

      【質疑要旨】
      ・国会議員歳費削減について  
      ・野党再編について
      ・みんなの党新代表について

 元陸上自衛官、第67代防衛庁長官の中谷元の4月12日宇都宮市内会合での、日本国憲法9条2項が戦力の不保持を謳いながら、実際には自衛隊が存在していることについての発言。

 《戦力不保持「真っ赤なうそ」=自民中谷氏》時事ドットコム/2014/04 /12-20:25)

 中谷元「『陸海空軍その他の戦力』は保有しないというのは、真っ赤なウソだ。

 軍隊がないのが理想だが、現実的にそういった国は消滅する運命にある」

 記事解説。〈最終的には9条改正が望ましいとの認識を示したものとみられるが、憲法を「ウソ」と断じた中谷氏の発言が、世論の反発を招く可能性もある。〉――

 中谷の意図が、〈最終的には9条改正が望ましいとの認識を示したものとみられ〉るとしても、改正の理由が日本国憲法9条2項が国家体制の現実に対して「真っ赤なウソ」としているのだから、問題とならないはずはない。

 自衛隊という軍隊組織が存在するのを無視して、「真っ赤なウソ」となる憲法9条2項を制定したわけではない。憲法が9条2項で戦力の不保持・交戦権の否認を謳っているのを無視して自衛隊という軍隊組織をつくり出したのである。憲法の規定を無視したのだから、自衛隊自体を日本国憲法9条2項から見た場合の「真っ赤なウソ」の存在としなければならない。

 要するに中谷元は9条を改正したいばっかりに「真っ赤なウソ」をついて日本国憲法を貶めた。

 ここで思い出したのはアドルフ・ヒトラーの政権掌握とナチス党政権下のドイツの体制維持に辣腕を発揮したとされているヨーゼフ・ゲッベルス宣伝相の言葉、「ウソも100回言えば事実になる」である。

 但しこの言葉は一つのバリエーションであって、実際に言った言葉は、「もしあなたが十分に大きなウソを頻繁に繰り返せば、人々は最後にはそのウソを信じるだろう」だとインターネット上に紹介されている。

 言葉は違っても、言っている意味は同じである。  

 結果的に人々は信じたウソを基に行動することになる。 

 ゲッベルスはユダヤ人抹殺を含めたナチス政策と戦争遂行の宣伝相としてこのような行動プロセスを人間心理に対する基本の戦術として用いて、自らに課せられた役目を果たしていたはずだ。 

 本質的には情報操作を以てしてウソの事実化による洗脳を作為的構造とした意思表示行為であると要約できる。

 戦前の日本に於いて大日本帝国軍隊は絶対的存在であったから、「十分に大きなウソを頻繁に繰り返」さなくても、たった一回のウソで日本軍がどこそこの海戦で、あるいはどこそこの陸戦でアメリカ軍を壊滅させた、連戦連勝だと、日本国民を簡単に信じさせることができた。

 大日本帝国軍隊は絶対的存在であるとの洗脳が最初からあり、そのことを前提としていたから、たった一回のウソで洗脳の効果を上げたに違いない。

 だから、勝つ戦争ではなかったのに最後までウソの戦勝を信じて、「欲しがりません勝つまでは」と国民の殆どが最後の最後まで、つまり昭和天皇が玉音放送する直前まで洗脳されることになった。

 中谷元の「『陸海空軍その他の戦力』は保有しないというのは、真っ赤なウソだ」の言葉にしても、本人が頭からそうと信じていたとしても、意図しないままに情報操作を用いたウソの事実化による洗脳のプロセスを取ることになる。

 当然、中谷元が実際にはウソであるこのようなことを「頻繁に繰返」すことによって、洗脳を広範囲に広げることも可能となる。

 特に中谷元の発言を無条件に信じる支持者たちの場合、中谷元を絶対的存在としていることになって、簡単に洗脳される条件を最初から備えていることになる。

 例え中谷元がたった1回言っただけであっても、支持者たちが日本国憲法9条を改正したいばっかりに他の有権者に対して改正を納得させようとその正当化理由に中谷元の発言を熱心に繰返した場合、仲谷元と支持者との共同作業による頻繁な反復の形を取った情報操作と洗脳のプロセスを否応もなしに形づくることになる。

 中谷元発言の真の危険はここにあるはずだ。

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新藤義孝は靖国参拝で日本の戦争指導者を含めて全戦死者を「神様」と崇め化さしめた

2014-04-16 07:12:17 | Weblog

  

 総務相の新藤義孝が4月12日、靖国参拝をした。新藤は「硫黄島の戦い」を率いた栗林忠道陸軍大将の孫に当たるという。硫黄島での日本軍戦死者は20129名、アメリカ軍死者は6821名。

 栗林はアメリカ軍兵士6821名の命を奪ったものの、その命に3倍する日本軍兵士20129名もの命を失うこととなった。

 日中戦争の発生から敗戦までの日本人の戦没者数は軍人、軍属などが約230万人、外地の一般邦人が約30万人、空襲などによる国内の戦災死没者が約50万人、合わせて約310万人に上るという。

 対してアメリカ軍は約10万人。

 歴史学者吉田裕(ゆたか)氏による太平洋戦争に於けるアメリカ軍兵士を除いた外国人戦死者は中国では1000万人以上、朝鮮で約20万人、フィリピンで約111万人、台湾で約 3万人、マレーシア・シンガポールで約10万人、その他ベトナム、インドネシアなどを合わせて総計で1900万人以上になると推測しているという。

 そして日本軍人、軍属約230万人のうち6割が肉弾相討ち戦い散った名誉の戦死ではなく、餓死者だったという。軍事的戦闘集団に於ける餓死者というのは悲惨な逆説でしかない。

 さらに国内外の国土の荒廃と貧困と飢えをもたらした。

 新藤の靖国参拝に中国と韓国が反発した。

 4月12日の韓国外務省コメント。

 「本の帝国主義による侵略で苦痛を受けた隣国と国際社会に正面から挑戦する行為だ。日本の政治家の 時代逆行的な言動に、国際社会が批判と懸念の声を上げている中、閣僚が侵略戦争を美化して いる靖国神社を参拝した

 このような時代錯誤的な行為を一も早くやめて、歴史に対する謙虚な反省を基礎に信頼に基づく韓日関係構築へ努力しなければならない」(時事ドットコム

 4月12日の中国外務省の洪磊・副報道局長の談話。

 「日本の現内閣の歴史問題にに対する誤った姿勢を再度映し出した。

 日本が侵略の歴史を深く反省し軍国主義と一線を画することは、戦後の中日関係再建と発展の重要な政治的基礎だ。日本が歴史問題で態度を正し、真剣にアジア の隣国と国際社会の正義の声に向合い、時代の流れに背く一 切の挑発行為をやめるよう求める」(時事ドットコム)――

 日中のこの反発に対して新藤は4月15日の記者会見で逆反発を示した。

 新藤義孝「私的な行為が外交問題になるのは不思議だ。国のために働いた人に尊崇の念を込める行為は、どの国でもなされている。

 神様の前ではどの立場の人も人間でしかない。自分が(公職などの)何かをしているからと言って参拝を制限されることの方がおかしい」(TOKYO Web)――

 自分は靖国の戦没者を戦争して亡くなった「神様」としてお参りした。そのような「神様」の前では自分がどのような公職に就いていようが、一個の人間でしかない。一個の人間として「神様」にお参りしたのだから、どのような批判も受ける謂れはない。

 お参りする側が一個の人間として佇もうが、半端な人間として佇もうが構わないが、日本の戦争の内実からしたら、日本の戦没者を「神様」とすることは許されるだろうか。

 勝ち目がないと分かっていた戦争を勇ましい精神論と日本民族は優秀だとする思い上がりだけでアメリカに仕掛けて、日中戦争の苦戦に懲りずに日本の軍人、軍属約230万人、外地の一般邦人約30万人、空襲などによる国内の戦災死没者約50万人、合わせて約310万人を死なせしめ、軍人、軍属約230万人のうち約6割が餓死者で占められ、中国で1000万人以上、朝鮮で約20万人、フィリピンで約111万人、台湾で約 3万人、マレーシア・シンガポールで約10万人、その他ベトナム、インドネシアなどを合わせて総計1900万人以上の外国の戦死者をもたらし、日本軍人、軍属約230万人のうち6割が肉弾相討ち戦い散った名誉の戦死ではなく、餓死者だった。

 さらに国内外の国土の荒廃と貧困と飢えをもたらした。

 新藤義孝はこのような理不尽と不条理を一切抹消して、日本の戦争指導者を含めた全戦死者を靖国神社の空間で「神様」と崇め化さしめた。

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安倍晋三の鳥インフル発生時のゴルフは関係閣僚と熊本県に責任丸投げを証明する14日菅官房長官記者会見

2014-04-15 07:04:40 | Weblog

 


      《生活の党PR》

      《生活の党機関紙第12号》

      小沢一郎生活の党代表 巻頭提言

      「日本国憲法、国連憲章、日米安全保障条約が三位一体となり日本と世界の平和を実現する」
       第186回国会活動報告 「東日本大震災復興特別区域法改正案」議員立法として野党4党共同で衆議院へ提出
      声明:このたびの消費税率引き上げについて
      
      小沢一郎生活の党代表、日中至誠基金歓迎会挨拶
      生活の党役員、程駐日中国大使と意見交換

      OPINION:大阪府立大学現代システム科学域教授 住友陽文
  
      INFORMATION:地域の活動

      《4月11日村上史好国対委員長代理衆議院本会議質問 》

      『原発に依存しない電力供給体制を確立すべき』

 菅官房長官が4月14日午前記者会見で熊本県多良木町養鶏場鳥インフル感染発生時に安倍晋三がゴルフをしていた問題で、「ゴルフをやめる必要性は全くなかった」と擁護したことをマスコミ報道で知り、首相官邸HPから、記者会見の動画発言を文字に起こしてみた。

 官房長官の記者会見の動画は一般的な動画と比べて非常に聴き取りにくく出来上がっている。その聴きにくさといったなら、聴き取りやすくしたら、 国民が詳しく知ることになって都合が悪いから、わざと聴き取りにくくしているのではないかと疑いたくなる難聴性動画となっている。

 記者会見開始早々、記者たちは鳥インフル問題を取り上げ、続けて安倍晋三のゴルフ問題を取り上げている。記者が会社名を名乗って、聞き取れた場合はその社名を、聞き取れない場合や名乗らなかった場合はそのまま「記者」と記すことにした。

 NHK記者「熊本の養鶏場で鳥インフルが検出されましたけども、現時点で感染の拡大見られないということですが」

 菅官房長官「現地に於いてはそのような報告は受けていません。本日既に8万2千羽を殺処分したという情報を受けております。また、車両消毒のポイント11個所程度設置するなど、関係省庁が連携して対応しております」

 記者「感染経路はどうなっているかということですが、渡り鳥ではないかという見方があるのですが、その辺は」

 菅官房長官「色んなことがありますけど、まだ正式にはそこまでは断定するに至っていないということです」

 朝日記者「昨日の政府対応について、8時半の時点で総理は連絡して情報収集など指示したあと、その後総理はゴルフを継続したことをどのようにお考えですか」

 菅官房長官「先ずですね、昨日の事案ですけども、昨年来中国で発生している人の感染が確認されているH7型鳥インフルエンザではないということ。そして感染リスクがかなり低いH5型の鳥インフルエンザであったこと。さらにこれらの感染状況というのは昨日の一鶏舎にとどまっていたということ。

 ま、そうしたことをですね、総合的に判断して、この上みなさんにですね、無用な不安を与えることがないように関係閣僚がですね、会議を開催して、総理の指示のもとにですね、ま、しっかり対応を行うと、そういうことであります」

 時事通信記者「せめてプレーを中断して、報告を受けることなどできなかったのかと思うが、その点は如何ですか」

 菅官房長官「そこは総理は指示を受けて、秘書官いますから、そういった連携してしっかり 対応しているわけですから、総理が途中でですね、少しでもやめる、こういうことの必要性は全くなかったというふうに思っています。

 国民のみなさんに無用なですね、不安を与えないようにすることも、危機管理の一つじゃないでしょうか」

 記者「ただ昨日の総理のゴルフはプライベートなことではないでしょうか」

 菅官房長官「プライベートかどうかは、あれですね、一部報道に出ていますけども、英国大使がおられますし、その外交的配慮とかそういうことではなくてですね、昨日の事案というのは、総理がこの官邸に来て、会合を開くような、そういう事案ではなかったということです」

 記者「プライベートを優先させたと見られかねないと思いますが」

 菅官房長官「(語気強く)全く当たらないと思います。しっかり対応しておりますから」
 
  ――(中略)――

 時事通信社記者「今回の鳥インフルエンザの検出というのは国民の生命・財産に関わるものではないというふうに判断されたのか」

 菅官房長官「(語気を強め)それは言い過ぎだと思いますよ。ですから、関係閣僚会議を開いて、しっかりと対応してるんじゃないですか。だって、熊本県は、と連携しながら、しっかりと対応するということじゃないでしょうか。

 8日(?簡易検査は4月12日午後、遺伝子検査は4月13日)朝に正式に検出されたわけですから、その前の夜にですね、移動制限というものをやっているわけですから、そこはしっかりと対応していますよ」

 記者「安倍政権はですね、危機管理、徹底すると、国民の生命・財産をというふうにおっしゃって政権に就かれたと思いますが、今回の総理の対応はそういった言葉と全く反することだと思いますが」

 菅官房長官「全く当りません。ないと思います。だって、発生したことについては、全省庁連携しながらですね、対応しているわけですから、そこは全く当たらないと思いますよ」(記者会見あh続くが、ここまで)

 菅官房長官は安倍晋三ゴルフ続行の理由として、発生鳥インフルエンザウイルスが中国発生の人感染確認のH7型ではなく、感染リスク低度のH5型であること、感染状況が一鶏舎にとどまっていたことを挙げて、それらを総合的に判断し、無用な不安を与えることがないように関係閣僚会議を開催して、総理の指示のもとしっかり対応したと言っている。

 しかし今までクスリが効いていたウイルスが変異して薬が効かない状態――薬剤耐性化して、耐性ウイルスとなる例がある。 例えばインフルエンザ薬「タミフル」 を使った子どもの2割で薬の効かない耐性ウイルスが見つかったという、ちょっと古いが2004年に「asahi.com」記事が伝えているし、最近でも薬剤耐性化した耐性黄色ブドウ球菌といった話も聞く。

 当然、H5型が人には感染しにくいと言っても、どこでどう変異して人に感染しやすくなるかは誰も決定的には否定できないのではないかと考えて、インターネットを調べてみた。

 《哺乳類間で伝播しうる鳥インフルエンザウイルス H5N1インフルエンザ特集》(Nature2012年5月2日号 特別翻訳記事)

 これは2012年5月2日号「Nature」を翻訳した記事である。詳しい内容は直接アクセスして貰うとして、次の一文を参考に挙げたいと思う。

 〈高病原性のH5N1亜型鳥インフルエンザウイルスは、16年以上にわたって家禽間を循環しているが、ヒトへの感染例はまれである。しかし、ヒトがH5N1鳥インフルエンザに感染して発症した場合、症状は格段に重篤になるため、ヒトでのH5N1パンデミック(感染症の全国的・世界的な大流行)は公衆衛生に壊滅的な影響を与えるのではないかと危惧されている。

 ただし、ヒト間を高効率で伝播できるH5N1ウイルスはまだ出現しておらず、 そのため、この種のウイルスはヒト間の伝播能力をもともと獲得できないのではないかと考える研究者もいる。そのようななか、日本時間2012年5月3日付でNatureのウェブサイトに発表された論文で、今井正樹たちはH5N1ウイルスが実際にヒトでのパンデミック(感染症の全国的・世界的な大流行)を起こす可能性があることを明らかにした。この研究チームは、鳥インフルエンザウイルスがフェレット(イタチ科の動物)間で呼吸器飛沫(咳やくしゃみで飛び散る飛沫)によって感染できるようになるための複数の変異を突き止めた。フェレット(イタチ科の動物)は、ヒトでのインフルエンザ伝播に関して利用可能な中で最良のモデルである。〉――
 
 人には感染しにくいとされている(あくまでも「しにくい」であって、「しない」という絶対性ではない。)鳥インフルエンザウイルスが変異によって人に感染する危険性の存在を伝えている。

 そしてこのような危険性への想像を裏打ちとした“絶対ない”としない危機管理は耐性菌や変異という言葉を思い出せば、容易に認識し得るはずだ。特に国民の生命・財産を預かる立場の人間はその危機管理上、そういった言葉を思い出さなければならないし、言葉が表現する事態の最悪のケースに少なくとも心構えを持つ責任と想像力を有しなければ、危機管理を任すことができないことになる。

 “絶対ない”としない危機管理は福島第原発事故で「原発安全神話」が物の見事に打ち砕かれて学んだはずだ。

 要するに“絶対ない”としない危機管理から言ったなら、「感染リスクがかなり低いH5型の鳥インフルエンザ」であることを理由にゴルフをしていていいという理由にはならないということである。

 感染状況が一鶏舎のみにとどまっていたこともゴルフ続行の理由としているが、現在のところ渡り鳥犯人説が有力である以上、その鶏舎からの飛び火はなくても、渡り鳥から別の鶏舎に飛び火しない保証はないとする、これまた“絶対ない”としない想像力に立った危機管理は最小限必要となって、必要に応じた危機管理を脳裏に置いていたなら、うかうかとゴルフなどしてはいられなかったはずだ。

 だが、ゴルフを続けた。

 菅官房長官が国民に無用な不安を与えないために首相を除いた関係閣僚のみで会議を開催し、安倍晋三はゴルフを続行したと正当化していることは、今回の鳥インフルエンザ感染は取り立てて大騒ぎすることではないとしていることになるが、中国発生の人感染確認のH7型ではなく、感染リスク低度のH5型であること、感染状況が一鶏舎にとどまっているという情報は少なくとも安倍晋三が秘書官を通じて対応を3点指示した4月13日午前8時前に安倍晋三に伝えられていたことになる。

 だから「ゴルフを続けてください」と。

 であるなら、逆にその情報を国民に発信して、「無用な不安を与えることがないように」取り計らい、安心を与えるべきではなかったか。そのような危機管理こそ必要ではなかったか。

 農林水産物の放射能汚染を疑う風評被害払拭のために安心であることの証明として自らトマトやキュウリやイカを口に頬張るように自ら進んでゴルフをするパフォーマンスを通じて安心を証明するというなら理解はできる。

 だが、そうではなかったということは、ゴルフを続けることができるようにするためにだけ、その情報を安倍晋三特定で発信したことになる。ゴルフを続けても構わない安心感を与えるために。

 「無用な不安を抱かずにゴルフを続けてください」とばかりに。

 これでは国民のための危機管理ではなく、安倍晋三のための危機管理となる。例え関係閣僚が熊本県と連携して「しっかりと対応」したとしても、安心のシグナルは安倍晋三のみに向けて発信された。

 つまり菅官房長官は狡猾にもゴルフ続行は国民に不安を与えない危機管理からの姿勢だったと正当化していることになるが、どれ程の国民が安倍晋三のゴルフ続行から安心情報を得ただろうか。

 そのような解釈不能な間接情報よりも、今回の感染はこれこれこのとおりだからと直接的に説明する直接情報の方が国民は当面の間は素直に反応できたはずだ。

 当面の間と言うのは、いつウイルスが変異して、人に感染しやくすなるかは分からないことだし、渡り鳥が別の鶏舎に感染を飛び火させない保証はないからだ。

 果たして「総理が途中でですね、少しでもやめる、こういうことの必要性は全くなかったというふうに思っています」と言っていることに正当性を与えることができるだろうか。

 国民に向けては安心を与える情報は発信せずに、「国民のみなさんに無用なですね、不安を与えないようにすることも、危機管理の一つじゃないでしょうか」と抜け抜けと言い抜けている。

 その薄汚さは計り知れない。

 菅官房長官は記者のプライベートなゴルフではなかったのかという質問に対して「昨日の事案というのは、総理がこの官邸に来て、会合を開くような、そういう事案ではなかったということです」と答えているが、要するにプライベートなゴルフを優先させてもいい「事案」であったとしていることになる。

 果たしてこの説明に国民のどれ程が素直に納得できるだろうか。11万羽以上のニワトリを殺処分しなければならなかった鶏舎所有者や、移動制限をかけられた鶏舎所有者は納得するだろうか。
 
 安倍晋三が国民の危機管理を預かるトップとしての資格があるかどうか、既に疑わしくなっている。

 記者の「今回の鳥インフルエンザの検出というのは国民の生命・財産に関わるものではないというふうに判断されたのか」という質問に対して、菅官房長官は、それは言い過ぎだと語気を強め、関係閣僚会議開催や熊本県との連携を以ってしっかりと対応していることの証明としたが、「総理がこの官邸に来て、会合を開くような、そういう事案ではなかった」と言っている以上、国民の生命・財産に関わる事案ではないと判断していたことになるだけではなく、記者は危機管理のトップの地位にある安倍晋三のゴルフが今回の鳥インフル感染に対して「国民の生命・財産」の視点で判断した行動だったのかどうかを聞いたのであって、トップが責任を部下に丸投げということもあるのだから、関係閣僚等の下っ端の対応や熊本県との連携をいくら言い立てたとしても、その言い立てのみでで「国民の生命・財産」の視点で判断した行動であることの証明とはならない。

 鳥インフルに感染したニワトリの処理や防疫に緊張感を走らせている熊本県多良木町の緊迫した状況を他処に安倍晋三一人のみが安心情報を得てプライベートでしかないゴルフを安心しながら続けていたことのみを取り上げたとしても、国民の生命・財産を守る危機管理の責任を関係閣僚や熊本県に丸投げした行動そのものだと断定せざるを得ない。

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安倍晋三は鳥インフル発生の事の重大性よりもゴルフをプレーすることを事の重大性とした

2014-04-14 08:03:50 | 政治



 熊本県多良木町の養鶏場で4月11日(2014年)から4月13日にかけて飼育中のニワトリ5万6000羽のうち、約1100羽が大量死し、県が行った遺伝子検査で「H5」型の鳥インフルエンザウイルスが検出されたと、《熊本でH5型鳥インフルエンザウイルス検出》NHK NEWS WEB/2014年4月13日 12時20分)が伝えている。

 記事発信は「4月13日12時20分」

 当初、簡易検査で鳥インフルエンザの陽性反応が出たため、県が詳しい遺伝子検査を行ったところ、10羽のうち2羽から、「H5」型の鳥インフルエンザウイルスが検出されたという。

 県は鳥インフル発生の養鶏場と同じ経営の養鶏場2個所の合わせて11万2000羽のニワトリの処分を決め、午前10時半から処分開始、同2個所の養鶏場それぞれの半径3キロ以内の養鶏場に対してニワトリと卵の移動を禁止、10キロ以内の養鶏場に対してもニワトリと卵の域外への出荷などを禁止する措置を取り、熊本県は職員約1000人を現地に派遣、ニワトリの処分や周辺の合わせて11個所で車両消毒に当たった。

 記事は、〈今年1月にはH5N8型の鳥インフルエンザウイルスが 韓国で食用のアヒルやニワトリから検出され大流行となっています。農林水産省によりますと、感染は先月末までに韓国の28の農場で発生していて、これまでに1100万羽以上が殺処分されています。〉と解説しているが、これは渡り鳥による感染の可能性を予測に入れた解説であろう。

 鳥インフルエンザに詳しい専門家の発言を伝えている。

 大槻公一京都産業大学鳥インフルエンザ研究センター長「韓国でも鳥インフルエンザが大流行していて、いつ国内で感染が広がってもおかしくな い状態が続いていた。ゴールデンウイークが終わる頃までは渡り鳥の移動の時期で、感染がさらに広がる可能性がある。養鶏場や鳥を飼育している施設では、防疫対策の徹底など警戒をしてほしい」――

 国内の鳥インフル感染について、〈鳥インフルエンザの国内の養鶏場での発生は、9つの県で180万羽が処分された平成22年11月から翌年3月にかけての発生以来、およそ3年ぶり〉だと、別の「NHK NEWS WEB」が伝えている。

 韓国で今年1月から3月末までに鳥インフルが猛威を振るい、1100万羽以上が殺処分された。当然、日本も警戒に当たっていたはずだ。農林水産省のHPを調べたら、都道府県に宛てた通知を見つけることができた。

 《韓国における高病原性鳥インフルエンザが強く疑われる事例の発生に伴う畜産関係者等への指導の徹底について》  

 平成26年1月17日
 都道府県畜産主務部長殿
 農林水産省消費・安全局動物衛生課長

 〈本日、韓国家畜衛生当局から、全羅北道高敞(コチャン)郡の種あひる農場において高病原性鳥インフルエンザ(H5N1亜型)の発生が強く疑われる事例が確認された旨の発表がありました。その発生状況は別添のとおりです。

 現在、我が国は北方からの渡り鳥の飛来シーズンにあり、本病ウイルスが我が国に持ち込まれる可能性が高い状況にあります。

 つきましては、「平成25年度における高病原性鳥インフルエンザ等の防疫対策の強化について」(平成25年9月6日付け25消安第2884号農林水産省消費・安全局長通知)を再度御確認いただき、別添の発生状況地図等を適宜御活用の上、全ての家きん農家を含む畜産関係者等に対し、韓国及び近隣諸国における本病の発生状況を確実に周知するとともに、引き続き、緊張感を持って、本病に関する注意喚起及び飼養衛生管理基準の遵守、発生の早期発見・通報等についての指導を徹底していただきますようお願いいたします。〉――

 このような通知を出せば責任を果たしたと言うことにはならないはずだ。都道府県も農水省の通知を各自治体内畜産関係者に通知し直して、それで終わりというわけではなく、常に経過を見守っていたはずだ。

 だが、鳥インフルに感染したニワトリを出した。韓国の今年1月から3月末までの1100万羽以上が殺処分という発生例、2010年11月から翌年3月にかけて180万羽殺処分した日本国内の直近の発生例を前例として考えた場合、事の重大性は中途半端に片付けることはできないはずだ。

 例え今回は既に決定した11万2000羽の殺処分の範囲内で終息させることができたとしても、周辺地域の風評被害による消費減少、消毒態勢の物々しさが与える住民の不安、移動制限による生活上の不便、さらには鳥インフル発生地が遠隔の地の出来事であっても、ニュースによって身近な不安に置き換えられる心理的な密着性等々の事態や現象が回避困難であることも無視できない事の重大性を物語ることになる。

 食品安全委員会は、鳥インフルに感染した鶏肉と感染した鶏が産んだ卵は安全だとしているが、その安全は「」(かぎかっこ)付きの「安全」となっている。安全であることを強調するために「」を付けたのか、予測に過ぎない猶予性を持たせるために「」を付けたのかは、《鳥インフルエンザについて 鶏肉・鶏卵の安全性に関する食品安全委員会の考え方》食品安全委員会/2011年7月1日更新)を読めば一目瞭然とする。 

 〈鶏肉・鶏卵は「安全」と考えます。わが国の現状においては、鶏肉や鶏卵を食べることにより、鳥インフルエンザ(ウイルス)がヒトに感染する可能性は、以下の理由から、ないと考えています

 ・ウイルスがヒトの細胞に入り込むための受容体は鳥の受容体とは異なること
 ・ウイルスは酸に弱く、胃酸で不活化されると考えられること〉――

 あくまでも確定した安全保障ではなく、予測事項となっている。

 当然、政府は一丸となって影響を最小限に抑止する体制を整えなければならない。だが、先頭に立つべき安倍晋三はゴルフを愉しんでいた。

 安倍晋三の4月13日当日の日程を各記事から拾ってみる。

 午前7時20分、安倍晋三山梨県富士河口湖町ゴルフ場「富士桜カントリー倶楽部」到着。
 午前8時秘書官を通じ対応を3点指示。
 午前8時30分、首相官邸内危機管理センターに情報連絡室設置。
 午前11時から官邸で関係閣僚会議開催。
 午後2時44分、安倍晋三「富士桜カントリー倶楽部」発
 午後4時50分、公邸着。

 ゴルフの相手として名前が挙がっているのはヒッチンズ駐日英国大使、日枝久フジテレビ会長。

 午前8時に秘書官を通じて行った3点指示とは、「政府としての情報収集、徹底した防疫措置、国民に対して正確な情報を的確に出す」ことの3点。

 確かに本人が不在であったとしても、指示だけ出しさえすれば、危機管理は機能するだろう。あるいは指示がなくても、首相官邸の誰かが事態発生の情報を把握した時点で、危機管理を機能させるべく動き出すだろう。

 だとしても、その不在は鳥インフル発生の事の重大性よりもヒッチンズ駐日英国大使や日枝久フジテレビ会長とゴルフすることを事の重大性とした結果である。

 安倍晋三は午前7時20分にゴルフ場到着後から午前8時前までの間に鳥インフル発生を知ったことになる。だが、飼育中のニワトリ5万6000羽のうち約1100羽が大量死したのは4月11日から4月13日にかけてのことで、4月11日中には既に始まっていたことと農水省が韓国から鳥インフル発生の知らせを受けて1月17日に各自治体に「注意喚起及び飼養衛生管理基準の遵守、発生の早期発見・通報等」の防疫対策強化の通知を出している手前、安倍晋三への発生の報告が、少なくとも発生の可能性を伝える報告が遅過ぎたということはないだろうか。

 ニワトリが原因不明で次々に死んでいく状況にあったとき、その時点で鳥インフル発生の可能性を疑うのが危機管理であろう。4月11日から間に4月12日の1日を置き、4月13日の午前8時に秘書官を通じ対応を3点指示した。

 そして首相官邸は指示を受けてから、きっかり30分後の午前8時30分に首相官邸危機管理センターに情報連絡室を設置した。なぜ指示を受けて直ちにではなく、30分待ち、午前8時30分きっちりの時間に設置しなければならなかったのだろうか。

 しかも首相官邸で関係閣僚会議を開催したのは午前8時30分情報連絡室設置から2時間30分経過後の午前11時からと、これまたきっちりの時間となっている。

 関係閣僚の全員集合に2時間30分必要としたという理由は危機管理上、通用しない。例え全員が雁首を揃えることになったとしても、鳥インフルに詳しい知識・情報を持つ関係役人に必要知識・必要情報を尋ねなければ、会議は満足に機能しないはずだからだ。

 4月13日は日曜日で、各省庁に役人が登庁していなかったという弁解も理由とはならない。内閣に置かれ内閣官房長官を長とする内閣官房に例え日曜日であっても、各種大自然災害が曜日を選ばない以上、各危機管理担当の役人は内閣官房に詰めていなければならないからだ。

 《内閣官房、内閣府の現在/立法と調査》(内閣委員会調査室 五十嵐吉郎/2013.12)

〈(3)定員、予算

図表3は内閣官房の定員の推移である。平成25年度の定員は808人であり、業務の増大に伴い中央省庁等改革の際の平成12年度の377人から2倍以上に増加している。その約7割が他省庁等からの出向者とされる。併任者数は445人から1,645 人へと4倍近く増加しており、その約半数の804人が内閣官房に常駐している。つまり、内閣官房は、定員と併任者を含め2,453人、常駐併任者だけを含めても1,612人という大所帯なのである。

なお、第185回国会で審議される安全保障会議設置法等の一部改正案が成立すれば、「国家安全保障局」は発足当初60人程度の人員が想定されており、また、国家公務員法等の一部改正案では「内閣人事局」の人員規模は100人を超えるとされる。さらに特定秘密の保護に関する法律案でも関係の人員増が必要になろう。〉――

 平成25年度の定員808人+多省庁出向併任者1,645人=2,453人もの役人が内閣官房には詰めている。大災害が曜日を選ばない以上、日曜日だろうと祭日だろうと各災害に関係する役人が何人かずつ交代で詰めていなければ、いつ大災害が発生しても対応可能とする危機管理の機能性に反することになる。

 要するに関係大臣の出席を待たずに随時関係閣僚会議を開催して、いつ大臣が雁首を揃えてもいいように必要情報の準備と新たな情報の収集を始める臨機応変の対応は必要なはずだ。

 だが、役人が日曜日であろうと祭日であろうと内閣官房に詰めているはずなのに情報連絡室設置が安倍晋三の午前8時の3点指示から遅れること30分後、午前8時30分。関係閣僚会議開催が情報連絡室設置の午前8時から遅れること2時間半後の午前11時から。

 しかも鳥インフル発生の事の重大性よりもゴルフをプレーすることを事の重大性としたために安倍晋三は関係閣僚会議を欠席することになった。

 果して「国民の生命・財産を預かっている」と言うことができるのだろうか。

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安倍晋三の「桜を見る会」自作の短歌が虚しくなる、日本の国って何なのだろう

2014-04-13 08:25:01 | Weblog

 

 安倍晋三が4月12日、新宿御苑で自身主催の「桜を見る会」を主催、各界招待の1万400人が集まったというから、頭数だけは盛大な様相を呈したのだろう。記事――《「給料のあがりし春は八重桜」桜を見る会で首相》NHK NEWS WEB/2014年4月12日 12時13分)から見てみる。

 遅咲きの八重桜が見頃を迎えていたというから、花自体は大層華やかだったに違いない。但し人間が大勢集まれば、イコール華やかだと言うことはできない。よく若い女性が着物姿で大勢集まると、決まって「華やか」という表現になるが、あくまでも着物の色とりどりが華やかであって、その気分に人間も染まるだろうが、人間自体が華やかであるわけではない。

 人間自体が華やかなら、色とりどりの着物の力を借りなくても、華やかさを演出できるはずだ。単に華やかな気分を一時的に纏ったに過ぎない。

 安倍晋三「去年の桜を見る会は、既に八重桜が散ったあとだったが、きょうは満開だ。段々、段々雰囲気がよくなってきたということだ」

 では、一句詠みますとでもでも言ったのだろう。

  安倍晋三「『給料のあがりし春は八重桜』

 多くの経営者に今年4月から給料を上げて欲しいとお願いし、近年まれに見る賃上げになった。これをもっともっと全国津々浦々に広げていきたい」――

 「近年まれに見る賃上げになった」と言っているが、確かに一部企業のベースアップを伴った賃上げは「近年まれに見る」現象と言うことができるが、金額そのものは「近年まれに見る」という表現がふさわしいかどうか意見が分かれるに違いない。

 しかも現時点では全国的に広がっている状況ということではないのだから、「近年まれに見る」の表現は大仰に過ぎる。

 私は文学的才能がないから、正しい意味の取り方かどうか分からないが、「給料のあがりし春は八重桜」の句の意味は、今年の春闘で賃上げが決まったことは咲き誇る八重桜のように目出度く、華やかな気分になれるということだと思う。

 安倍晋三は「給料のあがりし春は八重桜」と一句詠んだあとに賃上げを「もっともっと全国津々浦々に広げていきたい」と言葉をつなげた。

 だとすると、一句を大筒花火のように華々しく打ち上げたものの、句の気分に浸ることができるのはほんの一部の人間に限られるということになる。一部の人間に限られていながら、「給料のあがりし春は八重桜」と自慢気に詠むのは矛盾する。

 合理的判断能力を欠いているからこそ読むことのできる安倍晋三の才能ということなのだろう。

 記事が配信された昨日の夕方、録画しておいた4月11日放送のあさひテレビ 「世界の村で発見!こんなところに日本人」を見た。

 何日前かの当ブログで、医療費の自己負担分や私的な健康保険の負担分等の私的負担を含めた国民負担率は消費税22%、食料品消費税17%のフィンランドと同程度でありながら、国のサービスは日本の方が遥かに劣るのは、日本の社会保障が政府によるカネ食い虫になっている、つまりムダが多いからではないかといったことを書いたが、上記録画を見た感想は、日本の国って何なのだろうという疑問であった。

 番組は世界の村で生き、活躍する日本人をタレントや俳優が苦労しながら訪ねていく内容で、今回はイタリアは首都ローマから北東へ395kmの距離にあるヴェネト州(州都ヴェネツィア)のチーズ産地アジアゴに在住し、そこにある天文台に30歳代から勤めて、40歳でパドヴァ大学助教授に就任、現在も同天文台で星の研究をしている飯島孝さん家族を訪ねる旅となっていた。

 飯島孝さん65歳。現在の給料が日本円換算で35万。一見少ないように思えたが、訪ねたタレントが日本人の夫人と買い物に行き、食料品が日本の約半分だと分かって、納得がいった。

 テレビの解説も、アジアゴでは食料品の物価は日本の半額ほどだと言っていた。

 イタリアは消費税率が20%。食料品が10%だという。食料品に限ると、日本の現在の8%と殆ど変わらない。食料品が約半分だとすると、その分可処分所得が増えて、35万円にプラスされることになる。

 飯島孝さん宅は確か中学生の女の子と小学生の女の子、それに夫人の四人家族で、夫人が1か月の食料費は2~3万だと言っていた。日本の平均的な食糧費はいくらか、調べてみなければならない。

 《家計調査報告(家計収支編)―平成25年(2013年)平均速報結果の概況》総務省/2014年2月18日公表) 
 
 2013年世帯主の年齢階級別家計支出(二人以上の世帯)

 平均世帯人員3.5人 
 消費支出 全体平均290454円
 食糧費   平均68604円 

 消費支出全体に占める食糧費は約24%、4分の1に近い金額となる。イタリアのアジアゴでの家族4人世帯の1カ月の食糧費を3万としても、4万円近い可処分所得を得ていることになる。1カ月の給料35万円+4万円=39万円の給料という計算となる。

 但しアジアゴがイタリアの平均を示しているとは限らない。特に物価が安い地方かもしれない。《家計消費の国際比較》社会実情データ図録/2013年8月11・12日更新)から、日本とイタリアの生活経費の違いを見てみる。   

 2010年の「家計消費支出の国際比較」となっているが、ページそのものは「2013年8月11・12日更新」となっているから、この日以前の状況に応じているか、あるいは少なくとも大差ないとしているはずだ。 

 全体の家計消費支出額を100として、各支出項目のパーセントを出しているが、主なところだけを拾って見る

         日本     イタリア

 食料品   14.1%    14.4%
 住居・光熱  24.9%    24.7%
 保険・医療    4.6%      3.2%
 教育       2.1%      1.0%

 食料品に関してはイタリアの方が日本よりも支出額が0.3%程度多いが、ほぼ同程度で、日本よりも食料品が安いと計算した場合、その分贅沢していると見ることができる。

 特に「保険・医療」と「教育」の項目でイタリアは日本よりも支出割合を少なく済ますことができている。

 日本よりもイタリアの食料品が安いと計算する根拠はベネチアを旅行し、ローマにも立ち寄って、ローマでも買い物をした日本人のブログ記事――《『【イタリア】9・10日目 帰国の途へ&お土産大公開』 [ベネチア]のブログ・旅行記 by 花琳さん - フォートラベル》(旅行時期 2013/05/04 - 2013/05/05 (2013/05/18投稿))の記述が証明してくれる。 

 〈イタリアは食品関係の物価がとーっても安かったです。

 食料品の買出しのためだけにまたイタリアに行きたい!〉――

 《世界生計費指数ランキング 2009-2014》2009-2014 Expatistan.com )を見ても、日本はイタリアよりも全体的に物価が高いことになる。 

 20位 東京    生計費指数205

 42位 ローマ   生計費指数173
 43位 ジェノバ  生計費指数173
 49位 ミラノ    生計費指数170
 
 生計費指数の数値が高い程、生活費が高いということになるから、イタリアが消費税率20%・食料品税率10%でありながら、その代表的な都市は生活費の点で東京をかなりの差で離していることになる。

 特に食料品が安いことは高価な物を買う機会の少ない低所得層にとっては満開の「八重桜」に譬え得る華やかな福音となる。だが、その福音に日本国民は恵まれていない。

 その上日本よりも「保険・医療費」と「教育費」の支出が少なく済む福音にイタリアは恵まれている。

 一体どうなっているのかと首を傾げたくなる国家経営実施の政治家集団がひしめく日本という国って何なのだろうか。何を意味する国なのだろうか。

 賃金が上がったからといって、「給料のあがりし春は八重桜」などと自慢気に一句詠んでいられる状況にあると思っているのだろうか。

 ところが詠んだということは、やはり合理的な判断力の欠如が読ませた一句としか言い様がない。 

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遍路休憩所朝鮮人排斥の貼り紙に見る民族や国籍から自律できない自己民族優越性病に罹った日本人たち

2014-04-12 05:37:55 | Weblog



      《生活の党PR》

      《4月10日衆議院本会議総務大臣「地方自治法一部改正案」趣旨説明に対する鈴木克昌生活の党代表代行・幹事長質問 》

      『人口減少社会に対応するには地方行政における発想の転換が必要』  
     
      《4月12日(土) 鈴木克昌生活の党代表代行・幹事長『NHKスペシャル』出演 》

      日 時: 4/12(土)21:00~22:29

      内 容:『いま集団的自衛権を考える』  

      ○日本を取り巻く安全保障環境について
      ○集団的自衛権の行使容認は必要か否か
      ○集団的自衛権をめぐる憲法解釈の変更の是非は
      ○今後の議論の焦点について等
  
      ※番組の詳細はこちらから     「NHKスペシャル」番組ウエブページ     

      《4月13日(日) 村上史好国会対策委員長代理『日曜討論』生出演 》

    ・番組名:NHK『日曜討論』(生放送)
    ・日 時:平成26年4月13日(日)9:00~10:00 

    ・内 容:
     ○防衛装備移転三原則について
     ○集団的自衛権について等     

     ☆《村上ふみよし オフィシャルウェブサイト》      

 朝鮮人に対するヘイトスピーチも然り。人種や民族の違い・国籍の違いで一律的・図式的に優劣を決め、差別する人間は自己の優越性を自己が所属する民族の名前や国家の名前を借りなければ証明できない人間たちである。

 理由は、自己が所属する民族や国籍から一個の人間として自律できていないからに他ならない。自律できていないために一個の人間同士として向き合うことができず、民族や国籍で向き合い、そこに一律的は遊説・図式的な優劣を置く。

 民族として日本人が優秀なのではない。優秀な日本人もいれば、優秀ではない日本人も存在する。日本人のモノづくりの技術は優秀ではあっても、技術的優秀性の証明でしかなく、人間的優秀性と必ずしも一致するわけではない。

 このことは一頃評判となった食品偽装問題を例に挙げれば、十分過ぎる程理解できる。店の名前を社会的ステータスとしていた会社の殆どと言っていい程の多くが安価な食材を高級食材であるかのように見せかけ、偽装した料理を出して利益を上げていた。

 何という浅ましだだろうか。

 この浅ましさは何よりも民族的出自と個々の人間性とは全く以って似て非なるものであることを教えている。

 1カ月程前から徳島、愛媛、香川3県の四国遍路路休憩所に朝鮮人排斥を訴える貼り紙が貼られていて、現在までに10個所を超える数が確認されているらしい。

 遍路とは誰かに対する供養や謝罪、自身のための精神修養や、あるいは自己覚醒とかの何らかの精神の旅を目的としていて、それらの目的を真に叶えるためには自己を一個の裸の存在としなければならない、極めて自律的な行為であるはずである。

 だが、そこに民族や国籍を持ち出して、それを基準に自己を優越的位置に立たせ、他者を劣等的位置に貶める。自己の精神に民族や国籍を常に鎧(よろ)わせて自縄自縛の状態に陥り、そこから自律できずにいる。

 民族や国籍を自らの道徳法則とする。

 【自律】

 1.他からの支配や助力を受けず、自分の行動を自分の立てた規律に従って正しく規制すること。 「学問の-性」
 2.〘哲〙 〔ドイツ Autonomie〕 カント倫理学の中心概念。自己の欲望や他者の命令に依存せず、自らの意志で客観的な道徳法則を立ててこれに従うこと。

 次の記事に貼り紙の画像が記載されている。《差別の貼り紙:愛媛の寺でも 遍路、計12カ所に》毎日jp/2014年04月11日 00時57分)  

 〈四国遍路の休憩所などに朝鮮人排斥を訴える紙が貼られていた問題で、貼り紙が愛媛県内の寺でも見つかっていたことが10日、毎日新聞の取材で分かった。各県庁などの集計で貼り紙の確認が相次いでおり、愛媛、徳島、香川の3県で計12カ所にのぼっている。

 愛媛県四国中央市の六十五番札所・三角寺では先月、本堂と駐車場に1枚ずつ、紙が貼られており、寺の関係者がはがした。同寺は「遍路道は外国の人もたくさん来るところ。韓国の人が見たらどんな気持ちになるだろうと思ってはがした」と語った。同県西予市の休憩所に置かれたノートにも、貼り紙と同趣旨の書き込みがあった。【渕脇直樹、高谷均】〉――

 画像から次の文言を読み取ることができる。

 〈<お遍路さんへ>

 大切な遍路道です!

 朝鮮人の手から

 守りましょう!

◯最近、あつかましい朝鮮人たちが、

 気持ち悪いシールを

 我がもの顔で 張り回っています。

◯神聖な遍路道に対する

 冒涜です!

 見つけ次第、はがしましょう!〉――

 遍路道から朝鮮人を排斥しようとする、日本人を対置させた心の働きは自民族を優越的位置に立たせて遍路道を日本人の所有物だとする極めて狭隘な民族的排他主義・民族的独善主義によって成り立つ。

 この姿はまた、民族や国家・国籍から自律できていない、人間として幼い存在であることを曝している図柄だと言うこともできる。

 HP「行動する保守運動のカレンダー全国版」の「近畿地区スケジュール」に次のような朝鮮人に対するヘイトスピーチが書き込まれている。  
 
 〈私個人は、朝鮮人はガス室で処分すれば良いと考えていますが、ガス室を建設し、そこで職員が朝鮮人を処分するにも、建設費や人件費等が必要です。

 朝鮮人が朝鮮半島に帰る事に何の制限もなく、いつでも自由に朝鮮人は朝鮮半島に帰れます。
 
 ゴミはゴミ箱へ、うんこは便所へ、当たり前の事です。

 それと同様に朝鮮人は朝鮮半島へ、と訴えます。〉――

 自分が所属する民族や国家・国籍を常に背中に張り付かせて、そこからの目線でしか物事を考えることのできない自律できていない存在だとは気づいてもいない。日本人であることによって、自己を優越的位置に置いて誇ることができる。日本国籍であることによって自己の優越性の証明とし、誇ることができる。

 民族や国籍を問わずにそれぞれが一個の人間同士として向き合うことのできる人間としての自律的な成長は望むべくもなく、絶望的だということか。

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安倍晋三・高村正彦の砂川事件最高裁判決を根拠とした現憲法集団的自衛権容認の読み解きを否定する

2014-04-11 07:05:02 | Weblog





      《生活の党PR》

        《4月7日(月)小沢一郎生活の党代表定例の記者会見要旨》

        『野党が協力する大きな流れは今後も起こりうる』

        【質疑要旨】
        ・日本維新の会と結いの党会派合流について
        ・自衛権について、どこまでを周辺事態とするのか
        ・みんなの党渡辺代表辞任表明について       

 自民党の高村副総裁が砂川事件の最高裁判決を持ち出して、判決理由の中で必要最小限度の範囲に限定すれば、今の憲法下でも集団的自衛権の行使ができるとしているとして、最高裁の判決であることを根拠に集団的自衛権行使容認論を打ち出している。

 高村正彦「最高裁判所は『平和と安全、国の存立を全うするための自衛権の行使は、当然できる』と言っている」(NHK NEWS WEB)――

 要するに憲法解釈変更も必要でないし、現在の憲法のままで行使できると言っていることになる。

 砂川事件とは、「コトバンク」が次のように解説している。

〈日米安保条約および米駐留軍の合憲性が争われた事件。1957年7月8日,東京調達局は,米駐留軍が使用する東京都下砂川町の基地拡張のために測量を強行したが,これを阻止しようとする基地拡張反対派のデモ隊の一部が米軍基地内に立ち入り,刑事特別法条違反で起訴された。この訴訟で,被告人らは,安保条約およびそれに基づく米国軍隊の駐留が憲法前文および9条に違反すると主張したので,一大憲法訴訟となった。第一審の東京地方裁判所は,1959年3月30日,安保条約は違憲で,被告人らを無罪とするという判決を下した(いわゆる伊達判決)。 〉――

 最高裁は1959年12月16日、原判決を破棄し、地裁に差し戻しし、地裁は罰金2000円の有罪判決の言い渡し、この判決につき上告を受けた最高裁が1963年12月7日、上告棄却を決定、この有罪判決が確定した。

 安倍晋三も4月8日のBSフジの番組で高村の主張に追随している。

 安倍晋三「(最高裁判決は)集団的自衛権を否定していないのは、はっきりしている」(毎日jp

 1959年の最高裁判決である。では、なぜ今まで集団的自衛権行使の実現にもたついていたのだろうか。

 砂川事件は私が高校生の頃の出来事で、過激派が起こした事件程度の記憶しかなく、最高裁判決の何たるかについては無知であった。この高村正彦の砂川事件最高裁判決を根拠とした集団的自衛権現憲法行使容認論が果たして正しいのかどうか、つまりそのように読み取ることができるのかどうか、インナーネットから判決を見つけ出して、読んでみた。

 《砂川事件最高裁大法廷判決》  

 自衛権に言及個所のみを引用してみる。重要と思われる個所には修飾を施し、節が長い個所は読みやすいように改行を行った。 

 1.先ず憲法9条2項前段の規定の意義につき判断する。そもそも憲法9条は、わが国が敗戦の結果、ポツダム宣言を受諾したことに伴い、日本国民が過去におけるわが国の誤って犯すに至った軍国主義的行動を反省し、政府の行為によって再び戦争の惨禍が起ることのないようにすることを決意し、深く恒久の平和を念願して制定したものであって、前文および98条2項の国際協調の精神と相まって、わが憲法の特色である平和主義を具体化した規定である。

すなわち、9条1項においては「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求」することを宣言し、 また「国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」と規定 し、さらに同条2項においては、「前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力はこれを保持しない。国の交戦権は、これを認めない」と規定した。

かくのごとく、同条は、同条にいわゆる戦争を放棄し、いわゆる戦力の保持を禁止しているのであるが、しかしもちろんこれによりわが国が主権国として持つ固有の自衛権は何ら否定されたものではなく、わが憲法の平和主義は決して無防備、無抵抗を定めたものではないのである。憲法前文にも明らかなように、われら日本国民は、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようとつとめている 国際社会において、名誉ある地位を占めることを願い、全世界の国民と共にひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認するのである。

しからば、わが国が、自国の平和と安全を維持しその存立を全うするために必要な自衛のための措置をとりうることは、国家固有の権能の行使として当然のことといわなければならない。

すなわち、われら日本国民は、憲法9条2項により、同条項にいわゆる戦力は保持しないけれども、これによって生ずるわが国の防衛力の不足は、これを憲法前文にいわゆる平和を愛好する諸国民の公正と信義に信頼することによって補ない、もってわれらの安全と生存を保持しようと決意したのである。

そしてそれは、必ずしも原判決のいうように、国際連合の機関である安全保障理事会等の執る軍事的安全措置等に限定されたものではな く、わが国の平和と安全を維持するための安全保障であれば、その目的を達するにふさわしい方式又は手段である限り、国際情勢の実情に即応して適当と認められるものを選ぶことができることはもとよりであって、憲法9条は、わが国がその平和と安全を維持するために他国に安全保障を求めることを、何ら禁ずるものではないのである。

 そこで、右のような憲法9条の趣旨に即して同条2項の法意を考えてみるに、同条項において戦力の不保持を規定したのは、わが国がいわゆる戦力を保持し、自らその主体となってこれに指揮権、管理権を行使することにより、同条1項において永久に放棄することを定めたいわゆる侵略戦争を引き起こすがごときことのないようにするためであると解するを相当とする。従って同条2項がいわゆる自衛のための戦力の保持をも禁じたものであるか否かは別として、同条項がその保持を禁止した戦力とは、わが国がその主体となってこれに指揮権、管理権を行使し得る戦力をいうものであり、結局わが国自体の戦力を指し、外国の軍隊は、たとえそれがわが国に駐留する としても、ここにいう戦力には該当しないと解すべきである。 

 以上の判決から、文飾を施した個所を纏めてみる。

 日本国憲法第9条は、〈わが国が主権国として持つ固有の自衛権は何ら否定されたものではなく、わが憲法の平和主義は決して無防備、無抵抗を定めたものではないのである。

 〈わが国が、自国の平和と安全を維持しその存立を全うするために必要な自衛のための措置をとりうることは、国家固有の権能の行使として当然のことといわなければな らない。

 〈憲法9条は、わが国がその平和と安全を維持するために他国に安全保障を求めることを、何ら禁ずるものではないのである。

 〈憲法9条は、わが国がその平和と安全を維持するために他国に安全保障を求めることを、何ら禁ずるものではないのである。

 〈憲法9条の趣旨に即して同条2項の法意を考えてみるに、同条項において戦力の不保持を規定したのは、わが国がいわゆる戦力を保持 し、自らその主体となってこれに指揮権、管理権を行使することにより、同条1項において永久に放棄することを定めたいわゆる 侵略戦争を引き起こすがごときことのないようにするためであると解するを相当とする。

 〈同条項(9条2項)がその保持を禁止した戦力とは、わが国がその主体となってこれに指揮権、管理権を行使し得る戦力をいうものであり、結局わが国自体の戦力を指し、外国の軍隊は、たとえそれがわが国に駐留するとしても、ここにいう戦力には該当しないと解すべきである。〉――

 確かにこの最高裁判決は自衛権は否定していない。憲法9条に違反するものではないとしている。〈国家固有の権能の行使〉だと認めている。

 さらに、〈憲法9条は、わが国がその平和と安全を維持するために他国に安全保障を求めることを、何ら禁ずるものではないのである。〉として、日米安全保障条約とアメリカ軍の駐留を日本国憲法に違反していないと位置づけている。

 但し、9条2項が〈その保持を禁止した戦力とは、わが国がその主体となってこれに指揮権、管理権を行使し得る戦力をいうものであり、結局わが国自体の戦力を指し、外国の軍隊は、たとえそれがわが国に駐留する としても、ここにいう戦力には該当しないと解すべきである。〉として、9条第2項が否定している「戦力」とは、日本が〈その主体となってこれに指揮権、管理権を行使し得る戦力〉のことを言い、日本駐留の外国軍隊は9条第2項否定の「戦力」には相当しないとしている。

 この判断はこの少し前に言及している、〈憲法9条の趣旨に即して同条2項の法意を考えてみるに、同条項において戦力の不保持を規定したのは、わが国がいわゆる戦力を保持し、自らその主体となってこれに指揮権、管理権を行使することにより、同条1項において永久に放棄することを定めたいわゆる侵略戦争を引き起こすがごときことのないようにするためであると解するを相当とする。〉としていることと対応した判断であろう。

 9条第2項は二度と侵略戦争を侵さないように日本自らが主体となって指揮権、管理権を行使する戦力の不保持を謳っているのだとした。

 当然、9条第1項の戦争の放棄と武力の不行使は日本自らが主体となって指揮権、管理権を行使する戦力を駆使した戦争遂行と武力の行使を禁じた条文ということになる。

 だとすると、9条第2項否定の「戦力」には相当しない日本駐留の外国軍隊が主体となって指揮権、管理権を行使する戦力を駆使した戦争遂行と武力の行使は日本国憲法が否定していないことになって、可能という解釈が成り立つことになる。

 日本国憲法がこのような制約を課しているとしたなら、〈国家固有の権能の行使〉として認められているとしている軍事的な自衛権の発動は自ずと日本駐留の外国軍隊が主体となって指揮権、管理権を行使する戦力に依拠しなければならないということになる。

 このような自衛権の行使を可能とするためには外国軍隊に自衛を任せるか、自衛隊を外国軍隊の指揮下に入れて、外国軍隊が主体となって指揮権、管理権を行使することによって自衛隊を日本国憲法第9条第2項が禁じている「戦力」から外して外国軍隊の指揮下のもと、自衛に当たるか、いずれかの方法を取らなければ、憲法との整合性は取れないことになる。

 と言うことは、日本政府が主体となって指揮権、管理権を行使する自衛権の発動は軍事的方法では憲法上不可能ということになって、日本政府主体の〈国家固有の権能の行使〉としての自衛権の発動の〈国家固有の権能の行使〉としての自衛権の発動残された道は、日本国憲法が規定している「日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであって、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持する」としている規定に立って、外交以外の方法は残されていないことになる。

 また、集団的自衛権に関しても、「平和を愛する諸国民平和を愛する諸国民平和を愛する諸国民」を力とした集団的外交に基づかなければならないことにならざるを得ない。

 もし砂川事件最高裁判決が集団的自衛権の行使を認めていると読み解くとするなら、その自衛権とは以上のような解釈となるはずだ。

 尤も私の解釈が間違っているとするなら、この解釈は問題外として貰いたい。

 私自身は集団的自衛権行使容認派だが、あくまでも憲法改正に則って扉を開くものとしなければならないとしている。多種多様な解釈が可能となる過去の判例を持ち出してこじつける姑息な手段を取らずに、真正面から取り組む正々堂々とした手段を選択すべきだろう。

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