■第37連隊戦闘団出動!
信太山駐屯地祭特集、本日は部隊整列編、観閲行進編、訓練展示準備編に続き、いよいよ訓練展示編を掲載する。想定重要建造物が仮設敵に占拠されたため、第37普通科連隊は連隊戦闘団を編成し、これを撃破するという想定である。
状況開始の号令と共に勢い良く飛来したのは第三飛行隊のOH-6D観測ヘリコプターである。OH-6Dは固有武装を持たない代わりに、軽快な運動性を活かし、敵の対空砲火を巧みに避け、索敵や着弾観測を行う。タマゴ型の愛らしい外見とは裏腹、OH-6Dに見つかったらば、砲迫の弾幕や対戦車ヘリを誘導してくるというコワイ奴だ。
機動飛行を行うOH-6D。このヘリコプターは、大阪府の八尾駐屯地に配備されており、多用途ヘリコプターが第三師団に配備されたのはここ数年であり、その前は文字通り師団唯一のヘリコプターとして運用されていた。指揮官連絡や負傷者後送など、軽輸送に対応できる。
観測ヘリからの情報を元に、第三飛行隊のUH-1J多用途ヘリコプターが飛来する。昨年の訓練展示ではUH-1Hが使用されていた為、新型に更新されたようだ。UH-1Jは到着と同時にロープを収めた袋を機外に放り、降下準備を行う。
続いて情報小隊の隊員が機外に飛び出た。中型のUH-1Jでは四名同時に降下しなければ機体がバランスを崩してしまう。情報小隊とは連隊本部管理中隊に所属する部隊で、レンジャー資格を有する隊員などで構成され、情報収集などを行う。
遊撃隊というべき装備、ブッシュハットに背嚢を背負い、使い込まれた89式小銃が鈍い光を放っている。
同時に情報小隊よりオートバイ斥候も出動する。基本的に師団隷下の偵察隊と同じ任務を受け持つが、師団偵察隊が師団の戦略目標などを達成知る上で必要な情報収集を行うのに対して、情報小隊は木目細かに連隊が今まさに行う任務に必要な情報収集を行う。
情報小隊の活動により、仮設敵が占拠している建造物を特定、第三戦車大隊本部より派遣された96式装輪装甲車を用いて普通科連隊の隊員が前進する。脅威状況下では装甲車が無ければ前進は不可能であるため、装甲車の重要性は高い。
降車展開。勢い良く隊員が後部から飛び出ており、降車と同時に射撃姿勢をとっている。降車を掩護するべく車体上部のハッチからも小銃手が身を乗り出して89式小銃を構えている。この他、車載の12.7㍉重機関銃は市街戦では貫徹力が大きく有用な装備だ。
突入を掩護するべく軽装甲機動車も前進する。軽装甲機動車からは携帯対戦車ミサイルの射撃準備を行っているが、この種の装備はフォークランド紛争やイラク戦争で銃座潰しに威力を発揮した。撮影位置からは見えていないが、迫撃砲や特科隊の榴弾砲も掩護射撃を行うべく射撃配置についている。
突入。タイミングを誤ると入った瞬間に反撃を受ける可能性がある。重火力で粉砕してしまう方法が、一般市民と敵対勢力が混在するゲリラコマンド対処任務においては禁物で、見敵必殺というものの、敵かどうかを見極めなければならない点が、野戦と異なり難しい。突入により仮設敵は撤退し、重要建造物を奪還した。
突入班から負傷者発見の一報が入り、収容の為に軽装甲機動車が出動する。砲迫の破片が散乱する状況下では武力紛争法で保護されている救急車といえども戦闘に巻き込まれる可能性はあり、救急車型軽装甲機動車の装備化が望まれる。
ロープ銃(隊員の一人が背負っていたオレンジ色の装備)により反対側の丘にロープを通し、担架に乗せられた負傷者が運ばれる。こうした装備は市街戦のみならず、災害派遣などにおいて瓦礫により通路が通行不能となった際にも役立つ。
収容した後、後方へ負傷者を運ぶ。狙撃に備え油断無く機銃を構えている。ちなみに米軍のイラク治安作戦では、射撃前に市民かテロリストかを識別する為に、防盾に代え厚防弾ガラスによる装甲板を装備している。
しかしそのときであった、我が方が負傷者を収容している隙に、重要建造物から脱出したゲリラ部隊が後方の丘(想定)から反撃を開始したのである。事態を重く見た指揮官は虎の子である戦車の出動を命令、74式戦車が轟音と共に出動する。
土手の裏側から敵装甲車が降りてくる。戦車を火力支援するべく、87式偵察警戒車も出動する。市街地では軽快な運動性能を有する装輪装甲車は重要な役割を果たす。また、偵察員を収容するスペースがあり、場合によっては危険な戦闘地域に突入し、孤立した部隊を救出することも可能である。
ゲリラ部隊が装甲車による攻撃を加えてきた為、これを撃破するべく第五中隊、第二中隊の対戦車小隊が出動する。停車と同時に重い87式対戦車誘導弾、通称中MATを担いだ隊員が飛び出し、射撃位置まで走って前進する。目立つ車両は標的になる為、降車し射撃位置につくまでの時間短縮は重要である。
軽装甲機動車も急行する。01式軽対戦車誘導弾は射程が中MATよりもやや短いものの、誘導不要の撃ちっぱなし式であり、射撃後すぐに退避できる。走行する車上からの行進間射撃が可能かは不明だが、小回りが利く小型装甲車からの攻撃は敵戦車には厄介であろう。
中MATを構える隊員。射程2000㍍のレーザー誘導式対戦車ミサイルで、この他にレーザー照準手がレーザーを照射し、誘導する。なお、37連隊には対戦車中隊が編成されていない為、射程4000㍍の重MATは装備されていないようだ。
装甲車を無力化し、戦闘に決着をつけるべく、普通科部隊が突撃を加える。怪しい茂みに89式小銃が吼えると、黒い戦闘服を纏ったゲリラが転がり落ちてくる。物陰から果敢な抵抗を試みるが、軽装甲機動車からの正確な火力支援により次々と倒されていった。
浮き足立った仮設敵が体勢を立て直す前に、強力な火力を上空から投射し、制圧することが目的である。この増援部隊の到着により仮設敵は降伏し、状況は終了となった。
ちなみに、訓練展示の時間配分は1122時状況開始、1143時状況終了。撮影位置の関係で上手く撮影できなかったが、戦車、火砲が各10発程度空包を発射、50周年に相応しい内容の訓練展示であった。この後、安全確認の後、装備品展示へと移るが、これは次回掲載のお楽しみである。
HARUNA
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