■訓練展示準備
陸上自衛隊の駐屯地祭において、観閲行進と共に行事の華が、空包を発射し車両が走り回る訓練展示(模擬戦とも呼ばれる)ではないだろうか。しかし、火薬を用いて、多数の車両が走る訓練展示は綿密な準備により安全を担保する必要がある。
観閲行進を撮影後、訓練展示準備の時間を利用し、昨年の撮影位置に展開しようとしたが、残念ながら既に入る余地は無く、陣地展開を断念し、撮影を続けることとした。しかし、ちょうど撮影位置隣には訓練展示参加部隊が待機しており、訓練展示に備え、出動準備の部隊を見ることが出来たのは望外であり、非常に興味深い様子を撮影できた。
信太山駐屯地名物、菊水太鼓。自衛隊音楽祭にも参加する部隊で、菊水とは第37普通科連隊の愛称である“菊水連隊”よりきている。七つの太鼓を並べ、後ろに二つの大太鼓、中央に幟と太鼓を配置している。かなり距離があったのだが、空気の鼓動が伝わってきた。
訓練展示準備、なんと準備を行う様子がそのまま撮影位置から望む事が出来た。写真は戦車大隊より派遣されてきた96式装輪装甲車のクルーと打ち合わせをする隊員、訓練展示に参加する為、顔にカモフラージュを施している。
顔に迷彩を施す隊員。96式は外部視察用窓を車体の人員室に配置しており、降車展開に先んじて状況を確認することが出来る。ただし、防御力を削ぐのではないかとの指摘もあり、実際のところは評価が分かれる。これについては諸説あるが、まあ触れずに、便利なので良しとしよう。
第三特科隊の隊員。牽引砲であるFH-70榴弾砲は人員が露出し操作する為、自衛用の火器の携行は必須である。そんな中でも、支援の要員だろうか、デジカメを出して記念撮影をしようとしている様子が面白い。
あたかも状況中とみえる一こま。軽装甲機動車から降車展開の練習を行う隊員。こう降りてこう構えて、こう撃つ!なんていう号令が聞こえてきそうである。背中に装備しているオレンジ色のはロープ投射器具。使い込まれた89式小銃が射手に応えるが如く、塗料が剥げ、鈍く光を放っている。
軽装甲機動車の車上にてMINIMI分隊軽機用の5.56㍉弾空包を準備する隊員。安全管理の観点から空薬莢を全数回収する旧軍の伝統は健在で、従って射撃前に何発装填されているかを数えるのも重要である。
同じ頃、グラウンドでは徒手格闘の訓練展示が行われている。ブッシュハットを被った隊員が近接戦闘における最後の武器、徒手格闘の模様を演舞の如く行っている。蹴撃は個人用防護衣に護られた対象に対し、有効な打撃を与える手段である。
徒手格闘訓練展示が開始された後にも、降車展開の訓練は続けられる。基本的に乗車戦闘に主眼が置かれた軽装甲機動車と、降車戦闘を念頭に設計された96式装輪装甲車では戦闘の概念が異なる、ましては車両は連隊のものではなく、事前訓練は入念に行われた。
獅子と三筋の爪痕は第三戦車大隊の部隊マークである。その前にて訓練を重ねる隊員。しかし、高機動車の配備開始から15年そこそこ、軽装甲機動車の部隊配備開始から5年程、5年後には通常の装甲車が普通科部隊広範に配備される可能性もあるわけだ。
徒手格闘の訓練展示は続く。写真は一本背負いの瞬間。武道としての演舞が実戦の近接戦闘にどの程度効果を齎すかに疑問符を付ける人もいるが、心の鍛錬を積み重ねることは、危機に動じない胆力を育成することは間違いない。
こういった展示は間近で見ると一番迫力が伝わる。来年度は是非、観覧席前に横一列に並んでの徒手格闘訓練展示を期待したりする。
この展示を終了後、全員駆け足にてグラウンドから退場した。
訓練展示状況開始!。号令一下、参加部隊を乗せた軽装甲機動車は続々と訓練展示へ展開していった。
信太山連載の次回は訓練展示本編を掲載予定であるので、どうぞお楽しみに!。
HARUNA
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