◆グアム海兵隊部隊と沖縄本島の中間地点
韓国海軍哨戒艇沈没事案が魚雷のものであるとした韓国海軍の発表をロイター通信が報じましたが、本日は半分普天間問題を交えた記事。
沖ノ鳥島に航空基地を建設、と言いましても離島防衛を強化するために沖ノ鳥島に航空基地を建設して守備隊を常駐させる、という提案ではなく、普天間飛行場移設先の飛行場として沖ノ鳥島を埋め立てて広大な航空基地を建設する、という提案ではありません、もっとも結果的に離島防衛には寄与するのですけれどもね。沖ノ鳥島、東京都小笠原村の無人島ですが、この場所は沖縄本島とグアム島の中間地点にあります。昨今、中国海軍艦艇が遊弋することで有名な島ですが、ここに離島防衛ではなく、米軍移転の観点から、航空基地を建設する必要があるのでは、というのが本日の提案。
普天間移設問題について、社民党はグアムへの移転を繰り返し主張しています。しかし現実的に見た場合、グアムでは島の面積から受け入れられないグアム島は549平方キロ、面積は沖縄本島の1207.8平方キロの半分以下となっていて物理的に受け入れられないのです。そこで社民党が人口密度の低いマリアナ諸島テニアンを提示しているのですが、テニアンの面積は101平方キロ、沖縄の十分の一以下、隣のサイパン島も面積は115平方キロ、二島併せても面積はグアムの半分以下でしかありません。海兵隊ヘリ部隊を移転するとすれば演習場が必要となるのですが、これらの島で沖縄の北部訓練場と同じ78平方キロの空き地が見つかるとは思えません。現実問題として東アジア地域の安全保障に激変を生じさせる覚悟が無ければ沖縄からの海兵隊ヘリ部隊、そして一体運用される海兵隊戦闘部隊の移転というものはあり得ない訳です。
しかしながら、グアムと沖縄の連絡を強化することで、普天間飛行場の機能移転は望めないものの、他の部隊の移転を促進することが、交渉によっては可能となるかもしれません。現在進められている米軍再編に基づく沖縄からの海兵隊グアム移転ですが、海兵隊は有事の際に沖縄への展開を行うことを前提として移転されることとなっています。普天間飛行場代替施設に一定の面積が求められているのも、増援の海兵隊部隊を受け入れる能力というものを見込んでの要請となっています。ここに、グアムと沖縄本島の中間地点にある沖ノ鳥島に空中給油機を含めた航空機の給油拠点を構築すれば、グアムと沖縄本島の連絡をさらに密接とすることが出来、海兵隊が導入するMV-22ティルトローター機は空中給油を受ければ航続距離は3500km以上、CH-53Eのフェリー航続距離は2000kmとなっています。グアム国際空港と那覇空港の距離が3406kmとのことですから、中継地点に沖ノ鳥島を利用できれば、グアムと沖縄の連絡が容易となる訳です。
建設する航空基地は、南鳥島航空基地の1380㍍滑走路と同規模が妥当でしょうか。南鳥島には海上自衛隊と海上保安庁、気象庁職員の11名が駐留していて、海上自衛隊は着陸する航空機への管制支援と燃料補給、そして滑走路の維持管理を行っている。滑走路の維持管理は主に草刈りとアフリカマイマイの駆除、海がきれいで海上自衛隊では南極と並び人気が高い基地とのこと。MV-22であっても、フェリー航続距離の場合1380㍍規模の滑走路でしたら対応できるでしょうし、南鳥島へは航空自衛隊のC-130H,海上保安庁のYS-11が補給へ発着していますから、この規模の滑走路は自動的にKC-130の運用にも対応します。
沖ノ鳥島は環礁の島で、満潮時も露出する北小島と南小島から構成されていて、コンクリート護岸工事で守られた島ですが、南北1.7km・東西4.5km。水深は2㍍前後ですから、滑走路をはじめとする構造物の建設は可能でしょう。なお、現在は無人となっていますが、1988年にコンクリート護岸工事を行うとともに気象観測施設も建築されています。そして1940年には旧海軍が飛行場の建設を構想していました。戦局悪化により実現しませんでしたが、この沖ノ鳥島に飛行場を建設しようとした事例は、実際に過去にあった訳です。
米軍グアム移転の促進以外に、島嶼部防衛の観点から見た場合もグアムと沖縄本島の中間に航空基地があることは少なくない意味となります。中継地と言う事で定期的に米軍機が発着する場合、その米軍機が飛来する拠点という事実だけでも大きな抑止力となりますし、なによりも現時点で完全な無人島となっている状況が防衛という観点から問題があります。海上保安官と海上自衛官十数名が滑走路とともに駐留することは意義がありますし、加えて沖縄の負担軽減を促進出来る可能性を含め、滑走路建築には意義があるのではないでしょうか。なお、この工事には埋め立てを伴いますので、東京都の石原知事が建設許可を出すのか、という事が敢えて言えば大きな問題となるのでしょうか。
HARUNA
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