◆合同調査委員会、外部爆発による沈没と発表
韓国哨戒艦沈没事案、沈没した天安は対艦ミサイルを搭載していましたからコルベット、と表現するべきなのでしょうが、艦尾に続き本体も海底から引き揚げられました。この結果、韓国海軍を中心とした合同調査委員会の調査結果として外部からの爆発により沈没した、ということが発表されました。
黄海に隣接するのは佐世保地方隊管区なのですが、今回の韓国コルベット沈没事案は、事故で無かったのならば自動的に日本の沿岸警備の状況について、少なからず影響を及ぼすこととなります。外部からの爆発、ということはこれまで原因と考えられていた機関爆発や搭載する兵装の暴発による沈没、という事案ではないということになります。つまり、機雷もしくは魚雷により沈没した、ということになるわけです。同士討ちでなければ、これは韓国と敵対する国の敷設した機雷、もしくは魚雷により攻撃された、とうことに結論づけることができます。
この点が意味することは分かりますでしょうか、老朽化ではなく、第三国の意思が介在している可能性が高くなっている訳なのですが、この敵意が韓国海軍艦艇に対して向けられたということは、同じく韓国と協調する対外政策を撮っている国、すなわち我が国の艦船に対してもその敵対的な意思が向けられる可能性はあるという事となります。そして敵対する国が北東アジア地域の黄海に隣接する国なのであれば、同じく日本海側にたいしても同様の行動を行う能力を有している、ということにもなるわけです。現場海域が日本から遠い、ということで一概に結論は出せなくなる訳で、警戒を要します。
今回の事案が、機雷、韓国もしくはそのほかの国が敷設した機雷で流出した浮流機雷、もしくは特定の目的を持って海流に載せられた浮遊機雷であれば、日本近海に到達する可能性は非常に低くなります。前者は事故、後者であれば一種のテロとなり、事案生起現場海域周辺に海上自衛隊を含む各国の掃海部隊を展開させ、他に同様の機雷脅威がないのかを捜索する必要があります。今回炸裂した機雷のほかに別の機雷による脅威があるのならば、商船の航行も多い海域です、恐らくスエズ運河やペルシャ湾で実施された国際掃海任務と並ぶ大規模な掃海任務となるでしょう。
他方、魚雷であった場合は、更に別次元の大きな問題となります。魚雷を投射する手段としては魚雷艇、潜水艦、潜水艇によるものが考えられますが、沈没したコルベット天安、そしてその僚艦は接近を感知していなかった、とされますので、明白にレーダーで確認することが出来る魚雷艇、そして北朝鮮海軍が運用している大型のロメオ級潜水艦をソナーで感知できない、ということは考えにくい事です。可能性としては、特殊な機雷を用いた方式もありえるのでしょうか、もうひとつは水中排水量277トンのミゼットサブ、サンオ級潜水艦が用いられた可能性です。26隻が建造されたとされるこの小型潜水艦の一部には533ミリ魚雷発射管を搭載しているものがあり、航続距離は大きくないものの、ゲリラ的に運用されれば脅威となり得ます。
そしてもう一つ、黄海側で生起した事案は、人為的に行われたものであれば、前述のように日本海側でも行われる可能性があり、もちろん、日本近海まで来れるのか、という意味でミゼットサブは浮上航行したとしても魚雷艇よりも航続距離は短いのではありますが、母船の支援を受けるなどすれば航続距離は延伸しますし、何らかの手段を用いての外国艦船への攻撃を加える、という意図があれば、これは脅威となります。したがってもちろん、即座に、という訳でもないのかもしれませんが、佐世保地方隊警備管区、舞鶴地方隊警備管区にも脅威が及ぶ可能性があるわけです。
海上自衛隊は増大する世界規模での脅威に対抗するべく、ブルーウォーターネイビーとして大型護衛艦の整備を進めてきましたが、同時に、かつての、可変深度ソナーを搭載した、ちくご型護衛艦や駆潜艇など沿岸警備に向いた護衛艦は現役を退いて久しいです。しかし、たとえば、浅海域での任務を想定している掃海艇に対潜擲弾を搭載するなど、ミゼットサブに対しての方策は幾つか考えられるのですが、考慮、というものは必要となるでしょう。湾口を防護する近距離用ソナーと爆雷を搭載した哨戒艇、沿岸監視体制の充実、浅海域への防護用水中マイクロフォン網構築、水中工作員対処のための地方隊警備隊の増強など、考えられる対処法もあり、危惧が現実となるまえに、検討する必要があるのではないでしょうか。
海上自衛隊はいかに立ち向かうか、という事と同時に、機雷もしくは魚雷による攻撃説、そして可能性は薄まりつつある老朽化による船体破壊、この二つの事案の推移を冷静に見守る必要があるでしょう。機雷、魚雷ともに用いられれば破片が残留しているはずなのですから、証拠の探索を相当慎重に行うべきでしょう。この点、現在はオーストラリア、スウェーデンが専門家チームを参加させているようですが、日本も専門家を派遣し、調査に協力するべきでしょう。危機とは突如として起こるように見えて前兆と予防策はあります。しかし、如何にして早期に感知するかは、努力を要し、努力の方位によっては危機を解決する手法に繋がっている事もある訳です。
HARUNA
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